あなたの投資信託は、うまく分散投資できている!? ダイヤモンド・ザイ1月号で大好評だった投資信託の特集「行列ができるダイヤモンド・ザイ投信診断室」が、現在発売中のダイヤモンド・ザイ3月号に再登場! 診断をしてくれたのは、長年投資信託に携わってきた経験を活かし、投資信託を評価するデータベース「ファンド・ラボ」を開発した「投信の窓口」ファンド・リサーチセンター長の植村佳延さんだ。
今回は、「分散投資チェック編」と題し、読者の投資信託の資産構成について診断してもらっている。ここでは、まず投資信託で運用する際の心得を紹介。さらに、植村さんによる3人の読者への診断を抜粋して紹介していこう!
分配金はそのままにリスクを抑えられることもある!
新しい投資信託が次々と設定され、ネット証券などで公表される人気ランキングが目まぐるしく変わる中、自分の保有投信について不安を抱える人が多い。そこで、読者アンケートで寄せられた投資信託の資産構成比について、投資信託の分析&評価の専門家の植村佳延さんが診断してくれた。
アンケートで最も多い悩みが、「毎月分配型投信」に対するもの。「高分配の投資信託を複数本持っているが、減配が続いて受け取る分配金が減り、困っている」というような人が多い。
また、毎月分配型で注意しなければいけないのは、「投資信託自体の利子配当収入以上に分配金を払い過ぎていないか」。分配金の払い過ぎが続くと、基準価額が下落し、投資した元本は目減りするからだ。
現状の分配金水準を変えることなく、投資信託の入れ替えと分散の比率を変えることにより、リスクを抑えることができるケースもあるので、該当する人は入れ替え・比率の見直しを必ず検討したほうがいいだろう。
過去に好成績だったリート型に固執する人も多いが、毎月分配型にはリート型以外にもたくさんのタイプがある。うまく分散させることで、リスクを抑え、安定的な分配金を受け取ることができる。
知らず知らずにリスクが偏り、真の分散になっていない場合も
そもそも、投資信託選びの際に最も大切なのは、「何を目的に投資信託を保有するか」を明確にすることだ。
これを明確にできていないと、月々安定的に分配がほしいだけなのに、リスクを取りすぎてしまったり、将来に向けて資産を増やす目的なのに、複利効果が期待できない毎月分配型を保有してしまったりといった、ちぐはぐが生まれてしまう。
また、投資信託を複数本組み合わせても、1つの資産への比重が大きくなるとリスク過多につながるので要注意。例えば、バンクローンとハイ・イールド債を組み合わせている場合など、実は似たようなリスクを取っているため、本当の分散になっていないケースもある。また、資産を安定的に増やすことを目的にする場合は、「為替ヘッジ型」も活用したい。
最後に、同タイプ内でその投信が好成績かどうかも1年に1度くらいはチェックを。長期で、より好成績の投信があれば乗り換えの検討をするべきだ。
さて、ここまで投資信託選びの基本と、分散投資をする際のコツを紹介してきた。次からは、ダイヤモンド・ザイ読者3名がどんな投資信託を買い、どのように分散投資をしているかを公開。もちろん、その内容に対する植村さんの診断も紹介していこう。
保有投資信託に不安を感じる読者(1)・山田さんの場合
「定年後の小遣いを目的に、高分配投信を3本保有もすべて減配に…」
資産運用の目的は、定年後のお小遣いとして分配金を定期的に受け取ること。リスクが高い商品ばかりなので、値動きが気になる。
★山田さんが保有する投資信託<投資比率、購入方法>
◎野村日本高配当株プレミアム(通貨セレクト)毎月分配<50%、複数回>
◎野村ドイチェ・高配当インフラ関連株投信(米ドル)毎月分配<33%、一括>
◎野村テンプルトン・トータル・リターンDコース<17%、一括>
★診断結果(以下、植村さんのコメント)
⇒「リスクを半分程度にしても今の分配水準を維持できます」
3本とも、投資信託自体が受け取る利子・配当収入以上に分配金を出していましたが、2016年に2~3度の減配を行なったことで、払い過ぎが解消されています。しかし、リスクの高さは問題です。3本合計で、株式の比率が80%を超え、残りの債券も新興国債券。過去3年間の資産全体のリスクは日経平均のリスクと同等ですが、これを認識しているでしょうか。
投資信託の入れ替えにより、リスクを下げてほぼ同じ分配金を受け取れます。たとえば、日本株型「SBI中小型株割安成長株ファンド」20%、先進国株型「米国ハイ・インカムBDCファンド毎月」30%、為替ヘッジの債券型「DWSユーロ・ハイ・イールド債券ファンド毎月Aコース」30%、そして、リスクが高いので20%に限定して、通貨選択型の「三井住友・米国ハイ・イールド債券・ブラジルレアル」の組み合わせが一例です。
保有投資信託に不安を感じる読者(2)・藤田さんの場合
「分配目的でリート型を2本保有、リート型だけではダメ?」
5年以内に使うことを目的とした資産運用。分配金目的でリート型の投資信託を中心に保有しているが、減配が不安。
★藤田さんが保有する投資信託<投資比率、購入方法>
◎フィデリティ・USリートファンドB(為替ヘッジなし)<66%、分割>
◎ワールド・リート・オープン(毎月決算型)<34%、分割>
★診断結果(以下、植村さんのコメント)
⇒「リート型だけだと減配の可能性大 高利回りタイプに分散を!」
2本とも投資信託自体がリートから受け取る収益に対して、過大な分配金を出している点が問題です。投信2本合計の収益の利回りが3.1%であるのに対して、分配利回りは20%。投資したリートが毎年17%値上がりしないと基準価額の維持は困難です。
ところが、リート市場は調整局面入りしており、減配の可能性が高いので、リート以外にも分散し、過払いをある程度解消させる必要があります。
高分配を維持するためには、どちらかを売却し、配当利回りが8~9%ある米国の「BDC」(中小型株や新興株に投融資する企業)への投資が一つの方法です。
保有投資信託に不安を感じる読者(3)・井田さんの場合
「子どもの教育資金のため積み立て、まだ含み益がないけど大丈夫?」
子どもの教育資金のため、中長期(15~20年)で大きく増やすことを目標に積み立て。いまだ含み益がほぼないため不安。
★井田さんが保有する投資信託<投資比率、購入方法>
◎セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド<86%、積み立て>
◎ひふみ投信<14%、積み立て>
★診断結果(以下、植村さんのコメント)
⇒「2本とも好成績で問題なし! 継続し下落時に買い増しを」
結論からいって、積み立てを継続してよいと思います。運用成績の優秀な投資信託を選択しています。「セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド」は株式と債券がほぼ半分ずつ、「ひふみ投信」は日本株のアクティブ型投資信託で、2本とも長期で優秀な運用成績を残し、文句の付けようがありません。
あえてアドバイスするなら、仮に基準価額が大きく下落しても、積み立てをやめないこと。むしろ下落局面では投資額を増やすことが資産を増やすコツです。
【※関連記事はこちら】
■「ひふみ投信」「鎌倉投信」、2つの独立系投信への投資信託のプロの評価はまったく異なる結果に!人気の独立系投信の正しい選び方&ポイントを紹介!
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