7月25〜26日の連邦公開市場委員会では
新しい材料は出ない?
しばらく相場全体の話をしていなかったので、今回は巨視的な話をします。
例年、米国では7月4日の独立記念日から9月の第1月曜日(=今年は9月4日)のレイバー・デーの間は、市場参加者の多くが夏休みをとっています。その関係で、相場はこの期間、けだるい「夏枯れ」商状を呈することが多いです。
7月25〜26日には連邦公開市場委員会が開催されますが、ここで新しい材料が出ることを予想している市場参加者は少ないです。
その次のイベントは、8月24日から26日まで、ワイオミング州ジャクソンホールで開催される経済政策シンポジウムです。連邦準備制度理事会(FRB)は、このシンポジウムの場で、向こう半年から1年の経済政策をほのめかし、市場の反応を見ることが多いです。
今年の場合、FRBによるバランスシートの圧縮の開始タイミングに関し、より具体的なコメントが出るかもしれません。
また、レイバー・デー明けの9月5日からは、議会が急に忙しくなります。連邦債務上限の引上げを正式に承認しなければいけませんし、2018年度の連邦予算を可決する必要があるからです。
フード・スタンプ・プログラムの削減など
連邦予算の策定は困難か?
それに先立ち、下院共和党は7月18日に、2018年度連邦予算下院案を発表しました。この案には、人気のあるフード・スタンプ・プログラム(=低所得者層向け食料費補助)を削減することが盛り込まれています。この削減には、共和党内にも根強い反対意見があり、かなりもめることが予想されます。
トランプ大統領が就任して以降、共和党は議会でなにひとつ重要な法案を可決することができず、その実行力が疑問視されています。このことは、米国3カ月物財務省短期証券の利回りが急上昇していることにも表れています。
もし共和党がモタモタしていたら、政府機関のシャットダウンが起こる可能性があるのです。
もちろん、連邦債務の上限は過去に何度も引き上げられて来ましたし、政府機関がシャットダウンの危機に瀕したのも、今回が初めてではありません。
ただ、「9月相場は、荒れる」ということを、投資家はある程度、覚悟しておいた方が良いということです。
政治は何も決められないが、
ドル安によって株高の流れに
一方、「何も決まらない米国の政治」は、米国経済の今後の成長に関する投資家の期待を削ぎました。ひところは「ひょっとしたら+3%で成長できるかも?」という声が多かったのですが、現在は「+1.5%から+2%くらいが順当」という考えが支配的になっています。
経済が、それほど強くないので、ドルも軟調な展開になっています。
皮肉なことに、ドルが安くなると、それは輸出企業の収益にはプラスに働きます。つまりドル安は米国株にとって強気材料だということです。
実際、いまは第2四半期決算発表シーズンの真只中ですが、これまでに決算発表を終えた企業のうち73%が一株当たり利益(EPS)でコンセンサス予想を上回りました。売上高では、実に77%の企業がコンセンサス予想を上回っているのです。これは、かなり良い滑り出しだと言えます。
つまり、政治が何も決められない、経済の先行きには悲観論が出ている……そういった状況にもかかわらず米国株がしっかりしている理由は、好調な企業業績によるのです。
【今週のまとめ】
米国市場はしばらく退屈な相場が続くが
9月から荒れ模様の予感
現在の米国株式市場は「夏枯れ」の時期にさしかかっており、手掛かり難です。しばらく退屈なマーケットが続くことが予想されます。
しかし9月に入ると、急に忙しくなると思います。
米国の経済成長に対する市場参加者の期待が、かなり剥げたにもかかわらず、株式市場が堅調な理由は、ドル安の恩恵があるからです。実際、第2四半期決算では事前予想を上回る企業が続々と出ています。
しばらくは、現在の地合いが続くと考えた方が良さそうです。
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