ウェルズファーゴは、ウォーレン・バフェットが
筆頭株主となる大手銀行
ウェルズファーゴ(ティッカーシンボル:WFC)は、カリフォルニア州サンフランシスコに本社を置く大手銀行ですが、今、買い場が到来していると考えられます。
同行は個人を相手にしたリテール・バンキングに強く、西部劇を思わせる駅馬車(ステージコーチ)のロゴは、個人を相手にした銀行の中で、最も価値あるブランドと言われています。
ウォーレン・バフェットは、「アメリカを代表するブランド」に投資することを好みます。そんなわけで、バフェットの投資会社バークシャー・ハサウェイは、ウェルズファーゴの発行済み株式数の9.6%に相当する4.8億株を保有し、筆頭株主となっています。
ウェルズファーゴの評価を地に落とした
「架空口座スキャンダル」とは?
ウェルズファーゴは、昔から生産性が高いことで知られてきました。行員に厳しいノルマを課し、成績の悪い行員は下から順番に解雇されます。
同行は、「ひとりの預金者に対し、8つの商品を買わせなさい」というノルマを掲げ、普通預金口座と小切手口座(この2つは、ほぼ全ての顧客が開設します)だけではなく、クレジットカード、住宅ローン、証券投資口座など、さまざまな商品を勧めます。
このように、沢山の商品をオファーすることを「クロスセリング」と言います。クロスセリングそのものは違法ではありません。むしろそれをどれだけ上手くやるか、が銀行経営の重要なポイントなのです。
ところがウェルズファーゴでは、クロスセリングを強調し過ぎたため、成績の悪い行員がクビになることを恐れて、来店客が頼んでもいないのにクレジットカードをはじめ色々な口座を次々に開設し、顧客の署名(サイン)をねつ造する、といった不正が横行しました。これが架空口座スキャンダルです。
このスキャンダルをマスコミから叩かれ、ウェルズファーゴの評判はガタ落ちになりました。その責任を取って同行のトップは入れ替えとなり、一切の営業目標が廃止されました。
こうしたゴタゴタの中、ウェルズファーゴの株価は他行よりパフォーマンスが劣後しました。たとえば、2017年1月にトランプ政権への期待から長期金利が上昇し、銀行の利ザヤが拡大したことで、ウェルズファーゴの株価は上昇しました。しかし他の銀行は、もっとパフォーマンスが良かったのです。
先週発表の第2四半期決算では
回復の兆しが見られる
さて、以上がこれまでの経緯ですが、先週発表された同行の第2四半期決算では、スキャンダルの後遺症から同行がかなり立ち直っていることが確認されました。
先ず1株当たり利益(EPS)ですが、予想1.01ドルに対し1.07ドルでした。
つぎに売上高は、予想222.3億ドルに対し222億ドルでした。
純金利収入は、前期比+1.83億ドルの125億ドルでした。貸付金利の上昇が、調達金利の上昇のペースを上回ったのが利ザヤ拡大に寄与しました。純金利マージンは、前期比3ベーシスポイント改善し、2.90%になりました。
貸倒引当金は、前年同期比-5.19億ドル(-48%)の5.55億ドルでした。損金計上は、前年同期比-2.69億ドルの6.55億ドルでした。
つまり、貸付けの内容は健全なのです。支払遅延ローンもだんだん減少しています。
同行の顧客は、モバイル・バンキングにどんどん移行しています。オンラインならびにモバイルのセッション数は増加基調です。
それと引き換えに、支店への来店は減っています。これは、営業費用が軽減されることを示唆しています。
同行は、住宅ローンのオリジネーション(=借り手のためにローンを組む作業)をオンラインで実行するサービスを、来年から実装します。
架空口座スキャンダルに関しては示談が成立
一度離れた顧客も戻り始める
架空口座スキャンダルに関してですが、集団訴訟は1.42億ドルの賠償金を払うことで示談が成立しました。これは2002年以降のクレームに関して適用されます。
カリフォルニア州政府は、架空口座スキャンダル発覚以降、ウェルズファーゴとのビジネスを凍結していましたが、現在は取引を再開しています。
経営の合理化と株主への還元の強化を実施
ウェルズファーゴは、経営合理化計画を進めており、2018年末までに年間で20億ドルの費用圧縮を実現する見通しです。第2四半期のエフィシェンシー・レシオ(=売上高に占める費用比率)は61%でした。ターゲットとしては、55〜59%を目指しています。
また同行は、配当を一株当たり39セントへ増配します。さらに、115億ドルの自社株買戻し(83億ドルから積み増し)を実行します。
【今週のまとめ】
スキャンダルによって割安に放置された
ウェルズファーゴに復活の兆しが!
ウェルズファーゴ株は、架空口座スキャンダルにより、同行の歴史的な株価評価に照らして割安のまま放置されています。かつて同行は、他行に比べて1.5倍近いバリュエーションを誇っていました。しかし今は、他行とほぼ同程度のバリュエーションに甘んじています。
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しかし営業姿勢を改め、係争を丸く収め、デジタル戦略をどんどん進めることで、再び元気を取り戻しつつあります。今回の決算発表では、そんな同行のターンアラウンドが鮮明に出ていたと思います。
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