米国の保護主義的通商政策に、投資家は右往左往しています。具体的には、トランプ米大統領が3月1日、「鉄鋼に25%、アルミは10%の追加関税を課す。来週に署名する」と断言したこときっかけで、世界の株式市場が動揺しています。
トランプ氏は3月2日にも、ツイッターで「ほぼすべての貿易相手に対して何十億ドルもの金を失っている米国にとって貿易戦争は良いことで、しかも楽勝だ」と呟きました。
一方、EUのユンケル欧州委員長は3月1日、WTOへの提訴や緊急輸入制限などの検討に入ったということです。これに対して、トランプ氏は3日、EUが対抗措置をとるなら「欧州車に輸入関税を課す」とツイッターに投稿しました。
また、中国商務省は3月2日、「米国の最終的な措置が中国の利益を損なえば、我々は他の国々と共に自らの利益を守るために適切な措置を取る」との声明を発表しました。
トランプ大統領の新たな発言により
NYダウや似系平均株価は大幅反発
このような各国の対応を受け、市場では、米国と、欧州や中国などとの貿易戦争が始まれば幅広い米企業活動に悪影響が及ぶと懸念との懸念が強まり、米国株式市場は不安定さを増しました。同時に、外国為替市場でドルが対主要通貨で売られました。
その結果、3月5日の日経平均株価は4日続落し、昨年10月12日以来、約5カ月ぶりの安値に沈みました。
ですが、トランプ氏が3月5日、「鉄鋼とアルミへの関税は、新しく公正なNAFTAが署名された場合に限り解除する」とツイッターに投稿し、関税引き上げは、NAFTAの合意を引き出すための駆け引きを示唆しました。
また、ライアン米下院議長は3月5日、「貿易戦争を非常に懸念し、議会の圧力でトランプ政権が保護主義的な政策姿勢を緩めるのではないかとの期待が芽生え、5日のNYダウは5日ぶりに大幅反発しました。そして、6日前場の日経平均株価は5日ぶりに大幅反発しました。
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トランプ発言により市場は混乱するが
基本的に米国経済のファンダメンタルズは良好
ちなみに、米著名ヘッジファンド投資家のレイ・ダリオ氏は3月5日、「今起きていることは単なる政治的な見せ物だろう」と指摘しているそうです。
そうはいっても、現在のトランプ氏の強硬姿勢は、支持者向けの秋の中間選挙を強く意識した発言でしょうから、今後も予期せぬタイミングで飛び出す可能性が高いでしょう。そして、そのたびに、市場は貿易戦争勃発を懸念したり、貿易戦争回避を期待したりさせられることを覚悟しなくてはならないでしょうね。
ただし、私は米国経済のファンダメンタルズは良好であり、日本経済に関しても、良好な世界経済に加え、「アベノミクス」及び「黒田日銀の超金融緩和」で力強くサポートされるはずと考えます。
また、足元の円高に関しても、前回当コラムで述べたように、「円高になると輸出採算が悪化し、業績が落ち込む」というのは杞憂に過ぎないと思っています。このため、日本株は押し目買いで対応するべきとみています。
海外勢の売りに個人が買い向かっている状況の中
SQ前の今週が「押し目買い」の好機に?
基本的な相場観としては、日経平均株価については、2月14日の2万0950.15円が「1番底」、3月3日の2万0937.26円が「2番底」です。
もしかしたら、今週、2万0937.26円を割り込む場面があるかもしれませんが、3月9日の先物・オプションのSQ算出を通過すれば、先物絡みの需給は清算され、東京株式市場の需給は落ち着くことになるとみています。その後は、3月末に向け、全員上げ賛成のムードが強まることになると考えています。
これが実現するためには、海外勢の日本株売りが止まる必要があります。なぜなら、海外勢の先物・現物売りが止まらない限り、日経平均株価が力強く反発することは難しいと考えるからです。
なお、海外勢は、2月第3週(19~23日)まで7週連続で日本株を売り越しました。この7週間の日本の現物株と株価指数先物を合わせた累計売越額は、6兆円に達しました。現物株だけに限れば、7週間累計の売越額は1兆7565億円です。
一方、個人は5週連続で買い越しました。また事業会社の自社株取得や一部年金基金による買いを反映しているとされる、信託銀行は6週連続で買い越しています。
このように、海外勢の売りに、個人を中心に国内勢が買い向かっています。この国内勢の買いは中期的に報われると私は考えています。
しかしながら、SQ算出まではCTAなどの株価指数先物の売買に上下に振らされやすい不安定な需給が継続する見通しです。そうこう考えると、SQ前の今週が「押し目買い好機」とみています。
ただし、SQ明けでも海外勢が売り越しを続けるようなら、私の見通しは甘かった・間違ったということになります。そのケースでは日本株からいったん撤収しましょう。
日本株の下落余地と反発余地を天秤にかけると
現時点では「十分に買いに分がある」
正直、日経平均株価が1月23日に昨年来高値2万4129.34円で目先天井を打って以降、非常に儲け難い・損失を出し易い投資環境が続いています。投資元本を著しく毀損させた投資家が続出し、心も折れた投資家も多いと聞きます。
ただし、2月14日の「1番底」形成時で、その当時で維持率20%~30%だった信用個人はほぼ全滅したことで、需給がスッキリした(投げるべき人が投げ、現引きする人は現引きした)ことも事実です。このため、3月5日の下落時でも、それほど追証発生は話題になりませんでした。
ザックリ言えば、次は日経平均株価が2万円を割り込むような下落に見舞われるまでは、2月14日のような追証発生件数にはならないとみています。
あとは、海外勢の売りさえ止まれば、短期筋からの売り物が枯れた状況下、真空地帯を勢いよく戻すことが可能でしょう。戻りだせば、日経平均株価の第1の抵抗線は25日移動平均線(6日前場現在2万1986.70円)ですが、同線を上回れば75日移動平均線(同2万2682.53円)付近までは一気に戻れるとみています。
一方、200日移動平均線(同2万1193.27円)を大きく割り込むには、更なる悪材料の出現等が必要でしょう。
日本株の下落余地と反発余地を天秤にかけると、現時点では「十分に買いに分がある」と私は考えています。
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