米国では、5月1日のアップル(AAPL)の決算を受け、IT関連株を取り巻く環境が大幅に改善しました。
台湾の半導体大手、台湾積体電路製造(TSMC)が4月19日に発表した決算では、iPhone向け半導体の需要低迷を主因に、2018年12月期の予想売上高を前期比10%増と従来の10〜15%増から引き下げました。これをきっかけに、アップル株は失速し、これが米国の他のIT関連にネガティブに作用していました。
しかしながら、アップルの四半期決算は好調なサービス事業がけん引し、市場予想を上回る増収増益でした。これを受け、アナリストによる目標株価の引き上げが相次ぎました。
また、アップルは5月1日、1000億ドルの自社株買いを実施すると発表しました。さらに、ウォーレン・バフェット氏が5月4日、米CNBCテレビのインタビューで「1〜3月期に7500万株を買い増した」と明らかにし、さらに、7日放送の米CNBCのインタビューでも、アップル株を「100%保有してもいい」と話しました。
これら好材料を評価した買いが膨らみ、5月7日の米株式市場ではアップル株が買われ、2営業日続けて上場来高値を更新しました。そして、この値動きは、世界のIT関連にポジティブに作用しています。
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米国のインフレリスクの高まりによるドル高は
米雇用統計の発表によりひと段落
一方、外国為替市場では、5月2日のNY市場で約3カ月ぶりの110円台をつけて以降やや円高に振れているとはいえ、ドル高基調です。このドル高の主因は、米国のインフレリスクの高まりを背景にした、日米金利差の拡大への思惑です。
なお、足元のドル高一服のきっかけは4月の米雇用統計です。
雇用統計では、失業率が約17年ぶりに4%を割り込んだものの、非農業部門の雇用者数が前月比16万4000人増と、19万人前後との市場予想を下回りました。また、平均時給は26.84ドルと前年同月比2.6%増にとどまり、上昇率は2008年の金融危機前に記録した3〜4%増に届かないままです。このため、日米金利差の拡大期待がやや後退しました。
日経平均株価は、2万3000円超えは難しいものの
ドル高基調が続いている限り下値は堅い
このような状況下、日経平均株価は2万2500円付近で堅調に推移しています。
1月23日の年初来高値2万4129.34円と、3月26日の年初来安値2万0347.49円との中間値は2万2238.42円です。現在、これを上回っているため、需給は比較的良好といえるでしょう。
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しかしながら、4月18日付けの報道によれば、価格帯ごとに集計した東証1部の昨年9月以降の累積売買代金では、2万2000円〜2万3000円では約140兆円に達するということです。また、2月の「VIXショック」直前の日経平均株価の水準は2万3000円付近でした。
よって、2万3000円付近ではヤレヤレ売りが膨らむ見通しのため、余程の好材料が出ない限り、一気に2万3000円を超えていくことは難しいとみています。
また、一部大手証券の集計によれば、3月期決算企業が2日までに発表した2019年3月期の経常利益見通しが市場予想をどの程度上回ったか、下回ったかをみる分布状況は、中央値でマイナス6.2%だったということです。
まあ、企業側の期初見通しがコンサバということはある程度織り込み済みとはいえ、やや市場の期待とのマイナス乖離が大きいとの印象です。残念ながら、このギャップが埋まるという期待が高まるまでは、相場全体の先高観が強まることはないでしょう。
一方、米国株が堅調でドル高基調が続いている以上、日経平均株価の下値は堅いでしょう。
テクニカル的にも、5月7日の終値は2万2467.16円と、25日移動平均線(7日現在2万1897.48円)、75日移動平均線(同22087.53円)、200日移動平均線(同21548.73円)全て上回っています。当面は75日移動平均線が強力なサポートとして意識されるでしょう。
また、今後、25日移動平均線と75日移動平均線とがゴールデン・クロスが実現しそうです。もちろん、実現したら、一段と下値は堅くなる(下落リスクが低下し、崩れにくくなる)見通しです。
新興市場を中心とした小型株は、
大型株に較べ閑散とした状況
一方、5月7日の東証マザーズ市場の売買代金は543.25億円、ジャスダック市場の売買代金は概算で508億円でした。2市場合計の売買代金は、32営業日連続で活況の目安の2000億円を下回っています。
4月27日のエヌリンクス(6578)を最後に、IPOがいったん止まり、5月21日のラクスル(4384)までありません。値幅取り対象として活発に売買されて、市場全体の売買代金を膨らませる主因のIPOがないこと加え、ホットマネーが値動き良好な大型株に流れているため、新興市場を中心とした小型株は閑散としています。
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ちなみに、決算発表は、5月8日186件、9日240件、10日421件、11日831件、14日358件、そして、15日380件が予定されています。ここまでで、小型株の決算もほぼ完全に出揃います。この決算内容を受けて、新興2市場の売買代金が増加していくか否かに注目です。
決算が一巡しても、ボリュームの増加がみられないようだと、事態はやや深刻です。そのケースでは、信用の絶対期日が多い、7月〜8月あたりまで、新興市場は閑散相場が続くことも覚悟するべきです。
もし、そうなったら、多くの個人投資家は、「日経平均株価だけが強くて、自分の持ち株は全く上がらない、むしろ、下がる(T_T)」という状況に陥るとみています。
現在の日本市場の状況では
小型株を諦め、主力の大型株を狙うべき
このような状況を回避するには、発想を転換し、「小型株は弄らず、主力の大型株だけを売買する」か、「アクティブ運用をいったん止めて、パッシブ運用に切り替える」ことをオススメします。
ただしこの場合、これまでの小型株メインの投資時代と同程度の収益金額を確保するためには、小型株投資の際の1取引の売買ロットが100万円程度の方なら、ロットを500万円〜1000万円程度にまで引き上げる必要があります。
このロットを上げるというのが、実は「言うは易し行うは難し」です。それでも、決算を通過しても小型株市場に資金が流入してこないケースでは、投資戦略の大胆な転換は必要だと思います。
私は、できれば決算通過後に小型株市場にホットマネーが回帰することを期待しています。しかしながら、期待通りにならなかった場合には、投資家は環境に順応するしかありませんよね。
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