ブルーム・エナジーのIPOで
燃料電池に再び脚光が
近くナスダックに、ブルーム・エナジー(ティッカーシンボル:BE)という会社が新規株式公開(IPO)されます。
ブルーム・エナジーは、著名ベンチャーキャピタルの後ろ盾を得て、キラ星のごとき有名企業を顧客としています。従って同社のIPOが成功すれば、このところすっかり忘れられていた燃料電池(フュエルセル)が再び脚光を浴びることが予想されます。
そこで今日は、ブルーム・エナジーを紹介します。
ブルーム・エナジーの創業者は
元々NASAの火星コロニー計画に参加
ブルーム・エナジーは、KRシュリドハー(KR Sridhar)により2001年に設立された会社です。当初はイオン・アメリカという会社名でしたが、2006年に現在のブルーム・エナジーという社名に変更されています。本社は、シリコンバレーのあるカリフォルニア州サニーベイルです。
ブルーム・エナジーの創業者で最高執行責任者(CEO)であるKPシュリドハーは、もともとアリゾナ大学の宇宙技術研究所のディレクターでした。彼の専門は、火星に人類のコロニーを作る際に必要となる酸素供給装置でした。これは電気から酸素を作る装置で、彼の試作品はアメリカ航空宇宙局(NASA)が採用し、実際に火星で稼働したそうです。
しかし、火星に人類のコロニーを作る計画自体は遅々として進捗しなかったため、KPシュリドハーはアリゾナ大学を辞し、起業家に転身しました。彼のアイデアは「電気から酸素を作る装置を逆にすれば、酸素から電気を作ることが出来るはずだ」というものです。
燃料電池は200年近い歴史があり
電源としての信頼性は高い
これは燃料電池(フュエルセル)と呼ばれる概念であり、この原理は1801年にハンフリー・デイビーというイギリスの発明家が考案、最初のプロトタイプは1839年にウイリアム・グローブにより完成されました。つまり、燃料電池自体は200年近い歴史があるのです。
さらに、燃料電池は有人宇宙飛行船の電気や水を供給する装置として今日利用されており、その信頼性や科学は実地で証明されています。
ブルーム・エナジーの燃料電池は
一般住宅でも使える「家電」を目指す
燃料電池には色々な方式がありますが、ブルーム・エナジーは「個体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell)」という手法を採用しています。
ブルーム・エナジーの燃料電池は、貴金属、腐食性の酸、溶融材料などを一切使用していません。なぜなら、初めから量産を念頭に入れ、しかも住宅地などの我々の日常の暮らしにとけこむ「家電」のような存在であることを目指したからです。
なお、燃料には酸素ではなく、代わりに天然ガスを使用しています。これは発電効率を考慮してのことです。アメリカではシェールガスの生産により、天然ガスは廉価でふんだんに存在します。
なお、ブルーム・エナジーの燃料電池は、天然ガスを燃焼させるのではなく、化学反応させることで発電します。したがって安全ですし、二酸化炭素の排出量が極めて少ないです。
過去の燃料電池関連の銘柄は
ガソリン・エンジンの代用品を目指して失敗
さて、米国の株式市場では、ドットコム・ブームの頃に燃料電池株もブームになったことがあります。そのときは、バラード・パワー・システムズ(ティッカーシンボル:BLDP)、プラグ・パワー(ティッカーシンボル:PLUG)、フュエルセル・エナジー(ティッカーシンボル:FCEL)などの銘柄が人気を博しました。
しかし、それらの株はいずれも暴落し、現在ではそれら全てがペニー・ストック(=二束三文の安値に放置されている株)になってしまっています。
その理由は、これらの企業は主に内燃機関、つまりガソリン・エンジンの代用品として燃料電池で駆動する自動車の開発にフォーカスしていたからです。
つまり、目標が高過ぎ、大衆に普及できるようなコスト・パフォーマンスを実現することはムリだったのです。
ブルーム・エナジーが目指すものは、
「どんなことがあっても停止しない電源」
これに対しブルーム・エナジーは、データ・センターなどに設置する「どんなことがあっても停止しない電源」を供給することを目指しています。
アメリカは送電インフラの信頼性が低く、停電が多いです。でもデータ・センターや救急病院などの施設は、どんな時でも機能を停止してはなりません。そこで、自然災害や落雷で停電になったときでも稼働し続ける極めて信頼性の高い電源が必要とされているのです。同社はこの需要に目を付けたわけです。
もともと燃料電池は有人宇宙飛行船に採用されていることからもわかるとおり、極めて信頼度が高いです。
次に、ブルーム・エナジーがこれまでに失敗した他社と違う点は、コストを下げ、発電効率をどんどん高めることを経営の最重要目標に据えた点です。その結果、ちょうど「ムーアの法則(※)」に似たような着実な発電効率の向上を見込めるようになりました。(※ムーアの法則とは、集積回路のトランジスタ数は1年半ごとに2倍になり、コストがどんどん下がるという法則)
ブルーム・エナジーの発電装置は必要に合わせて「積み木」のように増設できるし、安全にホットスワップ(=電気を止めることなく交換すること)できます。
ブルーム・エナジーの顧客には
そうそうたる優良企業が名を連ねる
さて、こうした工夫により、既にAT&T、ホームデポ、ウォルマート、アップル、イーベイ、インテル、エクイニックス、カイザー・パーマネンテ、カルテックなどがブルーム・エナジーの顧客となっています。いずれも、それぞれの分野を代表するような優良企業や病院、研究機関です。
これらの機関は、ブルーム・エナジーの燃料電池を大変気に入っており、今後も追加発注する意向です。
また、燃料電池の特徴として、昼夜、天候に関係なく、一定の発電量を維持できることから、ソーラーパネルや風力発電を補完する、いわゆるベースロード(=基底)発電源として適しているという面もあります。だから、既にソーラーパネルや風力発電を導入している需要家が、ブルーム・エナジーのターゲット顧客として有望です。
ブルーム・エナジーには
多くの有力ファンドが出資
ブルーム・エナジーの支援者として特に有名な人物に、著名ベンチャーキャピタル(VC)、クライナー・パーキンスのジョン・ドーアがいます。ジョン・ドーアは、ネットスケープやアマゾン、グーグルなどを手がけた伝説的ベンチャー・キャピタリストです。
それに加えて、カナダ年金ファンド、クウェート投資庁、アルバータ州投資ファンド、ニュー・エンタープライズ・アソシエーツがブルーム・エナジーに出資しています。
過去の財務内容を見ても
ブルーム・エナジーの収益性を判断するのは困難
ブルーム・エナジーの売上高は、(1)発電装置の販売、(2)オペレーションならびにメンテナンスの2種類の課金方法となっています。(2)は、継続的にリピート売上が発生します。設置工事は「実費」であり、ここから利益を稼ぐつもりはありません。
ブルーム・エナジーの長期の財務モデルによれば、(1)のグロスマージンは30%、(2)のグロスマージンは15%を目指しています。つまり黒字化のメドは、十分に立っているのです。
なお、燃料電池はアメリカ連邦政府のクリーン・エネルギー奨励政策のおかげで、税控除を受けられるようになっています。2017年だけ政治的な理由でこの税控除が途絶えましたが、その後復活し、今後も継続する見込みです。
ブルーム・エナジーが営業を開始した当初、顧客の側では「電気は月々の電気代を支払うものであって、資本財を購入するものではない」という先入観がありました。その関係で「発電した電気だけを買う」、いわゆるパワー・パーチェス・アグリーメント(PPA)という販売方法が一部使用されました。この契約方式は、順次フェイドアウトさせてゆく方針です。
しかし、過去にそのような契約形態が存在した関係で、PPAの少数株主持ち株を資産として計上する必要が出ました。さらに債務も計上する必要があったし、PPAから得られる売上高は20年という長期間に渡って繰り延べて計上する必要がありました。
これらの特殊要因により、ブルーム・エナジーの収益性を過去の財務諸表から判断するのはとても困難です。
またPPAが存在したため、ブルーム・エナジーのバランスシートには大きな負債が載っています。
肝心なことは、今後の同社の業績は、顧客に発電装置を納品し、それが顧客から認証(=アクセプタンス)されたら、売上高に計上できるし、将来のオペレーションならびにメンテナンス売上が見込めるということです。
したがって納品認証の推移を主にフォローすることをお勧めします。
【今週のまとめ】
データセンターなど、新しい顧客をターゲットにした
燃料電池ビジネスに期待
燃料電池は1990年代に一度ブームが到来しましたが、その後、下火になりました。自動車の動力源にするという目標にムリがあったためです。
しかしブルーム・エナジーは、データ・センターなどの大口需要家にターゲットを絞りクリーンで信頼度の高い電力源を供給しています。顧客リストは素晴らしいし、今後も沢山の需要が見込まれます。
ただ、複雑な経理処理の必要から、過去の業績はブルーム・エナジーの潜在力を十分に反映していません。バランスシートに大きな債務が載っているのもその関係です。
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