年利7.75%の米ドル定期預金
前回は年利12%の定期預金(ベトナムドン)を紹介したが、今回は年利7.75%の米ドル建て5年定期の話だ。
金融の知識がすこしでもあるひとなら、「そんなの詐欺に決まっている」と即座に思うだろう。アメリカ本土の銀行ですら、5年定期の金利は1%強なのだ。
しかしこれも、れっきとした大手銀行が提示している米ドル定期預金の金利だ。ただし、場所はカンボジアだが。
まずは、カンボジアの大手銀行のひとつアシレダ銀行(ACLEDA Bank)の預金金利表を見ていただこう。預金可能な通貨はカンボジアリレル、米ドル、タイバーツの3種類で、普通預金のほかに、3つの定期預金がある。

1 Hi-Growth Fixed Deposit:満期日に元本と利息をまとめて受け取る通常の複利の定期預金。
2 Hi-Income Fixed Deposit:利息が毎月支払われ、満期日に元本を受け取る単利の定期預金。
3 Long Term Fixed Deposit:利息が3カ月ごとに支払われ、満期日に元本を受け取る長期定期預金。
通常の定期預金(1)でも、1~2年定期の金利は米ドルで5%だ。アメリカの大手銀行の1年定期の金利が0.15%であることを考えると、カンボジアの米ドル金利が異常に高いことがわかる。
だがさらに驚くべきは長期定期預金(3)で、60カ月(5年)以上の米ドル定期の金利はなんと7.75%だ。なぜこんな不思議なことが起きるのだろう。

ベトナム、ラオス、カンボジアのインドシナ3国は、10年ほど前まではドル経済で、現地通貨はほとんど価値がなかった。この状態から最初に抜け出したのはベトナムで、送金規制が撤廃されて外国人投資家によるベトナム株投資が本格化する2004年頃には、外国人向けの高級店を除いてどこでもベトナムドンが使えるようになっていた。
ベトナムにつづいてラオスも現地通貨のキープを決済通貨にすべく経済政策を変え、今年の3月に訪れたときは、外国人向けの店でも価格表示はすべてキープ建てで、ドル払いの場合は店員が電卓で金額を計算していた。ところがなぜかカンボジアはいつまでたってもドル経済のままで、トゥクトゥク(三輪タクシー)の運転手もドル札しか受け取らない。
そんなカンボジアが21世紀に入って経済成長を始めた。最初はアンコールワットのあるシュムリアップで外資系リゾートホテルの建設ブームが起こり、それが首都プノンペンに波及して不動産価格が大きく上昇した。
中国の人件費上昇で東南アジアが製造業の拠点として注目されるようになると、プノンペンでは不動産開発会社が多額の資金を調達してオフィスビルやマンションを建設しはじめた。さらには経済成長にともなって中産階級が誕生し、彼らが銀行からローンを借りてマイホームを購入するようになった。こうした融資の多くが、ドル建てで行なわれているのだ。
カンボジアでは、ドル建ての融資金利は、現地通貨であるリエルに連動している。当然、ドルの調達金利(銀行の預金金利)もリエルとほぼ同じになる。カンボジアの銀行でドル金利がリエルよりもわずかに低いだけなのは、ドル金利がグローバルな為替市場で決まるのではなく、国内事情に左右されるからだ。
もちろん、理屈のうえでは、このような明らかな市場の歪みは裁定取引によってただちに解消されるはずだ。ヘッジファンドがアメリカ国内で低利のドルを調達し、それをカンボジアで運用すれば、為替リスクなしで莫大な利益を手にすることができるだろう。
だがカンボジアはソブリンリスクが高く、大手銀行といえども格付すらない。機関投資家はもちろんヘッジファンドの投資基準も満たさず、結果としてガラパゴス化した市場でドルが流通することになる。こうして、常識を超えた高金利が維持されているのだ。
このように、「年利7.75%の米ドル定期預金」にはちゃんとした理由がある。あとは、それぞれの投資家がリスクをどう判断するかだ。
カンボジアは証券取引が始まったばかりだが、外国人が証券口座を開設するにはカンボジア国内の銀行口座が必要だ。このため、アシレダ証券ACLEDA Securitiesに口座開設すると、自動的にアシレダ銀行の口座が持てる(これは他の証券会社でも同じ)。私はプノンペンの窓口で手続きしたが、日本から郵送で口座開設することもできるようだ。
ただしインターネットバンキングには対応しておらず、通帳もないので、残高はメールで担当者に照会するしかない。もちろん、預金保険のような投資家保護制度もない。
ご利用は自己責任で。
(執筆・作家 橘玲)
<Profile>
橘 玲(たちばな あきら)
作家。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。2002年、金融小説『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫)でデビュー。「新世紀の資本論」と評された『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)が30万部の大ベストセラーに。著書に『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術 究極の資産運用編』『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術 至高の銀行・証券編』(以上ダイヤモンド社)などがある。最新刊『(日本人)かっこにっぽんじん』(幻冬舎)が5月12日発売。6月にザイオンラインとの共同サイト『橘玲の海外投資の歩き方』をオープン予定。
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還元率 | 年会費 (税込) |
ブランド | 電子マネー対応 (ポイント付与対象) |
カード フェイス |
◆三井住友カード ゴールド(NL) |
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0.5~7.0% |
5500円 (ただし、年100万円以上の 利用で次年度から永年無料) |
VISA Master |
iD |
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【三井住友カード ゴールド(NL)のおすすめポイント】 券面にカード番号が記載されていない“ナンバーレス(NL)”のゴールドカード。年会費5500円(税込)だが、年間100万円を利用すると(※1)、次年度から年会費が“永年無料”になるうえに、1万ポイントが「継続特典」としてもらえるのが大きな魅力! さらに、通常還元率は0.5%と一般的なクレジットカードと同等だが、Apple PayやGoogle Payに「三井住友カード ゴールド(NL)」を登録して「Visaのタッチ決済」または「Mastercardタッチ決済」を利用すれば、セブン-イレブン、ローソン、マクドナルド、サイゼリヤ、バーミヤンなど、対象のコンビニや飲食店では還元率7%に大幅アップ(※2)するなど、ポイントも貯まりやすくてお得! ※1 対象取引などの詳細は、三井住友カードの公式サイトで要確認。※2 一部店舗および一定金額を超える支払いでは指定の決済方法を利用できない場合、または指定のポイント還元にならない場合あり。カード現物のタッチ決済、iD、カードの差し込み、磁気取引による決済は7.0%還元の対象外。Google PayではMastercardタッチ決済は利用不可。 |
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