「iDeCo」では、運用商品としてリスク資産である「投資信託」だけでなく、定期預金などの「元本確保型商品」を選ぶことが可能です。
今回は、あえて定期預金100%にした場合の「iDeCo」活用戦略を考えてみます。
「iDeCo」は元本確保型商品も選べるのが特徴の一つだが
超低金利の今、「定期預金100%」で運用する意味はあるか!?
「iDeCo」は、「NISA」や「つみたてNISA」と同様に、運用で得た利益が非課税となるメリットがあります。「NISA」や「つみたてNISA」の場合、運用していた商品を売却すると、その分の非課税枠が減ってしまいますが(新たに商品を購入する場合は残りの非課税枠を使用することになる)、「iDeCo」では積み立てた資産を受け取るまで何度でも売買できるので、運用益非課税メリットの面でも、「iDeCo」の税制優遇のほうが強力と言えるかもしれません。
もう一つの大きな違いとして、「NISA」や「つみたてNISA」では投資信託などのリスク商品しか購入できないのに対し、「iDeCo」では元本確保型商品、つまり定期預金や保険商品のような安全性の高い商品も選ぶことができます。したがって、「『iDeCo』を始めたのですが、定期預金100%での運用にしました」というケースもありえます。
【※関連記事はこちら!】
⇒iDeCoで運用できる商品「元本確保型商品」と「投資信託」を解説! 定期預金はペイオフの対象、投資信託は手数料が安いなど、メリットと注意点は?
「iDeCo」の運用益が非課税になるというメリットは、定期預金の利回りであろうと、投資信託の値上がり益であろうと同じです。しかし、現在の定期預金金利があまりにも低いことは周知のとおりです。
つまり、非課税メリットの観点で言えば、「iDeCo」に加入したのに定期預金で運用するのは非効率ということになります。投資についてまだ理解が足りないため、あるいは投資に対して消極的であるため、無理に投資をしない、という判断は考えられますが(基礎的な投資の理解もない人が、投資を無理にすることはむしろおすすめできない)、定期預金100%で運用するというのは、「iDeCo」の活用術として、はたして「あり」なのでしょうか。
掛金が所得控除になるメリットは定期預金でも価値あり!
定期預金100%でも「iDeCo」に加入したほうがいい
まず、運用益が非課税になるメリットは、期待リターンが高い運用方法のほうが大きくなるのは当然です。非課税メリットがない場合、運用益に約20%の税金がかかりますが、投資信託で得た4%の収益に課税されて3.2%に目減りするほうが、定期預金の0.1%の利息が0.08%に下がるより、影響は大きいからです。であれば、資産の増え方が小さい定期預金100%では、「iDeCo」のメリットが縮小してしまうことになります。
一方で、「iDeCo」では掛金拠出段階での所得控除という、他にはない大きなメリットがあります。「NISA」や「つみたてNISA」では、投資する原資は課税後の所得や資産となりますが、「iDeCo」は掛金分の課税所得も軽減されることで、実質的に運用利回りを高める効果があるわけです。
どれくらい所得控除の効果があるかは年収などによって異なるため、シミュレーターなどを活用して各自の場合を確認していただきたいのですが、仮に所得控除によって税金が軽減される効果が掛金額の20%相当として考えてみます。
1万2000円の掛金のうち、20%の2400円が税負担軽減になったとすれば、本来の手取りの感覚で言えば税金が引かれたあとの9600円しか積み立てられないはずが、2400円が上乗せされて、1万2000円を積み立てられるようなものです。
これを運用益として考えると、初年度に25%の利回り(2400円÷9600円×100)を確保できたようなものですから、定期預金の預入先として考えても、「iDeCo」は一番有利な場所と言えます。
つまり、「iDeCo」に入らないよりは、「加入して定期預金100%で運用したほうがいい」ということです(後述するように、投資信託で運用をしてさらに高利回りを目指したほうがいいのですが)。
いまだに「iDeCo」に加入していない人は加入対象者の95%以上いますから、そういう人は「『iDeCo』は投資をしなければいけないからやめておく」と考えずに、定期預金100%にしてでも「iDeCo」に加入したほうがいいでしょう。
【※関連記事はこちら!】
⇒iDeCo(個人型確定拠出年金)は本当に得する制度!? 3つの節税メリットと魅力をFPが徹底解説!
定期預金100%の場合は金融機関の手数料が特に重要!
「口座管理料無料」のところを選ぶのが基本
さて、「iDeCo」であえて定期預金100%にする戦略を採るのであれば、重要になってくるのは金融機関(運営管理機関)の手数料です。
「iDeCo」でかかる手数料のうち、国民年金基金連合会に支払う月103円と、信託銀行に支払う月64円は必ず徴収されますが、口座を作る金融機関の口座管理料(運営管理機関手数料)については、無料から月500円程度まで、金融機関ごとに費用設定が異なります。
たとえば、口座管理料を月400円以上徴収されていると、年間では5000円くらいの費用がかかることになります。定期預金の金利が年0.1%であったとしても、500万円の残高でようやく年5000円が稼げるような状態です。資産残高がそれ以上なければ手数料を利息では相殺できず、スタート時点では確実にマイナスということになってしまいます(なお、現状では「iDeCo」の定期預金の金利は年0.01%~0.02%のところが多く、条件はよりいっそう厳しくなります) 。
そのため、「iDeCo」で定期預金100%の運用を行う戦略では、「口座管理料無料」の金融機関を選択することが第一となります。無条件で口座管理料無料としている金融機関が増えていますが、「掛金額が一定額以上で無料」など条件が設定されている場合は、無料の条件に自分は該当するかよく確認して申し込みをしましょう。
【※関連記事はこちら!】
⇒【iDeCo(個人型確定拠出年金)おすすめ比較】「手数料(口座管理料)の安さ」で選ぶ! iDeCoの各種手数料が無料のおすすめ金融機関を紹介
金融機関による金利の差はわずかなので
それだけで決めるのはおすすめしない
「iDeCo」の口座を開設した後に、定期預金や保険商品の金利でより有利な金融機関に乗り換えるようなことも考えられますが、あまりおすすめはできません。一般的には運営管理機関変更の場合、運用していた資産は一度解約して現金化せねばならず、定期預金なら解約金利が適用されてさらに低金利になり、保険商品なら解約時の手数料(解約控除)によって元本割れをする可能性もあります。
一方、現時点で他社より高金利である金融機関を見つけようとしても、正直難しいというのが実状です。また、金融機関ごとに金利に違いがあるといっても、0.0X%の差にとどまるため、必死にリサーチしてもあまりメリットがないのが悩みどころです。
まずは、候補として口座管理料無料の金融機関を絞り込み、その商品ラインナップをチェックして、定期預金の利回り実績を調べていくことで口座を作るところを決定する方法が有効でしょう。以下の記事や、 「iDeCo」の比較サイトなどの情報もチェックしてみてください。
【※関連記事はこちら!】
⇒【iDeCo(個人型確定拠出年金)おすすめ比較】「定期預金の金利」を比較して選ぶ!定期預金で運用したい人におすすめなiDeCo金融機関
「掛金を1年分まとめて納付する」裏技で
手数料を大幅に節約することが可能!
ここで、ちょっとした裏技を紹介しましょう。国民年金基金連合会の徴収する費用の月103円については、「掛金を納付した月のみ」が対象となります。これは掛金を納付する加入者と掛金を納付しない運用指図者で費用負担設定を変えているからです。
言い換えれば、掛金納付を行わない場合は、月103円の手数料は引かれないということです。実は2018年1月から「掛金拠出の年単位化」が可能になったことで、「12月にまとめて1年分の掛金を納付する」ということができるようになりました。事前に書類提出が必要で、ちょっと面倒ではありますが、この方法を選択すると、「1~11月は月64円のみ」「12月は掛金1年分を納付し月167円(103円+64円)」となり、年間の手数料を1133円節約して871円まで下げることが可能です(金融機関の口座管理料が無料の場合)。
投資信託の場合、1年分をまとめて購入すると、年に一度、入金したときの相場の影響を大きく受けることになるため、これはあまりおすすめできません。「今、相場が下がっているので12月ではなく6月に1年分買いたい」といったような機動的な購入もできません。一般的には相場が上がっているときも下がっているときも、自動的に毎月の拠出で投資をしたほうがいいでしょう。しかし、定期預金100%で運用する場合は相場の動向による影響をほとんど受けないので、「掛金の年単位拠出」を利用してみるのも選択肢と言えます。
なお、掛金をまとめて納付する場合、1月に1年分を前納することはできないので、12月引き落とし分(11月の掛金にあたる)を1年分の納付タイミングとします。
ただし、注意点はその12月の引き落とし時です。このとき残高不足だと、再振替はないので1年分の積立チャンスを棒に振ることになります。掛金を引き落とす銀行口座の残高不足には気をつけて利用してください。
【※関連記事はこちら!】
⇒iDeCoの掛金を「定期預金」に拠出している人は、「掛金の年単位化」の活用で実質利回りを上げよう! iDeCoの運用コストを節約する裏ワザを紹介!
定期預金100%が有利なのは「投資を一切しない」場合のみ!
本来「iDeCo」では投資信託で運用したほうがお得
ここまで、「あえて定期預金100%で運用する場合の『iDeCo』活用術」を解説してきました。
しかし、本当のところをいえば「定期預金は『iDeCo』以外の銀行口座で保有し、『iDeCo』では投資をする」というお金の置き方にしたほうが、より非課税メリットが大きく、効率的であることは間違いありません。
投資を行わず、すべての財産を預金で管理している場合のみ、「iDeCoで定期預金100%」が有利になるだけだということは頭に置いておいてほしいと思います。
もし投資に興味が出てきた場合は、証券口座を開設するより前に、「iDeCo」の中で毎月の掛金の一部を投資信託に振り向けてみてください。長い目で見れば、運用益が出たときの非課税メリットの魅力を実感できることになるはずです。
【※関連記事はこちら!】
⇒iDeCoで失敗しない「資産配分」と「運用方法」を3つのステップで紹介! 定期預金と投資信託への適切な資産配分とおすすめの投資信託の種類とは?
⇒iDeCo(個人型確定拠出型年金)の金融機関を比較!口座管理手数料や投資信託の取扱数などで比較した、iDeCo口座を開設できる、証券会社・銀行を紹介
1995年株式会社企業年金研究所入社後、FP総研を経て独立。ファイナンシャル・プランナー(2級FP技能士、AFP)、1級DCプランナー(企業年金総合プランナー)、消費生活アドバイザー。若いうちから老後に備える重要性を訴え、投資教育、金銭教育、企業年金知識、公的年金知識の啓発について執筆・講演を中心に活動を行っている。新刊『読んだら必ず「もっと早く教えてくれよ」と叫ぶお金の増やし方』(日経BP社)が好評発売中。
※証券や銀行の口座開設、クレジットカードの入会などを申し込む際には必ず各社のサイトをご確認ください。なお、当サイトはアフィリエイト広告を採用しており、掲載各社のサービスに申し込むとアフィリエイトプログラムによる収益を得る場合があります。 |
【2024年10月1日時点】 【iDeCoおすすめ証券会社&銀行 比較】 ※どの金融機関でiDeCo口座を開設した場合でも、別途、国民年金基金連合会へ支払う加入時手数料が2829円、国民年金基金連合会と信託銀行へ支払う手数料が合計171円(毎月)かかる。受取時は給付手数料440円(1回毎)を信託銀行に支払う。還付時には、国民年金基金連合会と信託銀行への還付時手数料として合計1488円(1回毎)がかかる。運営機関変更時の手数料は「他の金融機関から」変更の場合で、「他の金融機関に」変更する場合は4400円の手数料が発生する場合がある。下記の金額は掛金を拠出する場合(すべて税込)。 |
◆松井証券 ⇒iDeCo詳細ページへ | ||||
口座管理料(月額) | 手数料 | 投資信託 | ||
加入時・企業型からの移換時 | 他の運営機関からの変更時 | |||
0円 | 0円 | 0円 | 39本 | |
【おすすめポイント】口座管理料が誰でも無料! 投資信託は39本と業界最多水準! 口座管理料は残高を問わず誰でもずっと無料。投資信託は2020年10月に11本から39本へと一気に拡充され、業界最多水準となった。具体的には、低コストで人気のインデックスファンドシリーズ「eMAXIS Slim」がずらりと並ぶほか、ターゲットイヤー型と呼ばれる「三菱UFJターゲット・イヤー・ファンド」、「セレブライフ・ストーリー」などの商品が新たに加わった。低コスト投信を厳選した上で、投資対象が広がった形だ。楽天・全世界株式インデックスファンド[楽天・バンガード・ファンド(全世界株式)]や楽天・全米株式インデックスファンド[楽天・バンガード・ファンド(全米株式)]も取り扱う。投資信託の保有でポイントが貯まる「最大1%貯まる投信残高ポイントサービス」に、イデコで所有している投資信託もカウントされることに。ポイント還元を受けながらお得に投資を継続できる。 |
||||
【信託報酬が低いおすすめ投資信託】 ・One DC 国内株式インデックスファンド(信託報酬:0.154%) ・eMAXIS Slim先進国株式インデックス(信託報酬:0.09889%) |
||||
【関連記事】 ◆【松井証券のiDeCo、手数料・メリットは?】口座管理料と加入時手数料が誰でも無料でお得!信託報酬が最安クラスの投信が39本もラインナップ! |
||||
◆SBI証券 ⇒iDeCo詳細ページへ | ||||
口座管理料(月額) | 手数料 | 投資信託 | ||
加入時・企業型からの移換時 | 他の運営機関からの変更時 | |||
0円 | 0円 | 0円 | 37本 (セレクトプラン) |
|
【おすすめポイント】投資信託の品揃えが豊富! 口座管理料は誰でも無料! 口座管理料は誰でも0円。「セレクトプラン」は、ほとんどの投資対象で信託報酬が“最安”のインデックス型投信が揃えられており、バリエーションも豊富と、強力なラインナップになっている。人気のアクティブ型投信「ひふみ年金」や「ジェイリバイブ」も用意。2021年1月から申込み手続きを電子化。WEB申込フォームへの入力、必要書類のアップロードが可能になり、iDeCo口座開設の手続きが簡単になった。シミュレーションツール「DC Doctor」を提供しており、ポートフォリオ提案から将来予測の比較など、長期にわたるiDeCoの資産形成をサポートしてくれる。 |
||||
【信託報酬が低いおすすめ投資信託】 ・eMAXIS Slim 国内株式(TOPIX)(信託報酬:0.143%以内) ・SBI・全世界株式インデックス・ファンド[雪だるま(全世界株式)](信託報酬:0.1102%) |
||||
【関連記事】 ◆【SBI証券のiDeCo、手数料・メリットは?】 投信のラインナップが豊富!口座管理料は誰でもずっと無料! ◆「iDeCo」を始めるなら、おすすめ金融機関はココ! 口座管理料が無料になり、投資信託のラインナップが 充実している「SBI証券」と「楽天証券」を比較! |
||||
◆マネックス証券 ⇒iDeCo詳細ページへ | ||||
口座管理料(月額) | 手数料 | 投資信託 | ||
加入時・企業型からの移換時 | 他の運営機関からの変更時 | |||
0円 | 0円 | 0円 | 27本 | |
【おすすめポイント】口座管理料が誰でも無料! インデックス型投信の信託報酬は最安水準! 口座管理料が誰でもずっと「無料」で、コスト面から最もお得な金融機関の1つ。投資信託の本数は27本と標準的だが、内容は充実。「eMAXIS Slim」シリーズなど信託報酬が最安水準のインデックス型投資信託が揃えられている。加えて、「ひふみ年金」「jrevive」など好成績のアクティブ型投信も豊富だ。「つみたてNISA」と「iDeCo」、どちらの制度が各個人の投資目的に適しているかアドバイスが受けられる「つみたてNISA・iDeCoシミュレーション」が便利。 |
||||
【信託報酬が低いおすすめ投資信託】 ・One DC 国内株式インデックスファンド(信託報酬:0.154%) ・eMAXIS Slim先進国株式インデックス(信託報酬:0.09889%) |
||||
【関連記事】 ◆【マネックス証券のiDeCo、手数料・メリットは?】 口座管理料と加入時手数料が誰でも無料でお得!超低コスト&好成績の投資信託24本をラインナップ! |
||||
◆auカブコム証券 ⇒iDeCo詳細ページへ | ||||
口座管理料(月額) | 手数料 | 投資信託 | ||
加入時・企業型からの移換時 | 他の運営機関からの変更時 | |||
0円 | 0円 | 0円 | 26本 | |
【おすすめポイント】幅広い投資対象が揃っているラインナップが魅力! 2019年4月27日(土)より「カブコムのiDeCo」取扱い開始。KDDIアセットマネジメントが運営管理機関となりサービスが提供される。スマートフォンから操作できるiDeCo専用アプリにより、節税効果のシミュレーションや申し込み、運用商品の選択などが直感的に行える。取扱商品は、信託報酬が業界最低水準となるインデックス投資信託を中心に、株式、債券、不動産(REIT)の投信や定期預金など幅広く27本。若いうちはリスク資産に投資し、老後は安定運用を目指す「ターゲットイヤーファンド」も選択が可能だ。 |
||||
【信託報酬が低いおすすめ投資信託】 ・つみたて日本株式(日経平均)・(TOPIX)(信託報酬:0.198%) ・つみたて先進国株式(信託報酬:0.22%) |
||||
【楽天証券のiDeCo】
誰でも無条件で口座管理料や各種手数料が無料!
無料セミナーで初心者も安心⇒関連記事はこちら