バークシャー・ハサウェイが、
2018年の年次報告書を発表
2月23日(土)、ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイ(ティッカーシンボル:BRK.B)が年次報告書を発表しました。
それによると、2018年通年の売上高は前年同期比+3.3%の2,478億ドルでした。営業利益は248億ドル、GAAP(米国で一般に受け入れられている会計基準)による純利益は40億ドルでした。
バークシャー・ハサウェイの決算において
営業利益だけに注目すべき理由とは?
バークシャー・ハサウェイの2018年度の利益は:
1. 投資先企業、クラフト・ハインツ(ティッカーシンボル:KHC)の暖簾代の毀損30億ドル
2. 投資ポートフォリオの売却によるキャピタルゲイン28億ドル
3. 新会計基準で206億ドルの含み益が「損金」扱いになった(下チャートの赤矢印)
などの一時要因を含んでいます。その関係で、見かけ上の数字は大幅に悪化しています。加えて2017年の利益は、税制改革法案成立による一時益(下チャートの青矢印)で嵩上げされました。
新会計基準では、株式ポートフォリオの含み益・含み損を毎年値洗い(mark-to-market)しなくてはいけないため、来年以降もこうした荒っぽいブレが生じると思われます。このため、投資家は今後営業利益だけに注目した方が良いでしょう。
私は普通、決算発表を論じる際、1株当たり利益(EPS)や売上高のコンセンサス予想からの乖離を問題にします。しかし、ことバークシャー・ハサウェイに関する限り、この値洗いのブレによりアナリスト達が予想数字を掲げることが大変困難になっています。このため、コンセンサス予想からの乖離を論じることは意味がありません。
簿価を手掛かりとした評価では、
バークシャー・ハサウェイの実態は把握できない
ウォーレン・バフェットは、「株主への手紙」の中で「これまでは簿価(Book value)をどう伸ばしたか、という基準で我々の働きぶりを評価して欲しいとお願いしてきたが、この尺度は、だんだんバークシャー・ハサウェイの経営の実態を把握する上で有効性を持たなくなってきているので、今後、それは止めて欲しい」と訴えています。
その1番目の理由は、バークシャー・ハサウェイは近年、「投資会社」というより「事業会社」としての性格を強く帯びてきているため、簿価で判断するのは不適切だということです。
2番目の理由は、バークシャー・ハサウェイが保有している上場企業の株式は上述の新会計基準により時価で評価されるのに対し、バークシャー・ハサウェイ傘下の事業会社は取得時の簿価で計上されるルールになったことです。これは、それらの事業会社の価値をとんでもない過小評価してしまうことになります。
3番目の理由は、今後バークシャー・ハサウェイが自社株の買戻しを行った場合、市場で拾った株に関しては、簿価よりずっと高い水準で取得したと同時に、バークシャー・ハサウェイの内在価値(Intrinsic Value)からすれば下の水準で取得したことになることです。結果として、自社株買戻しによって、バークシャー・ハサウェイの内在価値は引き上げられる一方で、会計報告上、簿価はどんどん下がってしまうのです。
ちなみにバークシャー・ハサウェイ株は、簿価の1.4倍で取引されています。これは、S&P500の3.1倍より遥かに低いです。
なお、第4四半期中の自社株買戻し金額は、4.18億ドルにとどまりました。これは、第3四半期の実績である9.28億ドルを下回りました。これは、上に書いた事情を株主にしっかり説明してから自社株買戻しに取り組もうとした結果だと思います。
バークシャー・ハサウェイの将来を左右する
ウォーレン・バフェットの後継者は?
ウォーレン・バフェットは、後継者問題に関し、年次報告書の中で「保険事業に関してはアジット・ジェイン、その他のすべての事業に関してはグレッグ・アベルを総責任者とする」と発表しました。
ウォーレン・バフェットと彼の長年のビジネス・パートナーを務めてきたチャーリー・マンガーは、いつか高齢のため第一線を退かなければいけなくなるわけですが、その際、後任が誰になるかは今回のこの発表でほぼ固まったということです。
今後、バークシャー・ハサウェイは、次世代経営陣との円滑な経営の引き継ぎを期すため:
1. 株主総会だけでなく各事業部責任者によるアナリスト・デーを開催する
2. 「株主への手紙」を他の経営幹部も共同執筆する
3. 配当を出す
などの措置を実行すべきだと思います。
保険事業:
GEICO、バークシャー・ハサウェイ・リインシュアランスなど
バークシャー・ハサウェイは、ディスカウント自動車保険のGEICO(ガイコー)、損保・再保険会社のバークシャー・ハサウェイ・リインシュアランスなどの保険事業を展開しています。保険会社のビジネスがバークシャー・ハサウェイにとって重要である理由は、「フロート(float=投資に自由に使えるお金)」があるからです。
フロートとは、保険加入者が払い込んだ保険料のうち、保険金の支払いに充当するための準備金など、すぐに出てゆくと思われる費用を差し引いた、残りのお金を指します。このお金は、運用に回していいのです。
2018年末の時点で、このフロートは1,227億ドルでした。普通、われわれが「バークシャー・ハサウェイは膨大なキャッシュを持っている」と言った場合、この待機資金を指すことが多いです。現在、この資金の大半は、トレジャリー・ビル(短期国債)で運用されています。
鉄道事業:
バーリントン・ノーザン・サンタフェ
バーリントン・ノーザン・サンタフェ(BNSF)は、全米最大クラスの鉄道会社で中西部、西海岸、南東部など28州をカバーしており、4万5千人の従業員がいます。
2018年の売上高は、前年比+11.5%の239億ドルでした。うちボリューム増は+4.1%、価格・ミックスの改善は6.2%でした。
公益・エネルギー事業:
バークシャー・ハサウェイ・エナジー・カンパニー
バークシャー・ハサウェイ・エナジー・カンパニー(BHE)は、490万戸に電力を供給しているほか天然ガス・パイプラインを持っています。
工業・サービス・小売業:
プレシジョン・キャストパーツ、ルブリゾルなど
工業部門売上高は619億ドルでした。2017年は576億ドルでした。この部門の中には、次のような会社があります:
・プレシジョン・キャストパーツ/航空機向けパーツのメーカー
・ルブリゾル/自動車向けオイル添加物を作っている化学会社
・IMC(インターナショナル・メタルワーキング・カンパニー)/金属切断ツールのメーカー
・マーモン・ホールディングス/金属パイプ、鋼管、工業ファスナーのメーカー
・クレイトン・ホームズ/プレハブ住宅メーカー
バークシャー・ハサウェイが
巨額の資金を投じる上場企業は?
バークシャー・ハサウェイが上場企業の株式に巨額の投資をしていることは、良く知られています。
主な持ち株を挙げると、もっとも大きなポジションはアップル(ティッカーシンボル:AAPL)で、発行済み株式数の5.4%に相当する2.55億株を持っています。その時価価値は、402.7億ドルです。
その次に大きいポジションはバンク・オブ・アメリカ(ティッカーシンボル:BAC)で、9.19億株。これは同行の発行済み株式数の9.5%に相当し、時価価値は226.4億ドルです。
3番目に大きなポジションはウエルズファーゴ(ティッカーシンボル:WFC)の4.49億株で、同社の発行済み株式数の9.8%に相当します。時価価値は207億ドルです。
その次はコカコーラ(ティッカーシンボル:KO)で4億株。同社の発行済み株式数の9.4%に相当し、時価価値は189.4億ドルです。
その他、合計すると、1728億ドルのポートフォリオとなっています。
バークシャー・ハサウェイの業績まとめ
最後に、バークシャー・ハサウェイの1株当たりの業績のチャートを掲げておきます。
バークシャー・ハサウェイの年次株主総会は、5月4日(日)にネブラスカ州オマハで開催されます。
【今週のまとめ】
「事業会社」にシフトするバークシャー・ハサウェイは
今後大きな買収を行う可能性も!
今回のバークシャー・ハサウェイの決算は、色んな特殊要因が重なっている関係で難解でした。バフェットは「今後は営業利益だけに注目してくれ」と言っているので、我々もバフェットの言葉に従い、営業利益を中心にこの株を追いかけてゆきたいと思います。
バークシャー・ハサウェイは「投資会社」から「事業会社」へとシフトしています。今回発表された人事も、事業会社のトップをファンドマネージャーたちよりも上に持って来ました。
その「事業会社」ですが、自動車保険のGEICO、鉄道会社のBNSFをはじめおおむね好調です。
また、バークシャー・ハサウェイは1227億ドルもの自由になるお金を温存しているので、どこかでイッパツ大きな買収をやるかも知れません。
これは全く私の「ドタ勘」に過ぎないのですが、たぶんマスターカード(ティッカーシンボル:MA)のような銘柄が、現在のバークシャー・ハサウェイの事業ポートフォリオにピッタリとフィットするのではないかな、と思います。

※画像をクリックすると最新のチャートへ飛びます。
拡大画像表示
【※今週のピックアップ記事はこちら!】
⇒「配当利回りが高い株」ベスト10の中で、投資判断が"強気"な銘柄は? 配当利回りが7.7%で業績も好調な「スズデン」、6%超で割安な「日産自動車」に注目!
⇒高配当+好業績を継続中の“地味な中小型株”3銘柄を紹介! 15期連続で営業増益中の「イチネンHD」、9期連続で増配予定の「たけびし」などに注目しよう!
【※米国株を買うならこちらの記事もチェック!】
⇒米国株投資で注意が必要な「為替」と「税金」とは?「特定口座(源泉徴収あり)」か「NISA口座」で投資をして、口座内に「米ドル」を残さないのがポイント!
※証券や銀行の口座開設、クレジットカードの入会などを申し込む際には必ず各社のサイトをご確認ください。なお、当サイトはアフィリエイト広告を採用しており、掲載各社のサービスに申し込むとアフィリエイトプログラムによる収益を得る場合があります。 |
【2023年9月1日時点】
「米国株」取扱数が多いおすすめ証券会社 |
◆マネックス証券 ⇒詳細情報ページへ | |
米国株の取扱銘柄数 | 取扱手数料(税込) |
約5250銘柄 | <現物取引>約定代金の0.495%(上限22米ドル)※買付時の為替手数料が無料/<信用取引>約定代金の0.33%(上限16.5米ドル) |
【マネックス証券のおすすめポイント】 約5250銘柄の米国株を取り扱っており、銘柄数はトップクラス! 買付時の為替手数料が0円(売却時は1ドルあたり25銭)なので、実質的な取引コストを抑えることができる。さらに、外国株取引口座に初回入金した日から20日間は、米国株取引手数料(税込)が最大3万円がキャッシュバックされる。米国ETFの中で「米国ETF買い放題プログラム」対象17銘柄は実質手数料無料(キャッシュバック)で取引が可能。米国株は、時間外取引に加え、店頭取引サービスもあり日本時間の日中でも売買できる。なお、NISA口座なら日本株の売買手数料が無料なのに加え、外国株(海外ETF含む)の購入手数料も全額キャッシュバックされて実質無料! 企業分析機能も充実しており、一定の条件をクリアすれば、銘柄分析ツール「銘柄スカウター米国株」が無料で利用できる。 |
|
【関連記事】 ◆【マネックス証券の特徴とおすすめポイントを解説】「単元未満株」の売買手数料の安さ&取扱銘柄の多さに加え、「米国株・中国株」の充実度も業界最強レベル! |
|
◆SBI証券 ⇒詳細情報ページへ | |
米国株の取扱銘柄数 | 取扱手数料(税込) |
約5550銘柄 | <現物取引>約定代金の0.495%(上限22米ドル)/<信用取引>約定代金の0.33%(上限16.5米ドル) |
【SBI証券のおすすめポイント】 ネット証券最大手だけあって、米国、中国(香港)、韓国、ロシアからアセアン各国(ベトナム、インドネシア、シンガポール、タイ、マレーシア)まで、外国株式のラインナップの広さはダントツ! 米国株は手数料が最低0米ドルから取引可能で、一部米国ETFは手数料無料で取引できる。米ドルの為替レートは「片道25銭」と他の証券会社と同じレベルだが、住信SBIネット銀行の外貨預金口座から入金すれば「片道4銭」で両替可能。差額の21銭は1ドル=108円なら約0.19%に相当するので、かなりお得だ。あらかじめ設定した金額か株数(口数)で定期的に買付する「米国株式・ETF定期買付サービス」が便利。 NISA口座なら、日本株の売買手数料だけでなく、海外ETF(米国・中国・韓国)の買付手数料も無料に。米国企業情報のレポート「One Pager」、銘柄検索やソートに使える「米国株式決算スケジュールページ」や「米国テーマ・キーワード検索」、上場予定銘柄を紹介する「IPOスピードキャッチ!(米国・中国)」など情報サービスも多彩。また、2021年4月から米国株式取引専用の「米国株アプリ」が登場した。インドネシアやタイなどのアセアン各国に関しては、主要約70銘柄の個別企業レポート「ASEANアナリストレポート」を提供している。 |
|
【関連記事】 ◆【SBI証券の特徴とおすすめポイントを解説!】株式投資の売買手数料の安さは業界トップクラス! IPOや米国株、夜間取引など、商品・サービスも充実 ◆「株初心者&株主優待初心者が口座開設するなら、おすすめのネット証券はどこですか?」桐谷さんのおすすめは松井、SBI、東海東京の3社! |
|
◆楽天証券 ⇒詳細情報ページへ | |
米国株の取扱銘柄数 | 取扱手数料(税込) |
約5200銘柄 | <現物取引>約定代金の0.495%(上限22米ドル)/<信用取引>約定代金の0.33%(上限16.5米ドル) |
【楽天証券おすすめポイント】 米国、中国(香港)、アセアン各国(シンガポール、タイ、マレーシア、インドネシア)と、幅広い銘柄がそろっているうえ、海外ETFの取り扱い数も、米国ETF約350本を含む、約400本と業界No.1! 所定の米国ETF9銘柄については買付手数料が無料で取引ができる。米国株式の注文は、最大90日先まで指値注文が有効で、「約定通知メール」サービスとあわせて利用すると便利。米国株の注文受付時間が、土日、米国休場を含む日本時間の朝8時~翌朝6時と長いので、注文が出しやすいのもメリット。アセアン株式の情報も充実。財務分析でよく使われるPERなどの主な指標、過去5年間の業績推移や今後2年間の業績予想もチェックが可能だ。NISA口座なら買付手数料が無料(売却時の手数料は必要)なのもメリットだ。取引から情報収集までできるトレードツールの元祖「マーケットスピード」が有名。さらに、スマホ向けトレードアプリ「iSPEED」でも米国株取引が可能になった。ツール内では日経新聞の記事を無料で読むこともできる。 |
|
【関連記事】 ◆【楽天証券おすすめのポイントは?】トレードツール「MARKETSPEED」がおすすめ!投資信託や米国や中国株などの海外株式も充実! ◆【楽天証券の株アプリ/iSPEEDを徹底研究!】ログインなしでも利用可能。個別銘柄情報が見やすい! |
|
◆DMM.com証券(DMM株) ⇒詳細情報ページへ | |
米国株の取扱銘柄数 | 取扱手数料(税込) |
約2500銘柄 | 無料 |
【DMM.com証券おすすめポイント】 2019年12月に米国株の売買手数料を完全に無料化したことで、取引コストに関しては一歩リード!ただし、配当金が円に両替される際の為替スプレッドが1ドルあたり1円と高いので、割り狙いで長期保有する人は注意が必要だ。取扱銘柄数は少なめだが、FAANGなどの有名IT株やバンガードなどの人気ETFは、きちんと網羅されている。他社と違う点としては、外貨建ての口座がなく、売却時の代金や配当が自動的に受け付けから円に交換されること。その後で持っておきたい人にはデメリットだが、すべて円で取引されるため初心者にとってはわかりやすいシステムと言えるだろう。また、米国株式と国内株式が同じ無料取引ツールで一元管理できるのもわかりやすい。米国株の情報として、米国株式コラムページを設置。ダウ・ジョーンズ社が発行する「バロンズ拾い読み」も掲載されている。 |
|
【関連記事】 ◆DMM.com証券「DMM株」は、売買手数料が安い!大手ネット証券との売買コスト比較から申込み方法、お得なキャンペーン情報まで「DMM株」を徹底解説! ◆【証券会社比較】DMM.com証券(DMM株)の「現物手数料」「信用取引コスト」から「取扱商品」、さらには「最新のキャンペーン情報」までまとめて紹介! |
|
【米国株の売買手数料がなんと0円!】 |
※ 本記事の情報は定期的に見直しを行っていますが、更新の関係で最新の情報と異なる場合があります。最新の情報は各社の公式サイトでご確認ください。 |