世界景気減懸念の強まりを背景に、3月22日に米国で「逆イールド※」が発生したことで、週明け25日の日経平均株価は3日ぶりに大幅に反落し、前週末比650.23円(3.01%)安の2万0977.11円でした。下げ幅は今年最大で、終値が2万1000円大台を下回るのは2月15日の2万0900.63円以来およそ1カ月半ぶりのことです。
※短期金利が長期金利を上回る状態のことで、一般的に景気後退の兆しと見なされる。
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欧州景気の減速により「逆イールド」が発生!
米国株式市場は大幅安に
「逆イールド」発生の主因は、欧州景気の減速が顕著だったことです。3月22日に発表された3月のユーロ圏の製造業購買担当者景気指数(PMI)速報値は47.7と、2013年4月以来の低水準に落ち込みました。特に、ドイツの製造業PMIは、2月の47.9から45.0にまで低下しました。
これを受け、3月22日のドイツの10年物国債利回りが、一時マイナス0.03%程度にまで低下しました。マイナス金利で取引されたのは、2016年6月のEU離脱の是非を問う英国民投票の影響が残っていた、2016年10月以来、約2年5カ月ぶりのことです。
ただし、欧州景気減速自体は、市場は既に織り込み済みだったはずです。実際、昨年末に量的緩和政策を終了した欧州中央銀行(ECB)は、3月7日の理事会で年内の利上げ断念を決め、今年9月に新たな資金供給制度(TLTRO3)を開始することも決めています。ECBは、経済見通しについて、2019年の成長率を前回の1.7%から1.1%へ、消費者物価上昇率を1.6%から1.2%にそれぞれ下方修正しています。少なくとも市場は、この3月7日時点で、欧州経済の厳しさを再認識し、織り込んでいたはずなのです。
その一方で、市場が織り込んでいなかったのは、または、「実際に起こってしまったら嫌だな」と危惧されていたのは、米国金利市場での「逆イールド現象」の発生です。
実際、欧州の予想以上に低調なPMIを背景に、3月22日のNY債券市場では、米10年物国債利回りが急低下し、米財務省証券(TB)3カ月物の金利を下回る「長短逆転(逆イールド)」現象が起こりました。ちなみに、市場では「逆イールド」の発生は「不況の予兆」とされています。
だから、3月22日の米国株は、この2007年8月以来、11年半ぶりに発生した「逆イールド」が嫌気され、NYダウは前日比460.19ドル(1.8%)安、ナスダック総合株価指数は同196.292ポイント(2.5%)安と、両株価指数ともに大幅安でした。
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また、米株急落を受け、多くの投資家がリスク回避姿勢を強めたことで、NY外国為替市場では安全通貨とされる円が買われ、一時は1ドル=109円75銭と2月11日以来、およそ1カ月ぶりの高値を付ける場面がありました。
日経平均株価はネックラインを割り込んだものの
依然としてボックス相場を継続中!
この米株急落・円高進行を受けた、3月25日の日経平均株価のザラ場安値は、2万0911.57円でした。3月4日の2万1860.39円が1番天井、3月11日の2万0938.00円がネックライン、3月22日の2万1713.26円が2番天井でしたが、3月25日安値は、このネックラインを僅かながら割り込みました。
ちなみに、この場合の想定天井は1番天井と2番天井の平均値2万1786.83円(={2万1860.39円+2万1713.26円}÷2)です。この想定天井の2万1786.83円とネックライン2万0938.00円との値幅は848.83円です。よって、同値幅下落した場合の下値ターゲットは2万0089.17円(=2万0938.00-848.83円)となります。
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ただし、ネックラインを割り込んだといっても、わずかに26.43円(=2万0938.00-2万0911.57円)であり、「誤差」とも言えます。つまり、依然として、概ね2万0900円~2万1800円のボックス相場が続いているともみることができます。
「ナイアガラ発生」と「ボックス相場継続」の
可能性は5分5分
前回当コラムで、想定外の外部環境の悪化がなければ、2万0938.00円を下にブレイクしないとみていました。しかしながら、想定を超える欧州のPMIを受け、米金利市場で、これまた想定外の「逆イールド」が発生したため、下方ブレイクしてしまいました。
これまで私は、下方ブレイクするならば、「ナイアガラ」が発生するとみていました。しかしながら、今回、前述の下値ターゲット2万0089.17円を目指す(ナイアガラ発生)可能性と、概ね2万0900円~2万1800円のボックス相場継続の可能性は、5分5分に修正します。
私が「下方ブレイク、即ナイアガラ発生」シナリオを後退させた最大の理由は、3月25日に、イエレンFRB前議長が指摘しているように、今回の「逆イールド」は、米国内の景気後退でなく、ある時点で利下げを行う必要性を示しているに過ぎないとみているからです。
つまり、22日以降の金融市場は、久しぶりの「逆イールド」発生に過剰反応したに過ぎない可能性が高いと考えます。このため、市場がそれに気が付けば、早晩落ち着きを取り戻し、日経平均株価は前述の2万0900円~2万1800円のボックス相場に回帰する可能性も低くはないはずなのです。
海外投資家の売り越しが日経平均株価の上値を抑制
機関投資家からの「配当の再投資の買い」に期待!
そうはいっても、ボックス上限の2万1800円を超えていくことも厳しそうです。なぜなら、海外投資家の日本株売りが継続しているからです。実際、3月第2週(11日~15日)の投資部門別株式売買動向では、海外投資家は5061億円の売り越しでした。売り越しは7週連続です。
また、この週の先物に関しては、海外投資家は5週連続買い越しで、日経平均先物とTOPIX先物を合算した買い越し額は4183億円でした。つまり、先物と現物株との合算では、海外投資家は878億円の売り越しでした。
相変わらず、海外投資家は「先物買い・現物売り」で、差し引きで売り越しを続けています。この海外投資家の売りが日経平均株価の上値を抑制し続ける限り、日経平均株価のボックス上抜けは難しいでしょう。
一方、国内金融機関からの3月決算対策売りは、受渡日ベースで3月26日に終了します。また、26日の大引けや、27日の寄り付き付近では、パッシブ運用を行っている機関投資家からの配当の再投資の買い(配当落ちと同時に株価指数先物に買いを入れること)が入る見通しです。この再投資の規模は日本株全体で7000億円程度に達するともいわれており、これが目先の日本株の需給面からの下支え要因となるはずです。
また、3月25日の株価急落を受け、財務省と日銀、金融庁は、同日17時~17時30分に国際金融資本市場に係る情報交換会合を開きました。このように、相場急落を受け、政策当局が迅速に集結し、相場に配慮している姿勢を明確に示すことは、投資家のマインド悪化に歯止めをかけることでしょう。非常にポジティブな行動だと思います。
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