売り買いともに手掛かり材料が乏しいため、東京株式市場は様子見ムードが強まっています。5月27日は米市場や英市場が休場で、海外投資家の動きが鈍かったこともあり、東証1部の売買代金は2014年12月以来、およそ4年5カ月ぶりの薄い商いでした。
夏の選挙後に、トランプ大統領が圧力を高めてくるリスクが上昇!
特に自動車関連セクターは要注意
ところで、5月27日の日米首脳会談では、日米貿易交渉で早期の成果実現に向けて議論加速で一致し、トランプ米大統領は「8月に発表」と表明しました。
ただし、西村康稔官房副長官は記者会見で、8月の合意で一致したのかと聞かれ、「全くない」と否定したそうです。このように、日米の間に見解の相違があるようです。日米貿易交渉の不透明感が強まったように感じます。
なお、トランプ米大統領は5月26日、「Much will wait until after their July elections where I anticipate big numbers!(7月の選挙後、大きな数字を見込んでいる)」とツイートし、単数の「election」ではなく、複数の「s」を付けました。このため、「安倍首相がトランプ氏に衆参ダブル選挙を示唆したか?」、「それをトランプ氏がツイッターで暴露したのか?」などと、一部で話題になっている模様です。まあ、真相はやぶの中なので真偽のほどはわかりません。
ですが、トランプ氏が参院選後、早期妥結を目指し日本側に圧力を強めてくる可能性が高まりました。トランプ氏は、首脳会談の中でも農産物の関税引き下げを強く求めたそうです。これに加えて、選挙後は、先送りした自動車関税の上乗せ措置も絡めて圧力を強めてくるリスクが高まったと、日本政府は警戒しているそうです。
こうなると、選挙後の日米貿易交渉は日本株を大きく揺り動かす材料になり得ます。特に、自動車関連セクターには要警戒材料と言えるでしょう。
米中貿易戦争は持久戦・長期戦の様相を呈し、
日本株にとってはネガティブな状況に
また、日米首脳による共同記者会見で、トランプ氏は、「中国は(貿易協議で)合意したがっているが、私たちはその用意がない。中国が(制裁)関税を払い続けることができるとは思わない。いつか、とても素晴らしい合意ができるのを楽しみにしている。」と述べました。
この発言から、米中貿易戦争は持久戦・長期戦の様相を呈してきたと思われます。これは半導体、電子部品などのハイテク株や、中国市場で利益を上げている日本企業にとってはネガティブな材料です。
消費増税を延期か凍結しない限り、
海外勢の日本株売りは止まらない!?
このような状況下、政府は5月の月例経済報告で「景気は緩やかに回復している」との認識を維持したものの、総括判断は2カ月ぶりに下方修正し、米中貿易戦争の影響を念頭に、先行きについても「弱さが残る」とし警戒が必要との考えを示しました。
にもかかわらず、茂木敏充経済財政・再生相は5月24日、今年10月の消費税率の引き上げは「まったく変わっていない」と述べたそうです。正直、消費増税は延期か、凍結にしてくれないと、海外勢の日本株売りは止まらないと考えています。
ちなみに、5月第2週(13~17日)、海外投資家の日経平均先物とTOPIX先物を合算した売り越し額は3027億円でした。売り越しは3週連続です。現物株との合算では4201億円の売り越しでした。
米中貿易戦争の激化で輸出関連株の収益悪化が懸念されている上、足元の景況感が悪化しているのに、消費増税を断行したら、東京株式市場の急落リスクは一段と高まる見通しです。海外投資家は、そのような見立てで日本株を売り越しているんだと考えます。
日経平均株価の下落にともない個人投資家の収益も悪化!
高成長が見込めるIPO銘柄が、個人マネーの受け皿として人気に
また、市場関係者へのヒアリングベースでは、多くの個人投資家の収益状況が酷いことになっているようです。特に、令和入りしてからの相場下落で、ダメ押し的なダメージを受けた個人が多いそうです。
日経平均株価は、平成最後の4月26日終値が2万2258.73円でした。これが5月27日は2万1182.58円と、1076.15円(4.83%)も下落しているんですから、当然と言えば当然ですね。
株価指数でこれだけ下がったら、ボラティリティーの大きい個別銘柄の下落率は、おそらく4~5倍でしょう。投資元本に対して2割、3割程度の評価損を抱えている個人が多数と推察します。だから、令和になってからの急落で、身動きが取れなくなった個人が多数発生したという話には合点がいきます。
ただし、トビラシステムズ(4441)、ハウテレビジョン(7064)などといった直近IPO銘柄の一角は、非常に強い値動きとなっています。これはやはり、需給面でシコリがないことが最大の要因だと考えます。今後も、直近IPO銘柄市場のうち、高成長が見込める銘柄に関しては、アクティブな売買を行う個人マネーの受け皿として人気化し続ける見通しです。
日経平均株価の上値は相当に重い!
個別銘柄が人気化するには、誰もが認める成長ストーリーが必要
テクニカル的には、日経平均株価については、4月24日の2万2362.92円から5月14日の2万751.45円までの下落幅(1611.47円)に対する半値戻し(2万1557.19円)や、61.8%戻し(2万1747.34)が戻りメドです。
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ただし、2万751.45円を割り込むケースでは、昨年12月26日から今年4月24日までの上げ幅3414.34円に対する61.8%押しの2万252.86円が意識されるとの見方は不変です。
なお現在は、週足ベースの一目均衡表の基準線(5月28日現在2万823.68円)が強力なサポートとして機能しています。この基準線を上回っている限り、下値不安が強まることはなさそうです。
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ですが、日米貿易協議、米中貿易戦争、景況感の悪化と消費増税という悪材料の存在を考慮すると、日経平均株価の上値は相当重いと考えておく必要があるでしょう。こうなると、信じられるのは業績ということになります。
また、人気化するためには多くの投資家が賛同する成長ストーリーも必要です。そうなるとやはり、AI、IoT、自動運転、働き方改革、MaaS(Mobility as a service:サービスとしての移動)などのテーマ性が欲しいですね。
なお、今は難易度が非常に高い相場局面なので、現金比率を高めに維持して、リスク資産の株式の組み入れ比率は常に低い状態で相場に臨むべきだと思っています。
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