「IPOだったらなんでも騰がる」わけではない
前ページに示した表でベスト4に入ったのは、ソーシャルゲームなどの携帯コンテンツの制作(モブキャスト、エイチーム、エムアップ)やコミュニティサイトの運営(アイスタイル)とを手掛ける、いわゆるネット関連銘柄であり、しかもすべて東証マザーズに上場している。
どうやら、新規公開で騰がる株にはなんらかの共通項が見いだせそうだ。この点を専門家に詳しく聞いてみた。
今回話を聞いたのは小川佳紀さん。ザイ・オンラインでさまざまな投資ニュースを届けてくれる投資情報サービス会社、フィスコの情報発信部に所属するアナリストだ。小川さんはさっそく「昨今のIPOで初値が非常に騰がりやすい株には3つの共通項があります」と指摘してくれた。
1)SNSや電子書籍など、ネット関連の中でも特に現在の時流に乗った事業を展開する
2)東証マザーズに上場している
3)公開時の企業規模が小さい
「まず共通項の1について。IPOに対する熱気は昨年の秋から徐々に高まってきましたが、その『温度』を上げたのはネット関連企業、それも人気が本格化してきたスマートフォンでのサービスを展開する事業を営む企業でした」(小川さん)
下の表2を参照してほしい。昨年の9月以降には20銘柄が上場しているが、このうちネット関連企業は6社で、いずれも初値が公開価格を上回っている。
しかも、初値が公開価格の2倍以上になったのはデータ解析やASP事業を営むブレインパッド(3655)、ソーシャルゲームの運営を行うKLab(3656)、スマホやPC向けに電子書籍を販売するイーブックイニシアティブジャパン(3658)の3社で、いずれもネット関連、それも「時流に乗った事業を営む会社でした」(小川さん)。
「昨年秋からのこうした流れを引き継いで、今年も3~4月にエムアップ、アイスタイル、そしてエイチームとネット関連銘柄の初値が好成績を収め、そしてこの6月のモブキャストにつながった」と小川さんは分析する。
モブキャストの初値上昇率は今年一番となったわけだが、その背景には個別銘柄としての魅力・注目度は当然として、相場全体の状況や雰囲気が大きく関係していたというわけだ。
共通項の2番目だが、これはあのホリエモンこと堀江貴文氏が率いていた頃のライブドアの印象が残っているからだろうだと、小川さん。「成長企業イコールマザーズというイメージが、まだ残っていると思います。実際、非常に初値が上がっている銘柄はいずれもマザーズ銘柄ですし」
最後の共通項3だが、公開時の企業規模とは公募価格に公募株数を掛けたもの。この数値が10億円以下の会社は初値が騰がりやすいと小川さんは指摘する。実際、同じネット関連企業でも、公開時の企業規模が910億円のネクソン(3659)の場合、初値は公募価格よりわずか7円しか上がらなかった。一方、公開時の企業規模が4.1億円のブレインパッドや3.9億円のKLabの好パフォーマンスは表2で見たとおりだ。なお、公募価格、公募株数のデータはIPO目論見書(新規上場にあたって企業が投資家向けに作成・配布しなければならない書類)に掲載されている。IPO目論見書は証券会社のサイトで閲覧できる。
さて、こうした点を踏まえた上で、小川さんに7月に新規上場する3銘柄の初値はどうなるのかを予想してもらった。次ページ以降で、各銘柄の上場に関する説明をしてからお披露目する。
次のページ>> 全国的なネットワークが魅力
【※関連銘柄の株価チャートはこちら!】 |
◆ブレインパッド(3655) |
◆KLab(3656) |
◆イーブックイニシアティブジャパン(3658) |
◆ネクソン(3659) |
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