【今回のまとめ】
1.手掛かりが少ないなか、世界の投資家の関心は中国経済の減速に向かう
2.中国における完成品在庫の積み上がりに懸念
3.需要低迷は一過性のものではない
4.穀物価格の上昇で中国人民銀行は手詰まりに
5.中国関連銘柄は避けること
先週(8月20日~24日)のニューヨーク市場は、ダウ工業株価平均指数が-0.88%、S&P500指数が-0.5%、ナスダック総合指数が-0.22でした。
海外市場の参加者の多くは夏休みを取っており、ニュースや経済指標の発表は少ない1週間でした。
中国経済の減速を海外投資家が懸念
手掛かり難の状況の中で投資家に注目されたニュースは、8月の中国の製造業購買担当者指数速報値が47.8とさえなかったことです。今回の数字は、2011年11月以来の低水準でした。

現在の中国経済の状況でとくに心配されていることのひとつに、完成品の在庫がどんどん積み上がってしまっていることがあります。
中国のメーカーの多くは、その成長の過程で生産能力をより拡大し、高度な工作機械を導入するなどの方法により品質の向上や納期の短縮化を図ってきました。それは裏返して言えば、それらの先行投資を回収し、利益を得るためには“工場を止めるわけにはいかない”ということです。
2008年のリーマンショックで大きく落ち込んだ世界経済の回復は鈍いままです。さらにギリシャ問題に端を発する欧州財政危機問題が深刻化したことも追い打ちとなって、現在、世界の経済は低迷しており、需要の低迷は今後当分の間続くと見られています。
このような「もう昔のような好景気には、戻れない」という冴えない状況の長期化の事を「ニューノーマル」と表現する投資家もいます。
もはや“投資で投資を回収する”方法は使えない
中国経済の発展は2つの大きな特徴を持ってきました。1つは皆さんもご存知のように「輸出主導型の成長モデル」を標榜してきたということです。もう1つは、高水準の「先行投資」で常に生産力を増強してきたという点です。
しかし上でも見たように、現時点では輸出先である海外市場が飽和状態になっているので、中国は成長モデルの再考を迫られています。
これまでの中国であれば、不景気になる兆候が出れば投資を加速することで深刻な景気後退を回避することができました。
しかし、長年続けられてきた過大な投資の影響で、投資成果はだんだん小さくなっており、むしろ事業主の懸念は「どうやって資金をやりくりするか」という点に移っています。
それは言い換えれば、過剰投資の問題を、さらに追加投資することで解決することはもはやできないということです。
中途半端な利下げの理由
今回の中国の景気後退局面でもう1つ特徴的なことは、中国人民銀行の利下げの動きが鈍い点です。なるほど、これまでに2回、政策金利の利下げを実施していますが、直近では緩和の手が止まっている印象を受けます。
この理由は、米国の干ばつの影響で、6月以降の穀物価格が急騰していることが関係していると思います。

中国は食品価格のインフレに弱いことで知られています。このため中国人民銀行は大胆な景気テコ入れを実施しようと思っても、動くに動けないのです。
「中国関連銘柄」は投資対象から外すべき
それでは世界の経済活動の中で、具体的にどの分野が中国の生産調整の影響を受けやすいのでしょうか?
中国が今までのペースで生産活動をしなくなれば、その原料となる素材や部品の需要成長が鈍化すると思われます。具体的には鉄鉱石や石炭の消費の成長率が下がるということです。
次に銅などの工業コモディティの消費もブームが終わると思われます。建設機械や工作機械に対する需要も減退するでしょう。エネルギーの消費も以前ほどは伸びないと予想されます。

そこで投資戦略ですが、皆さんが簡単に実行できることの1つは、俗に「中国関連銘柄」と呼ばれる、中国での売上比率の高い企業や、中国の存在によって市況が左右されやすい素材、あるいは景気循環型の株を避けるということだと思います。金属・非鉄金属、化学、機械、商社、海運などがすぐに頭に浮かぶ業種です。
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