【今回のまとめ】
1.これまで発表した各社の決算は、売上高は好調、EPS(1株当り利益)はダメ
2.よい決算とは、EPS、売上高、ガイダンスの全てで予想を上回ること
3.木曜日(1月24日)のアップル決算が注目される
4.今回はアップルに対する事前の期待がそれほど高くない
決算の善し悪しは、投資家の期待に対するサプライズで決まる
1月8日から始まった米国の第4四半期(2012年10月~12月期)決算シーズンは、これまでに115社が決算発表を終えています。これまでのところ59.4%の企業がEPS(1株当り利益)でコンセンサス予想を上回りました。

通常、決算の結果がコンセンサス予想を上回る比率は、決算シーズンのはじまり直後は高く、後になるほど成績が下がってきます。これは大企業ほど帳簿を締めてから決算発表準備が整うまでに要する時間が短く、中小企業ほど経理事務が鈍いことと関係しています。
一般に大企業は、公開会社になってからの歴史が長い分だけ四半期決算のガイダンス(会社側予想)も正確で、達成しやすい無難なガイダンスを出してくる傾向があります。これとは対照的に比較的小さい、若い企業はガイダンスと結果がブレやすいです。
以上のことから考えて、EPSについて現在の59.4%というポジティブ・サプライズ比率は、今週以降じりじりと下がってくると考えるべきでしょう。言い換えれば、今回の決算発表シーズンは59%~63%という、これまでのレンジの中に収まらないリスクがあるということです。
一方、売上高の面ではかなり違った様相を呈しています。これまでに決算発表した企業のうち60.2%がコンセンサス予想より高い売上高を発表しています。

なお、決算発表に際して「今回は、決算がよかった」と言う場合、前年同期比でどのくらいEPSや売上高が伸びたのかは、実は問題にされません。なぜなら、株価はその時々の業績見通しを刻々と織り込んでゆくものだと考えられており、「去年に比べて売上高が+10%伸びるだろう」というような投資家の期待は、すでに株価に反映されてしまっているからです。
したがって、決算発表後の株価の動きを決めるのは、むしろその期待(エクスペクテーション)からどれだけ乖離(かいり)していたか? になります。
具体的に「よい決算だった」という場合、次の3つの条件を全て満たす必要があります。
1.EPSでコンセンサス予想を上回ること
2.売上高でコンセンサス予想を上回ること
3.ガイダンス(来期以降に関する、会社側の予想値)がコンセンサスを上回ること
このうちの1つでも条件を満たせない場合、株価が急落するリスクがあります。
さて、今週は23日(水曜日)引け後にアップル(ティッカー:APPL)の決算発表があります。その直前予想をみていきます。
過去2回は投資家を落胆させたアップルにとって、非常に重要な決算
今週は23日(水曜日)引け後にアップルの決算発表があります。現在のコンセンサスは、
EPS 13.42ドル
売上高 547.4億ドル
です。なお直近の期待を示すウィスパー・ナンバー(=ささやき数字)は14.0ドルです。通常アップルは、決算直前のウィスパー・ナンバーがコンセンサスEPS予想よりはるかに高くなりますが、今回は下請けに対する部品発注の削減など、業績に対する不安を感じさせる材料が多いので、いつになくおとなしい数字になっています。
ちなみに過去2回のアップルの決算はどちらも落胆すべき内容であり、今回、またしても取りこぼしがあると、投資家が愛想を尽かすだろうと言われています。
もう1つ今回の決算発表が重要な理由は、今回の決算(下の黄色いグラフの一番右側の2012年第4四半期予想売上高)が、とりわけ金額の大きなものになると予想されているためです。

これはクリスマス商戦をすっぽり含んだ決算になるためです。それと今回は「iPhone5」や「iPad mini」などの一連の新製品がクリスマス商戦に向けて発表され、新製品のラインナップがとりわけ強力だったことも関係しています。だからこそ、取りこぼしは許されないのです。
ちなみに過去のアップルのポジティブ・サプライズ比率はEPSが84%、売上高が78%でした。また決算発表翌日の株価の動きは平均すると+1.76%でした。このところ落胆すべき決算が続いているとはいえ、長期で見るとアップルの決算のトラックレコードはよいわけです。
2012年10月以降下落しているアップルの株価が、今回の決算で巻き返しのきっかけをつかむのか、それとも下落にいっそう拍車がかかるのか、注目されます。
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