【今回のまとめ】
1.水曜日の連邦公開市場委員会では現状維持が発表されるだろう
2.新興国の中央銀行は通貨防衛に躍起になっている
3.米国の金融引き締めが新興国に影響するケースは何度もあった
4.今はFRBの事情ではなく、世界への影響を深慮すべき局面
FOMCの金融政策は当面変更なしか
6月19日に米国の連邦公開市場委員会(FOMC)が当面の金融政策を発表します。市場の予想としては、現行の政策になんら変更は加えられないという見解がコンセンサスになっています。
とりわけ、債券買い入れプログラムをいつ縮小しはじめるか? という問題については、5月22日に米国連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長が示した「次の2、3回のFOMCのうちどこかで縮小を始めるかもしれない」というコメントを撤回し、「当分、何もやりません」というメッセージを打ち出す可能性が強いようです。
市場参加者がそう考える直接の理由は、ウォールストリート・ジャーナルのFEDウォッチャー、ジョン・ヒルゼンラースが先週木曜日にその可能性を指摘したことによります。
5月22日の引き締め発言は性急過ぎた
バーナンキ議長が債券買い入れプログラムの縮小をほのめかして以来、世界のマーケットは調整しています。
下のチャートは、米国の代表的株価指数であるS&P500指数と日経平均株価です。いずれもバーナンキ発言以降、下落に転じています。


こうした動揺は先進国だけでなく、新興国の株式市場にも広がっています。下のチャートは新興国ETFであるアイシェアーズMSCIエマージングマーケットETFです。

バーナンキ発言以降、世界の投資家のお金が新興国から急速に逃避、その結果、新興国通貨が急落しているので、それらの国の中央銀行は防戦に回っています。
タイがバーツを買い支えたのはその一例ですし、インドネシア中銀は利上げを行いました。ブラジルはこれまで外国からの投資資金に課してきた金融取引税を緩和しました。
このように世界の株式市場が動揺した一因は、これまで長くFRBがきわめて緩和的な金融政策を維持してきたため、世界の投資家はより有利な投資先を求めていろいろな資産へ手を出したことによります。また投資家が慢心していたことも指摘できるでしょう。
しかしFRBが金融を引き締めると、手を広げ過ぎてしまったのを、巻き戻す必要が出て来るわけです。
引き締めに転じる初期段階では市場が過剰反応する
このようにFRBの方針が変更されるとその余波で世界の市場が急落することは、過去に何度も繰り返されてきました。
1994年にアメリカの経済が湾岸戦争に絡んだ不況から立ち直り、FRBが金融を引き締め始めた時は南米の株式市場が混乱しました。また、ドットコム・ブームの後半の金融引き締め局面ではロシアのルーブル危機が起きました。
こうした経験を踏まえ、国際通貨基金(IMF)は先週金曜日に発表されたアメリカに関する年次協議報告書の中で「FRBが引き締めに転じる初期段階では、金融市場が過剰反応するリスクがある。それが長期金利の急上昇を招き、金融市場のボラティリティ(振幅)が増す危険性がある。市場の混乱が長引くようだとそれはいずれ実態経済へも悪影響を及ぼすだろう」と釘をさしています。
世界の株式市場に短期的だがチャンスが産まれそう
IMFが指摘するように、米国の債券市場ではFRBによる債券買い入れプログラムの縮小を織り込むかたちで長期金利が上昇(債券価格は下落)しはじめています。

バーナンキ議長は来年の1月で任期が切れます。後任に譲る前に債券買い入れプログラムの縮小を打ち出したいのですが、それはあくまでもFRBの都合にすぎません。
もし世界の金融市場の混乱が収まらないのであれば、早期引き締めのメリットより、それが作り出す混乱のデメリットの方が大きくなってしまいます。
そこのあたりまで配慮した上で、6月19日のFOMCではFRBは様子見を決め込むと思います。
これは世界の株式市場、とりわけ新興国株式市場に安堵をもたらし、短期のトレーディング・チャンスを提供する可能性があります。
ただしFRBはいずれ引き締めに転じなければいけないので、これはあくまでもごく短期に一回転取るトレーディングだと割り切る必要がありそうです。
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