【今回のまとめ】
1.米国の雇用統計は米国経済の底堅さを確認
2.欧州中央銀行は緩和の大盤振る舞い
3.しかし今後の緩和余地は無い
4.これらは円安要因であり日本株にはプラスだ
先週の米国株式市場
先週の米国株式市場は、ダウ工業株価平均指数が+1.24%、S&P500指数が+1.34%、ナスダック総合指数が+1.86%と好調でした。
5月の雇用統計は米国経済の底堅さを確認
先週の金曜日に雇用統計が発表されました。非農業部門雇用者数は市場予想よりほんの僅か少ない21万7000人でした。

過去1年間の平均は16万9000人ということになります。4月の非農業部門雇用者数は-5000人下方修正されました。

一方失業率は4月と変わらずの6.3%でした。

米国10年債の利回りは2.59%で、最近の下値支持ラインである2.50%より上になりました。

米国10年債利回りが2.50%を割り込んだ際、「ひょっとしてアメリカ経済は再び鈍化しはじめるのではないか?」という懸念の声が強くなりました。
しかし金曜日の雇用統計を見る限りにおいては、米国の景気が「底割れ」するような兆候はありません。
むしろ厳冬の影響で落ち込んだ小売売上やレストランの売上は、ここへきてリバウンドしています。
欧州中央銀行は盛り沢山だけど中身に乏しい一連の緩和策を発表
一方、欧州中央銀行(ECB)は先週木曜日の政策金利発表で、一連の緩和策を発表しました。
まず政策金利をこれまでの0.25%から0.10%に引き下げました。
また預金ファシリティ金利はこれまでの0%から-0.10%に引き下げられました。(これはマイナス金利の実施だとしてマスコミから大いに注目されました)
さらに限界貸付ファシリティ金利もこれまでの0.75%から0.40%へ引き下げられました。
これらの金利政策の変更に加えて、ターゲットを絞ったLTROを4,000億ユーロまで実施する、SMP(証券市場プログラム)の不胎化をやめるなどが発表されています。
LTROは「長期流動性供給オペ」と訳されていますが、担保になる証券類をECBに持ち込めば、ECBがそれを裏付けに資金供給するという措置です。
SMPは国債を流通市場で購入することを指しますが、それがインフレを誘発することが無いよう、資金吸収オペをセットにして実施してきました。このように資金を吸収することでインフレの芽を摘むことを「不胎化」と言います。しかし今、欧州ではデフレ懸念が取沙汰されているわけですから不胎化は余計なお節介です。今回、不胎化をやめてしまったのはそのような理由によります。
今回の一連の緩和策が発表された直後ユーロは売られましたが、予期されていた材料が出尽くしたことでそこが相場の転換点となり、その後ユーロは逆に買われました。
市場が望む通りの方策を「満額回答」した関係で、次回以降のECBのとりうる選択肢はぐっと狭まってしまいました。
賃金上昇圧力に悩むブンデスバンク
折からドイツでは熟練労働者の不足から賃金上昇プレッシャーが高まっています。

そのことは今後、もう一段踏み込んだ景気対策を講ずることには、ドイツの中央銀行であるブンデスバンクの賛同を得られないことを示唆しています。つまりECBによる緩和は今回で打ち止めだということです。
アメリカ経済が底堅く、ECBも今後は緩和しないという事は、円安を示唆します。それは日本株にとっては歓迎すべき展開です。
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