<今回のまとめ>
1.FOMCでは利上げは見送られた
2.中国、新興国などへの配慮が見られた
3.雇用の促進とインフレ率を2%へ持って行くというFRBの使命にフォーカス
4.利上げタイミングは12月が有力
5.今まで通りの進路を進むだけでよい米国に投資妙味
全世界が注目していた
FFレートの「利上げ」は見送られた
9月17日に閉会した連邦公開市場委員会(FOMC)では利上げが見送られました。米国の政策金利であるフェデラルファンズ・レートは現行の0~0.25%に据え置かれました。
FRBの使命の範囲外
「中国、新興国、原油価格、ドル」に言及した理由
今回は、FOMC声明文、ならびに記者会見で中国、新興国、原油価格、ドルなどに言及がありました。これは以前に比べると様変わりと言えます。
これらのことは、米国連邦準備制度理事会(FRB)が議会から託されている、FRBの使命の範囲外の話題です。それにもかかわらずイエレン議長がそれらの問題についてしっかり時間を割いたのは、FRBが「外部要因にも十分気を配っています!」ということをシグナルする効果を狙ったものと思われます。
市場関係者のキモチを
ひとつに纏めたイエレン議長
世界のマーケットがギクシャクしたので、報道陣や投資家は、そちらに気を取られて、物事の優先順位が、ぼやけつつあります。
これに対してイエレン議長は質疑応答の中で「FRBは、あくまでも雇用の促進すること、そしてインフレ率を2%になるべく近づけることという二つの目標を、いかに達成するか? という切り口から金利政策を決めて行きたい」という決意を強調することで、市場関係者のキモチをひとつに纏めました。
そしてイエレン議長は「雇用の促進」と「インフレ率を2%に」というレンズから世界を見れば、8月以降、いろいろドタバタしたけれど、少なくとも基本的な方向性は、今までと同じ進路を維持できていると自信をのぞかせました。
うまくいっている雇用促進は
さらに進めるという方向性
失業率に関しては、すでに5.1%に来ているわけですが、念には念を入れて、利上げの際の「心の安心」を確保するために、ターゲット到達後も、もっと雇用を促進することもやぶさかではないという見解を披露しました。
雇用の部分は、これまでのFRBのポリシーの中で、すごく上手く行っている箇所なので、ちょっとオーバードライブをかけて、ガンガン突っ走る……そういうノリなのです。
うまくいっていないインフレ率は
「来年から戻ってくる」との見通し
反面、インフレ率に関しては、FRBの采配がうまく成果を上げていません。それどころか、いくぶん、後退してしまった印象すらあります。つまりデフレ・リスクと紙一重だということです。
しかし、イエレン議長は「これは中国経済の減速でコモディティ価格が急落したからだ」として、あくまでも束の間の現象にすぎないと見ています。そして来年くらいから、かなり鋭角的にインフレが戻ってくるだろうという見解を示しました。
言い換えれば、米国が再びデフレに落ち込むリスクは、メインシナリオじゃないと考えているわけです。
その意味では、政策金利をマイナス金利にするとか、またぞろQE(量的緩和政策)をやるなどの、非常手段は考えていません。
次の利上げのタイミングの最有力は12月!?
さて、利上げのタイミングですが、今年中にフェデラルファンズ・レートを引き上げるという可能性は未だ残っています。必要に応じては10月に利上げするという選択も、まだ温存していることが表明されました。
10月のFOMCは記者会見が予定されていないけれど、もし必要であれば緊急でそれを招集することもできると説明していました。
ただハッキリ言って現状では10月の利上げの可能性は低いと思います。つまり最有力は12月ということです。
とりあえずFRBがフォーカスしている、
インフレターゲットと雇用の関係について
FOMCメンバーの、今年のインフレ予想は0.25%前後、来年は1.7%前後、そしてターゲットの2%を達成できるのは2018年となっています。
FRBが金利政策を通じてインフレをそういう方向へ持って行こうと働きかける際、主に雇用の経路からインフレを焚きつけることに専念するとイエレン議長は述べました。
これはすなわち、今すでに好調である雇用をこれからもズンズンと促進すれば、いずれ労働市場がタイトになり、それは賃金に跳ね返ってくる……その賃金の上昇が始まれば、インフレはスルスルとFRBの目標にしている2%めがけて上がりはじめる……そういうイメージを持っているわけです。
イエレン議長の眼中に資産バブルがない理由
今回のイエレン議長の記者会見で無視、ないしは意図的に欠落していた部分は、資産価格のバブルの可能性についての言及が無かった点です。
わざとそれをシカトし、「雇用をオーバードライブに持って行く」式のトークに終始したということは、長い間、ゼロ金利を維持することがバブルのタネを蒔くとか、そういう議論とは一切、とりあわない決意すら感じさせました。
イエレン議長が心配していないのならば、我々投資家もそれは余り心配しなくていいということです。
長期に超低金利を維持することが株高や不動産投機を誘発し、それが格差社会を助長するのでは? という批判に対しては、イエレン議長がいちばん心配していることは、リッチ層をよりリッチになってしまうことではなく、今、職の無い人たちがどうやって職にありつけるようにするか? あるいは不本意なパートタイムの仕事しかない人がもっとよい正社員の仕事に就けるようにするか? という点だと述べていました。
このへんのイエレン議長の姿勢は断固としており、彼女の心の中での優先順位がハッキリ現れていたように思います。
極端なドル高は是正されるとしたイエレン議長
ドル高/円安が続かないとなると日本株はどうなる?
総括すると、今回のFOMCではFRBは中国経済の鈍化やそれが新興国に与える影響を心配しながらも、基本的には米国経済は良い方向へ向かっており、進路変更の必要は無いということが確認されました。
ひょっとすると世界経済の鈍化が、今後の米国経済指標にも反映され、経済モメンタムの衰えが見えてくるかも知れません。しかしその場合でも、現在の超緩和的な金利政策を維持することで、それを乗り切ってゆくことが可能であるとFRBは考えているわけです。
なおイエレン議長は現在のドル高も原油安などと同様、束の間の現象であり、いずれ極端なドル高は是正されると述べていました。
このことから我々はドル高/円安がいつまでも続くという前提で投資戦略を考えない方が良いと思います。もっと言えば、日本株はダメだということです。
むしろ上でも紹介した通り、今まで通りのことを愚直に継続することでオッケーという、イエレン議長の太鼓判が押されている米国にこそ、投資妙味があるということです。
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