闇株新聞[2018年]

日本郵政、ゆうちょ銀行、かんぽ生命が同時上場!3社の親子関係と時価総額には"矛盾"がある!?

2015年11月9日公開(2022年3月29日更新)
闇株新聞編集部
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 11月4日、日本郵政(6178)と子会社のゆうちょ銀行(7182)かんぽ生命(7181)の3社が同時に東京証券取引所に上場しました。3社とも売り出し価格を大きく上回って取引を終え、翌5日も続伸しました。このIPOはひとまず「大成功」だったようです。

日本郵政の株式価値には「ゆうちょ銀行」「かんぽ生命」が含まれる

 しかし「日本郵政」の株式価値には「ゆうちょ銀行」と「かんぽ生命」の株式価値が含まれており、3社の株式を売り出して同時に上場させると明らかに"二重カウント"となります。

 これで日本郵政も東京証券取引所も「おかしい」と言うつもりはありません。言ったところで無意味であり、政府にも東日本大震災の復興資金に充てた4兆円を早期に回収するためとの大義名分もあるからです。親子3社の株式を同時に売り出した方が、確かに早く資金が回収できるようにも思えます。

 しかし、この親子上場では、やっぱり矛盾が出てきます。

 親会社の「日本郵政」は発行株数が45億株で、今回はその11%に当たる4億9500万株を1株=1400円で売り出しました。子会社の「ゆうちょ銀行」は発行株数が45億株で、今回はその9.2%に当たる4億1244万株余を1株=1450円で売り出しました。同じく子会社の「かんぽ生命」は発行株数が6億株で、その11%に当たる6600万株を1株=2200円で売り出しました。

 これら調達金額合計は1兆4362億円(手数料控除前)となります。政府は「日本郵政」の売り出し金額は直接回収し、「ゆうちょ銀行」と「かんぽ生命」の売り出し金額は日本郵政が政府保有分を自社株買いする方式で回収します。残りの株式も今後売り出されますが、それについても同方式となります。

  直近の3社の純資産は、「日本郵政」が15.4兆円、「ゆうちょ銀行」が11.5兆円、「かんぽ生命」が2兆円ですが、3社の純資産合計は3社を合計した28.9兆円ではなく、15.4兆円のはずです。

なぜ「かんぽ生命+ゆうちょ銀行>日本郵政」の時価総額なのか!?

 ところが11月6日の終値は、日本郵政が1755円(売り出し価格は1400円)で時価総額が7兆8975億円、「ゆうちょ銀行」が1718円(同1450円)で時価総額が7兆7310億円、「かんぽ生命」が3730円(同2200円)で時価総額が2兆2380億円となります。

 「ゆうちょ銀行」と「かんぽ生命」の時価総額合計は9兆9690億円となりますが、その親会社である「日本郵政」の時価総額は7兆8975億円しかありません。

 確かに市場では、ある上場会社の時価総額がその会社が保有する他の上場会社の保有分時価総額を下回ることもあります。しかし「日本郵政」は売り出し後も「ゆうちょ銀行」の90.8%と「かんぽ生命」の89%を保有している直接の親会社であるため、その日本郵政の株価が子会社2社の保有分の時価総額を下回るのは、やっぱり奇妙です。

 比率はやや複雑になりますが「ゆうちょ銀行」と「かんぽ生命」を空売りして、「日本郵政」を買えば儲かる計算になります。つまり「ゆうちょ銀行」と「かんぽ生命」の株価は、あまり人気がない日本郵政の株価に頭を押さえられるはずだからです。

「ゆうちょ銀行」「かんぽ生命」だけ上場させれば良かったのでは!?

 また2016年4-6月期は、「ゆうちょ銀行」は1560億円、「かんぽ生命」は931億円もの代理業務手数料を「日本郵政」に支払っています。合計で年間1兆円にもなり、「ゆうちょ銀行」「かんぽ生命」両社の収益を圧迫しています。

 これは「日本郵政」も上場させるのでその決算も黒字にしなければならないからですが、この代理業務手数料をもっと軽減して高収益になった子会社の「ゆうちょ銀行」「かんぽ生命」だけ上場させれば、もっと株価は高値になるはずです。それでも「日本郵政」の連結決算は変わりません。

 今後も売り出しは続くのですから、「ゆうちょ銀行」と「かんぽ生命」だけ上場させて売り出した方が、3社を上場させたまま売り出すより最終的には政府の回収額が大きくなったのではないでしょうか。「日本郵政」はそれから上場させても遅くなかったはずです。

 さらに言えば、3社とも配当性向は50%を維持するようなので、日本郵政まで1株=46円程度の配当を支払うことになり、配当利回りは(11月6日終値で計算して)2.6%にもなります。政府保有分にも配当を支払うかどうかは不明ですが、全株に配当を支払うとすれば2070億円もの社外流出となります。

 もし、日本郵政を上場させないでおけば、この社外流出は不必要だったのです。

 イレギュラーな親子上場は、結果的には政府の(つまり国民の)手取りを減らしてしまう可能性もあります。何事も簡単に儲けようと考えると、意外な落とし穴があるものです。

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