<今回のポイント>
1.原油と株式市場は相関性を高めている
2.原油価格下落の原因は供給過多にある
3.米国のシェールの増産が元凶
4.サウジの「シェール潰し」にシェール企業はテクノロジーで対抗
5.シェール生産コストは今でも下がり続けている
6.原油価格低迷の長期化は、株式投資家にとって歓迎せざるシナリオ
米国株式市場と原油価格は高い連動性、
原油の供給増で原油価格が下がる構造に
このところ米国株式市場は原油価格と連動性を高めています。つまり原油価格が高い日にはニューヨーク株式市場も高いし、逆に原油価格が安い日にはマーケットも値を消しやすいのです。
そこで今日は原油市場を取り巻く様々な要因を整理し、今後、原油価格がどう動くかについて考えてみたいと思います。
まず原油市場を大局的な視点から眺めます。下は世界の原油の需要と供給の推移を示したグラフです。
原油価格は2014年第2四半期から崩れ始めたわけですが、需要には特別異変は感じられません。むしろその頃を境に供給が需要を慢性的に上回りはじめたことが問題なのです。
そこで気になるのが「むやみに増産したのは、一体、誰だ?」ということです。
下は世界の主要産油国の原油生産高のグラフです。
これを見ると2008年以降、米国の原油生産高の伸びが著しいことがわかります。これはシェールオイルの増産が原因です。つまり犯人はアメリカなのです。
OPEC加盟国の多くははフル操業を続行中
サウジアラビアが減産に踏み切らない理由とは?
またサウジアラビアを除く石油輸出国機構(OPEC)各国も、ひとまとまりのグループとして見た場合、かなり増産してきていることがわかります。このグループにはどんな国が含まれているのでしょうか? それを知るため、OPEC加盟13か国の原油生産高のグラフを下に掲げます。
イラクはイスラム国(IS)と戦う戦費ねん出のため、増産しています。イラクの油田地帯は南部のバスラ周辺と北部のモスル周辺になりますが、モスルは最近までISに占領されていました。そのようなむずかしい操業環境の下で、フル操業に近い生産を続けているわけです。
イランは核開発を巡って欧米から経済制裁を受けていましたが、核開発制限合意を受けて最近、経済制裁が解除されています。ペルシャ湾の石油積出港、カーグ島にはタンカーが集結しており、既に欧州市場向けのタンカーが次々に出港したところです。
ベネズエラはチャベス前大統領の時代から買票のためのバラマキ政治が行われてきました。無責任な経済運営がたたって、現在、700%を超えるハイパー・インフレに見舞われており、経済は大混乱しています。国営石油会社ペヴェデサ(PVDSA)は、そのような異常事態の中にあって奇跡的に生産水準を維持しています。
言い換えればアフリカ大陸と東南アジアの一部国では最近の原油価格の下落のあおりで減産に追い込まれている国が見られるけれど、全体としてはフル操業を続けている国が意外に多いというわけです。
サウジアラビアは、かつてはスイング・プロデューサーとして需給バランスを均衡させることに一役買ってきました。別の言い方をすれば、世界でジャブジャブに原油が余っている時は減産することで価格を下支えし、逆に原油価格が急騰した局面では増産して価格を冷やすという戦略を持っていたのです。
サウジアラビアがそのような態度を貫いていた理由は、同国は圧倒的な確認埋蔵量を持っている関係で、将来に渡って、世界の人々が安定的にガソリン車に乗り続けてくれることが国益だったことによります。別の言い方をすれば下手に原油価格が急騰し、代替エネルギーへの移行が進み過ぎることだけがサウジアラビアの懸念だったというわけです。
しかしシェールオイルの登場は、そのような既存秩序を乱しました。米国のシェール業者がむやみに増産したので原油価格は急落してしまったし、サウジアラビアはマーケットシェアを大きく落としました。
そこでサウジアラビアは現在のように原油価格が低迷している局面でも敢えてこれまでのような減産をせず、米国のシェール企業が倒産するまでわざと高水準の生産を維持して我慢比べをする戦略に出たのです。
シェール企業は採算ラインを次々に改善
OPECとのバトルは長期化する模様
原油価格の下落で米国のシェール業者の業績は急速に悪化しています。そこでシェール業者は中途半端な規模で、比較的高コストな油井をどんどん休止し、最もスケールが大きく、最新鋭のテクノロジーを駆使したハイテク・リグに生産活動を集中しています。
その関係で稼働油井数は下のグラフのように激減しました。
しかし水平掘りの掘削距離を伸ばす、破砕法をこれまでより多用する、シェールの亀裂に流し込むポリマーを含んだ特殊液の配合量を最適化する、などによる生産性の向上で、一本の油井から産出される原油の量は現在もどんどん増え続けています。
その結果、以前より遥かに少ない油井数で、いままでと同じ生産量を維持するどころか、さらに生産量を伸ばすことが起きているのです。結果として下のグラフに見られるように生産高にはわずかしか衰えが見られません。
かつては「50ドルが採算ラインだ」と言われていた生産コストも著しく改善しており、現在は原油価格30ドルでも利益が出せるリグが増えています。
サウジアラビアのもくろみ通り、次々に米国のシェール企業が倒産に追い込まれるためには、18~25ドルの原油価格が少なくとも4か月ほど続くことが必要になります。
しかも生産コストの急改善による営業キャッシュフローの増加を見て、株式の投資家はシェール企業を見殺しにするどころか、これらの企業のバランスシート増強のための公募増資に喜んで応じる態度を見せています。2016年に入って、これまでに50億ドルものシェール企業の公募増資が敢行されました。言い換えれば「シェール企業は、死にそうで、なかなか死なない」のです。
このことは現在の低い原油価格が、長期に渡って続く可能性が高まったことを意味します。もし株式市場と原油価格がこれまで通り連動するのであれば、それは株式にとって歓迎せざるシナリオです。
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