下流老人にならない老後生活を迎えるには、定年後の収支をできるだけ早い段階で確認しておくことが重要になる。中でも公的年金の受取額を知ることがまずは大切。誰でも自分の公的年金額をカンタンに把握できる「ねんきん定期便」の読み方や「ねんきんネット」の使い方を紹介しよう。
自分が受け取れる公的年金額はいくら?
これを知らないと投資もできるわけがない
「生活保障に関する調査(平成25年度)」では、老後の夫婦2人の最低限の生活費として月額22万円、経済的にゆとりのある生活には月額約35万円がほしいという結果だ。だが、今夫婦2人で受け取れる年金額は、厚生労働省のモデルで月額約22万円。これでいくと65歳時点で現役世代時の平均所得の何割がもらえるのかを示す所得代替率は約63%。この数値は将来、楽観シナリオでも約50%まで減少していく。ゆとりある生活には、公的年金の他にもしっかり資金を確保する必要があるのだ。
そこで、まずは自分がもらえる公的年金額の把握から始めよう。自分の公的年金については、毎年誕生月に日本年金機構から送られてくる「ねんきん定期便」が便利。50歳以上の人のねんきん定期便には「公的年金の見込額」が掲載されており、ねんきんダイヤル(0570-058-555)で問い合わせても、知ることができる。
一方、49歳以下の人のねんきん定期便には、年金の見込額の代わりに「これまでの加入実績に応じた年金額」が掲載されている。支給までに時間があるため詳しい額はわからないので、「ねんきんネット」で将来の年金額を試算してみるといいだろう。ねんきん定期便に載っているアクセスキーと基礎年金番号でねんきんネットに登録を(IDを受け取りねんきんネットにログインすれば、将来の年金額が試算できる)。
公的年金のおおよその金額がわかったら、次は退職金と60歳までに可能な貯金額を確認してみよう。典型的な例として、60歳から90歳までの夫婦2人の生活費と多くの世帯に共通する支出を加えると約1億5000万円になる。この数字とアナタの年金と退職金と貯金額を比べてみるといいだろう。この時点では老後のお金がショートする人が多いかもしれないが、諦めることはない。というのも、会社員や公務員の場合、このほかに年金の3階建て部分と呼ばれる企業年金があるからだ。
勤め先の企業年金をまずは確認すること!
企業年金なしなら個人型確定拠出年金を
日本の年金制度は「3階建て」と呼ばれる形で、国が管理してすべての国民が入る国民年金(1階部分)、会社員や公務員が加入する厚生年金(2階部分)に加え、企業が独自に管理する企業年金など(3階部分)からなる。
ただ近年、会社が運用し給付を行なう「確定給付型」の企業年金を負担に感じる企業が増加。代わりに、加入者が自己責任で資産運用を行なう「確定拠出年金」が増えている。自分の会社が確定給付年金か、確定拠出年金か、勤務先の人事部などに聞いて確かめよう。確定拠出年金ならば自ら運用を考える必要がある。
また、勤め先に企業年金がない場合は「個人型確定拠出年金」に加入できる。個人型の加入者数は、自営業者(第1号加入者)と企業年金のない会社員(第2号加入者)を合わせて2015年11月末時点で約24万人。まだ大きく広まってはいないが、ぜひ加入するべきだ。というのも、確定拠出年金には節税や資産運用面で大きなメリットがあるためだ。
1つ目のメリットは、掛け金が所得控除となり、節税できる点。例えば年収440万円で課税所得が330万円以下の人が上限となる月額2万3000円を掛けたとすると、節税額は所得税だけで年間2万7600円。投資額の10%が節税できる。所得税は累進課税のため、年収が高くなるほど節税効果は高い。
2つ目は、運用益が非課税な点だ。NISAの場合は運用益の非課税期間は5年間と決まっている。一方で確定拠出年金は原則60歳までお金を引き出せないが、運用は自由で何度でも売買が可能。その間の値上がり益や分配金に税金はかからない。
3つ目は、お金を引き出すときにも税制優遇がある点だ。引き出しは一時金か年金払いかのいずれかを選べるが、一時金の場合は「退職所得控除」が、年金払いの場合は「公的年金等控除」の税制優遇が受けられる。また受け取りのタイミングは加入期間によって異なるが、10年以上加入した場合は、60歳以降70歳までの間で好きなタイミングを選べる。
運用の際は、運用益が非課税になるメリットを生かして、元本確保型の商品だけでなく値上がり益が見込める株や投資信託での運用を考えたい。また、運用途中での利益確定や運用商品の変更もできるので、状況に応じていつでもリスクの調整が可能だ。退職する年に向けて資産配分を自動で変更するターゲットイヤー型投資信託を選んだり、若いうちは高いリスクを取り、年齢が上がれば元本確保型の商品の比率を高くするのもいいだろう。
また、現時点では個人型の加入者は自営業や企業年金のない会社員に限られているが、2017年1月からは企業年金のある会社員のほか、公務員、専業主婦も加入できるようになるので、老後資金作りに活用するといいだろう。
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