今週6月23日(木)が英国の国民投票日
仮に離脱が決まった時の影響とは?
今週木曜日に英国がEUを離脱すべきかどうかを直接国民に問うレファレンダム(国民投票)が実施されます。
いろいろな世論調査では離脱派と残留派が拮抗しており、投票の行方は最後まで予断を許さない状況です。
もし英国がEUを離脱することになると、関税をはじめとする様々な問題について、英国とEUの間で新たに取決めを結び直さなければいけなくなります。これは長い時間がかかると予想されています。
つまり木曜日の投票で仮に離脱が決まっても、スパッと袂(たもと)を分かつという風にはいかないのです。言い換えれば新しい不確実性が生じるということです。
会社の経営者やマーケットの参加者は不確実性を嫌います。したがって新しい不確実性が生じると企業は設備投資をしなくなるでしょうし、新規雇用を見合わせるでしょうし、投資家は果敢にリスクを取りにくくなると思います。
それは経済の低迷を招来することになるでしょう。
実際、英国財務省はEU離脱派が勝った場合、英国のGDPは-3.6%になると予想しています。それはリーマンショックの翌年の-4.2%にほぼ肩を並べる、酷い景気になるということです。
また失業率は現行の水準より1.6パーセンテージ・ポイント上昇すると見られています。つまり現在5.1%付近の失業率が6.7%に跳ね上がるわけです。
このほか平均賃金が2.8%下落する、住宅価格が10%下落すると予想されています。
EU残留が決まれば株式市場とポンドは上昇、
EU離脱になれば急落後に底をつける可能性も
英国の株式市場やポンドは、このようなリスクをある程度織り込んでいます。したがってもしEU残留が決まれば株式市場は上昇するでしょうし、ポンドは反発すると思われます。
逆にEU離脱となると株式市場やポンドは、さらに売り込まれるリスクもあります。ただ「これで悪材料が出尽くした」という認識から、急落したところがボトムになる可能性も否定できません。
EU離脱のシナリオでは、不動産取引は不活発な状態が続くと思われますので、住宅ローンを提供しているロイズ・バンキング・グループ(ティッカーシンボル:LYG)やバークレイズ(ティッカーシンボル:BCS)は敬遠されるでしょう。
一方、ロンドンの金融街シティへの影響ですが、もちろん短期的には不確実性の増加による悪影響が見込まれるものの、長期的にはシティの優位性は揺るがないと考える投資家も居ます。
イギリスのEU離脱が欧州大陸に与える影響とは?
財政出動が世界のテーマになっていく!?
さて、もし英国がEUを離脱するとなった場合、欧州大陸の国々への影響はどうでしょうか?
(英国が離脱するなら、我々も離脱したい)と考えるEUメンバー国も出ると予想されます。言い換えればEUの求心力が弱まると考えるのが自然なのです。
するとドイツはEUのメンバー、とりわけ南欧諸国が離反しないよう、それらの国々をつなぎとめる工作をしなければいけなくなると予想されます。
その場合、争点となるのは、いまギリシャなどがEUから押し付けられている財政切詰め策です。これに対しては南欧諸国には根強い不満があります。するとドイツがてっとり早くEUの求心力を高めるには、多少の財政出動を容認するということも必要になるかもしれません。
折から米国の大統領選挙をきっかけにアメリカでも来年以降、景気対策をこれまでの金利政策に頼り切りのアプローチから財政出動に切り替えてゆくべきでは? という議論が高まっています。
つまり主役が各国の中央銀行から財務省へシフトすることもシナリオとしてはありうるわけです。
これは債券の価格形成にとってかなり重要なポイントです。
なぜなら財政出動すると(1)景気が良くなる、(2)政府の財政事情が悪化する、という二つのことを通じて債券が売られやすくなるからです。
ひょっとして(英国のEU離脱の国民投票が世界の超低金利の折り返し点だった)と言う風に後になって振り返られることになるかも知れないのです。
このシナリオを投資に生かすには、どうすれば良いのでしょうか?
私の考えでは、その場合は実物資産、具体的には原油、金、銀、穀物、素材などに資金が流入すると思います。
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