2015年のIPOで脚光を浴びた「日本郵政(6178)」。当初は連日上場来高値を更新するなど破竹の勢いがあった。しかし、2017年1月に、筆頭株主の財務省による「大量売却」報道が出た影響により、株式市場に動揺が走っている。直近の「日本郵政」の株価は1400円台で推移しているが、今後株価はどのような動きを見せるのか。場合によっては乗り換えも検討すべきなのか? 悩める投資家に向けて、ダイヤモンド・ザイでは、株式市場に精通するプロに、「日本郵政」の今後考えられる動きを分析してもらった。
財務省による大量売却によって
「日本郵政株」の需給が悪化、株価は下落へ!
「郵政株、今夏にも追加売却」。新聞にこの見出しが躍ったのは、2017年1月16日のこと。2015年11月に「日本郵政(6178)」を株式上場させた財務省が、早ければ今年7月にも、保有株式を追加で売り出す可能性があるというのだ。

もともと「日本郵政」の100%株主だった財務省は、2015年11月のIPOで11%分を放出し、1兆4000億円を手に入れたが、今回の追加売却でも同程度の収入を見込んでいる。
しかし、大規模な売り出しが行なわれれば需給が緩むので、株価が下がりやすくなる。事実、報道があった2017年1月16日の日本郵政の終値は、前日比で4.9%値下がりした。
そもそも財務省は、日本郵政株の約3分の2を売却して4兆円を手に入れ、震災復興財源に充てることを最終目標としている。今回の追加売却もそのワンステップにすぎず、さらなる売却で株価が下がる可能性も残る。
「外国人投資家もその点は非常に懸念しています。追加売却が続く株なんて買えない。結果的に外国人投資家の買い支えが弱まり、株価が下がってしまう」。そう語るのは、外資系金融機関で長年ストラテジストを務めた智剣・Oskarグループの大川智宏さんだ。
「日本郵政」株を1600円以上で買った人は、
他の銀行株などへの乗り換え検討を!
「『日本郵政』を高値で買ってしまった人は、メガバンクなど、ほかの銘柄に乗り換えるのが賢明でしょう。『日本郵政』の利益の大部分は、子会社の『ゆうちょ銀行(7182)』と、『かんぽ生命保険(7181)』が稼いでいます。しかし、2つの子会社は『日本郵政』が株式の過半数を握っているので、民業を圧迫するビジネスへの参入は制限されます。比較的自由に事業が展開できるメガバンクなどと比べると成長が期待しにくいのです」(楽天証券・窪田真之さん)
事業の選択余地が限られている「ゆうちょ銀行」と「かんぽ生命」は、収益の大半を国債運用に頼っている。長期金利が0.1%以下という状況では収益拡大は見込みにくい。
ただし、「ゆうちょ銀行」も「かんぽ生命」も、国債を数兆円規模で保有しており、それを売却すれば多大な利益が得られるので、減配のリスクは非常に小さい。
「2017年2月7日現在、株価は1431円。配当利回り3.50%で、PBRは0.4倍と非常に割安で、1400円を大きく下回ることはないはず。仮に割っても、2016年の安値1170円が下値のメド。ただし、直近高値の1600円はなかなか超えられないでしょう」(グローバルリンク・アドバイザーズ 戸松信博さん)
1600円以下で買った人は、安定した配当が期待できるので、持ち続けるのもいい。しかし、1600円以上で買った人は、買い値まで戻るのは、かなり厳しいので、他の銀行株などへの乗り換えがおすすめだ。