LCCの安さの秘密を大調査！結局「安かろう、悪かろう」なのか？LCC（格安航空会社）使い倒しガイド【vol.2】

1機を徹底的に効率よく使い回す

　2012年は「日本のLCC元年」と言われている。3月のピーチ・アビエーション就航を皮切りに、7月にはジェットスター・ジャパン、8月にはエアアジア・ジャパンといった国内系LCC（ローコストキャリア・格安航空会社）3社が国内路線に参入するからだ。

　ちなみに、LCCには明確な定義はない。一般的には、コストを最大限に切り詰め、それによって従来の運賃より大幅に引き下げた価格で提供する航空会社をLCCと呼んでいる。

　前述のとおり（LCCを使い倒せ！vol．1参照）、LCCを使えば東京－札幌間が片道4990円、東京－ソウルも片道1万円ちょっとで行けてしまう（6月20日時点）。キャンペーンがあるともっとグッと安くなる。

　それにしても、何故LCCはこんなにも運賃が安いのだろうか？　

　航空・旅行アナリストで城西国際大学観光学部助手の鳥海高太朗さんは、「機体の種類を絞り込むことで、整備や部品の調達、乗務員の教育にかかる費用を抑えているんです」と説明する。

 「LCCの多くが、ボーイング737型機、もしくはエアバス320型機という小さめの機種を採用しています。しかも、大手の航空会社の場合、同機種の座席数は150～160席ですが、LCCでは180席程度と約2割多い。そのぶん、収入も増えるわけです」（鳥海さん）

　LCCは、空港に到着してから出発するまでの時間も短い。

　一般的に、国内大手航空会社の場合は、国内線で60分程度、国際線は90分程度かかる。ところが、LCCの場合は「30分程度」（同）だとか。

　整備や清掃にかける時間を短縮することで、1日の運航回数を多くして、収益性を高めているというワケ。LCCの飛行機は、とっても働きモノなのだ。

　とはいえ、整備の時間を短縮が、安全面に影響しないかどうかは、気になるところ…。その点について、鳥海さんはこう言う。

 「航空当局から大手航空会社と同等の安全基準を適用されているので、LCCが安全面で大きく劣るということはありませんよ」

　しかし、実際の乗り心地はどうなのだろう。やはり、これだけ運賃が安いとなると「安かろう、悪かろう」なのか？

　ここで、国内LCCではすでに運航を始めているピーチ・アビエーションの機内・サービスの様子を見てみよう。

お金を払えば、快適なサービスを受けられる機内

　LCCといえばその特徴として座席の狭さが挙げられる。確かに、座席間のピッチは狭い。ただ、座席そのものは背もたれはリクライニングするし（しないシートもある）、きちんとした革張りで座り心地自体が悪いわけではないようだ。

　近頃の大手航空会社の機内ではごく一般的になった、座席前面のテレビ画面はない。機内音楽を聞くために使うヘッドホンやブランケットは、ないか、あっても有料だ。

　座席ポケットには機内誌のかわりに（？）、有料で販売する機内食のメニューが入っている。

　機内食はすべて有料。だが、「ピーチは、メニューの開発にも力を入れていると言われていて、ちゃんと美味しいですよ」と鳥海さん。

　鳥海さんによると、「機内で販売する飲食や商品は、LCCの大切な収入源」。だから、きちんと美味しいものが用意されているわけだ。ＣＡ（キャビン・アテンダント）さんたちも、単に飲食をサーブしているわけではなく、ここが大事な営業の場になっている。

手続きは「何でも自分で、何でも有料」がキホン

　飛行機に乗るまでの手続きについても見てみよう。LCCと既存の大手航空会社と比べた際の大きな違いは、LCCは、とにかく何でも自分でしなければならないこと。そして、既存の大手航空会社では無料で受けられるサービスにも、しっかりお金がかかること。

 「チケットの予約は、利用者がインターネット経由で行うのが基本です。コールセンターや空港のカウンターでも予約できますが、手数料がかかります」（鳥海さん）

　ちなみに、ピーチ・アビエーションの場合、コールセンター経由だと1050円、空港のカウンターだと2100円の手数料がかかる。

　手荷物を預ける場合も基本的は有料。「しかも、インターネットで予約した場合とコールセンターで予約した場合、空港のカウンターで予約した場合とで料金が異なってきます」（同）

　座席指定も有料だ。なかには「そんなことにお金を払うのはイヤ」という人もいるだろう。だが、事前に座席指定をしておかないと、同行者とバラバラになってしまうこともある。

　さらに、空港でのチェックイン（搭乗手続き）は自動チェックイン機で行なう。当たり前だが、セルフサービスだ。ここでも地上業務のスタッフを少なくすることがコスト削減につながっている。

　このように、LCCでは、人手を省くことで人件費を抑え、人件費が発生するサービスは有料化することで、激安の運賃を実現していた。一方、既存の大手航空はこれらサービスをすべて標準仕様にし、すべて込みでの運賃になっている。

　質が悪いから安いのではなく、ムダを省き、サービスは揃っているが、それを必要としてお金を支払うかどうかは利用者側が選択する、というのがLCCといえそうだ。

　そんなLCCは実際に乗ってみるとどうなのだろう？　ということで、さっそくチケットを予約してみた。が、そこは安さの源泉、「何でも自分で」がネックになって悪戦苦闘！

その顛末は、次回に続く！

（取材・文／大山弘子）