今年もノーベル賞の季節となりました。スウェーデンのノーベル財団が発表した今年のノーベル賞受賞者の発表日程は、生理学・医学賞が10月7日、物理学賞が8日、化学賞が9日、文学賞が10日、平和賞が11日、経済学賞が14日になります。
なお、文学賞については、選考機関の関係者による不祥事の影響で昨年の発表が見送られたため、今年は昨年分とあわせて2年分の受賞者が発表されるようです。
そこで今回は「ノーベル賞関連銘柄」を探ります。
2018年のノーベル生理学・医学賞の受賞では、
小野薬品を中心に免疫療法の関連銘柄が人気化!
日本人のノーベル賞受賞が期待される中、株式市場では「ノーベル賞関連銘柄」が注目されており、中には受賞者の発表前から値動きを見せる銘柄もあります。
例えば、2018年のノーベル生理学・医学賞では本庶佑・京都大学特別教授が受賞しましたが、このときは小野薬品(4528)を中心とした免疫療法の関連株が人気化しました。小野薬品は、当時、がん治療薬の創薬に関して米国のiPSベンチャーとの提携を発表し、2018年9月半ばから上昇基調が強まっていましたが、ノーベル賞の発表がさらなる追い風となって急伸しました。
ただし、その後にブリストル・マイヤーズスクイブと共同開発している肺がん治療薬の臨床試験で、米食品医薬品局(FDA)が評価期間を延長したことが嫌気されて急落し、上昇分は帳消しに。その後に発表された決算内容も売り材料視されるなど、悪い材料が重なりました。
その他、記憶に大きく残っているのは、2012年にノーベル生理学・医学賞を受賞した山中伸弥・ iPS細胞研究所長(米国グラッドストーン研究所上席研究者)のときでしょう。このときの株式市場では、「iPS細胞関連」としてバイオ株相場が起こりました。
なお、「ノーベル賞関連」のようなテーマ株は、一気に資金が集中するため、その後の反動も大きいことがネックになります。過熱感が高まる局面においては、早めの利益確定を考えましょう。とはいえ、足元では日経平均株価が停滞して積極的に参加しづらい相場環境となっているので、思惑が先行した売買は限定的だと考えています。
ノーベル賞受賞が期待できる日本人研究者として、
森和俊氏、北川進氏、清滝信宏氏の3人に注目
米国の学術情報サービス会社「クラリベイト・アナリティクス」は、ノーベル賞受賞が有力視される研究者を分析・予想しており、日本人の注目すべき研究者として、医学・生理学賞で京都大学の森和俊教授、化学賞で京都大学の北川進特別教授、経済学賞で米プリンストン大学の清滝信宏教授の3人を挙げています。
この3人は、いずれも今年ではなく過去の予想で名前が挙がった研究者ですが、予想発表から数年後にノーベル賞を受賞するケースもあるため、現在でも注目すべき研究者と考えられます。
京都大学の森和俊教授は、2014年、米国で最も権威のある医学賞でノーベル賞の登竜門ともいわれる「ラスカー賞」を受賞しています。生き物の細胞内で異常なタンパク質が増えるのを防ぐ「小胞体ストレス応答(UPR)」と呼ばれる仕組みの研究を行っています。
一方、京都大学の北川進特別教授は、「多孔性錯体高分子(PCP)」と呼ばれる材料の合成とその機能を研究しています。これは、酸素、二酸化炭素、メタン、水素など、気体を選択的に分離・貯蔵する技術で、ナノテクノロジー材料となります。
米プリンストン大学の清滝信宏教授は、金融危機の研究で国際的に知られる経済学者です。
ノーベル賞の中でも株式市場に大きくインパクトを与えやすいのは医学・生理学賞と化学賞で、それらの賞の発表日に近づくにつれて「バイオ関連」や「ナノテクノロジー関連」への物色が意識されてくるでしょう。
そこで今回の銘柄選定では、この3人の注目研究者のうち、医学・生理学賞候補の森和俊教授と化学賞候補の北川進特別教授がノーベル賞を受賞した場合に株価上昇が期待できる関連銘柄をピックアップしました。
【アステラス製薬(4503)】
「小胞体ストレス応答」を調節する治療薬を研究
アステラス製薬(4503)は、主に泌尿器や移植・免疫領域、がん領域の医療用医薬品を開発、製造、販売しています。
森和俊教授が研究する「小胞体ストレス応答」に関し、それを調節する治療薬について米国のプロテオスタシス社と提携しており、これまでもノーベル賞発表前に値動きみせることがありました。
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【コスモ・バイオ(3386)】
「小胞体ストレス試薬」を手掛ける
コスモ・バイオ(3386)は、研究用試薬・機器、臨床検査薬の輸出入販売などを手掛ける専門商社です。約1400万の豊富な品揃えが強みであるほか、技術力を備えたメーカー機能を複合して商品・試験サービスの自社開発も行っています。
コスモ・バイオでも、アステラス製薬と同じようにさまざまな「小胞体ストレス試薬」を手掛けており「ノーベル賞関連銘柄」の一角になるでしょう。
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【トランスジェニック(2342)】
小胞体ストレス検出試薬を開発
トランスジェニック(2342)は、熊本大学発の研究開発型バイオベンチャーです。遺伝子改変マウスの作製受託や高親和性抗体の作製受託のほか、グループ会社においては非臨床試験の受託や遺伝子解析などを展開しています。
「ノーベル賞関連」の材料としては、「XBP1 タンパク質」の発現制御システムを利用した「小胞体ストレス検出試薬」を手掛けています。
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【ニックス(4243)】
PCPを活用した技術開発が材料視される可能性が
ニックス(4243)は、工業用プラスチック製品を手掛けており、半導体、OA機器、自動車や住設向け製品を展開しています。
最近では、熱可塑性樹脂に「PCP」を配合することで射出成形時の発生ガスを抑制する技術を開発したことをきっかけに急伸する局面もみられました。そのため、北川進特別教授がノーベル賞を受賞したとなると、「PCP」を活用した技術開発が改めて材料視される展開になりそうです。
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【大盛工業(1844)】
「多孔質金属紙」が関連材料として注目を集める
大盛工業(1844)は、樹脂製品や金属製品の製造を手掛ける企業が、多孔質金属紙も扱っています。多孔質金属紙とは、金属材料でありながら紙のように柔軟かつ軽量な材料です。
北川進特別教授が受賞した場合、「PCP」を活用した多孔質金属紙が関連材料として注目を集めることが期待できます。
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また、化学賞の場合、素材から応用製品まで幅広い銘柄がターゲットになりやすいです。そのため、上記の5銘柄以外にも、クラスターテクノ(4240)、東海カーボン(5301)、日本電子(6951)、昭和電工(4004)、帝人(3401)、東レ(3402)、GSIクレオス(8101)辺りの値動きも注意しておくといいでしょう。
ちなみに、過去には村上春樹氏のノーベル文学賞受賞への期待から書店関連銘柄に思惑買いが先行する局面がみられましたが、現在の株式市場ではそれほど話題に上がっていないようです。仮に村上春樹氏が受賞を逃しても、それによる下落は限られそうです。
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