半導体製造装置株は市況性が強いため、
タイミングを見計らっての「飛び乗り」「飛び降り」が重要
テクノロジー株の中でも、半導体製造装置の株は市況性が強いです。「市況性が強い」というのをもっと噛み砕いて言うと、「好況のときはとても良いけれど、不景気の局面ではこっぴどくやられる」ということです。
かつて半導体製造装置産業界は、不況になるとピークから売上高が-40%も落ち込むことが珍しくありませんでした。そのため、半導体製造装置株はずっと「買ったまま」にするのではなく、タイミングを見計らって飛び乗り、飛び降りる必要がありました。
売買のタイミングは難しく、実際に半導体製造装置への注文が細り始めた段階で半導体製造装置株を手放してもタイミング的には手遅れであり、好況時にずっと先を見越して「先回りして降りる」ことが要求されました。
これは、言うのはカンタンですが、実際にやってみるととても難しいです。「半導体製造装置株はプロでもトレーディングが難しい」と言われるのは、このような理由によります。
2019年は半導体製造装置の不況だったが、
ようやく「底入れ」の手ごたえが感じられる状態に
さて、2019年は半導体製造装置の関連各社にとって厳しい年でした。受注で言えば、6月頃が大底でした。これは、2018年に新しいゲームコンソルなどが次々に登場し、GPU(グラフィック・プロセッサ)などが好況だった反動で、過剰投資が起きたことが引き金でした。
しかし2019年の半導体製造装置不況では、売上高の落ち込みはピークから-20%程度にとどまり、これまでの典型的な不況時の-40%より浅い落ち込みでした。
これはどうしてかと言うと、まず、半導体の用途自体が昔のようにパソコンやスマホなどに集中しておらず、最終需要先が多様化し、市場自体が大型化したことによります。それに加えて、過去のダウンサイクルに比べると今回は主要メモリー企業の業績の落ち込みは軽微であり、経営が健全であることが関係していると思います。
現在の立ち位置ですが、「業界全体の底入れの手ごたえが感じられている」状態と形容することができると思います。別の言い方をすれば、「ボトムフィッシング(底値買い)」をするには、もう半導体製造装置各社の株は先駆けしてしまっているけれど、本格回復はまだ先なので、いまから飛び乗っても全然遅くない、という状況です。
回復のリーダーとなっているのは、TSMCやサムスンに代表されるファウンドリー・ロジック各社です。実際、来期はファンドリー・ロジック各社向けの半導体製造装置の売上高が過去最高になると予想されています。
それに続くのはNANDメモリーを作っている顧客企業です。すでに、この顧客群は投資再開の兆しを見せています。
最後までもたもたしているのはDRAMメーカーです。しかし、DRAMの在庫調整は進捗しているので、いずれDRAMメーカーも投資を再開するものと予想されます。
今から半導体製造装置株に投資するなら、
業界最大手の「アプライド・マテリアルズ」に注目!
さて、「今が半導体製造装置株を買うのに適したタイミングだ」ということを説明してきましたが、具体的な銘柄のアイデアとしては、業界最大手級のアプライド・マテリアルズ(ティッカーシンボル:AMAT)が良いと思います。
アプライド・マテリアルズは、半導体製造のいわゆる前工程の分野で幅広い製品ポートフォリオを持っています。
代表的な製品としては、薄膜単結晶成長技術(エピタキシー法)の分野で結晶基板層の生成、もしくは電導率改善のため下層の機械的属性を変更するために使われる「センチュラRP Epi」、イオン注入(ドーピング)の分野で「ビスタシステム」など、酸化工程(オクシダイゼーション)の分野で汚染防止・短絡防止のためにウェーハ上に薄膜をつくる「ヴァンテージ、ラディアンス、センチュラ」を持っています。
さらに、高速熱処理(RTP)の「ヴァンテージ」、物理気相成長(PVD)の分野ではチェンバー内を真空にして高エネルギー原子を衝突させ、ウェーハ表面に付着させる「エンデュラ」、化学気相成長(CVD)分野ではガスにした物質をウェーハ上に堆積させ薄膜を形成させる「エンデュラ、センチュラ、プロデューサー」を展開しています。
また、化学機械研磨(CMP)ではウェーハ表面の平坦化仕上げを行う「リフレクション」、計測検査装置(メトロジー・インスペクション)分野では「SEMヴィジョン、PROヴィジョン、Uヴィジョン、エリア4マスク・インスペクション」、蝕刻加工(エッチング装置)分野ではウェーハ表面から選択した領域のみ除去し他の材料を成膜する「セントリス」などの機器を販売しています。
これらは、いずれも“知る人ぞ知る”ベストセラー機です。
また、アプライド・マテリアルズは、最近アプライド・グローバル・サービス(AGS)と呼ばれるサービス事業に力を入れています。過去12カ月のうちに、AGSが担当するシステムは2300台から4300台に増えました。AGSはサブスクリプション課金を行っており、年率+15%で成長しています。AGSの営業キャッシュフローは、とても魅力的です。
アプライド・マテリアルズは、上記のベストセラー機を単体で売る商売に加えて、インテグレーテッド・マテリアルズ・ソリューションズ(IMS)という売り方を提唱しています。
半導体の線幅がどんどん微細化し、ムーアの法則が実現しにくくなっている今日、3D構造や新素材など、いままでとは違うことを試さなくてはいけなくなってきています。その際、従来の縦割りの専門性を打破し、新しい総合的なツールの使い方をする必要があります。IMSは、そういう手段を提案しています。
長引く「ファーウェイ問題」により、
中国市場における需要拡大の見込みが!
華為技術(ファーウェイ)に対して部品を輸出する際、米国商務省の輸出許可が必要となったことは、中国のハイテク関係者を驚かせる事件でした。そのこともあり、「ハイテク技術の一切合切を国産で自給自足する態勢を構築する!」というのが、中国の産業界の大きな目標になっています。
それを実現するためには、中国はファウンドリーなど半導体に関する一部の分野で大きく立ち遅れています。そのことが、半導体製造の国産化に向けた投資ブームを引き起こしています。
アプライド・マテリアルズは中国本土の企業とも商売しており、中国本土からの引き合いは堅調です。いまのところホッケー・スティック型(横ばいから急上昇する値動き)の需要急増は見られてないものの、今後も堅調な需要拡大が期待できそうです。
2019年の業績は業界全体の不況により足踏み状態だが、
2020年は飛躍の年に!
11月に発表されたアプライド・マテリアルズの第4四半期(10月期)決算は、EPSが予想76セントに対して80セント、売上高が予想36.8億ドルに対して37.5億ドル、売上高成長率が前年同期比-0.1%でした。
第1四半期のEPSは予想75セントに対して新ガイダンス87~95セントが、売上高は予想37.1億ドルに対して新ガイダンス39.5億~42.5億ドルが提示されました。
2019年度の業績は、冒頭で述べたダウンサイクルの影響で去年に比べて悪かったです。しかし、2020年は上に述べたような理由で飛躍の年になると思うので、ここはアプライド・マテリアルズ積極的に買うべきだと考えます。
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アプライド・マテリアルズティッカーシンボル(AMAT)チャート/日足・6カ月(出典:SBI証券公式サイト) ※画像をクリックすると最新のチャートへ飛びます。拡大画像表示
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