【今回のまとめ】
1.円安になった一因は、日本経済の内容が一番悪かったから
2.先週あたりから欧州の見通しが暗転している
3.通貨安戦争を仕掛けたい国は日本だけじゃない
曲がり角に立たされたアベノミクス
先週末(2月16日)のG20では、各国が輸出促進の目的で自国の通貨を切り下げる、「通貨安競争の自粛」が確認されました。
「アベノミクス」はデフレからの脱却を目指す経済政策ですが、意図的にインフレを起こすという行動は、通貨の価値を切り下げることにほかならないので、必然的に「通貨安へ誘導している」という風に外国からは受け取られます。
実際問題として、何が通貨安競争に該当するか? という基準は曖昧ですし、ある意味、先進国の大半がすでにそれをやっている、という風にも言えます。
2012年11月以来、円が独歩安した理由は「アベノミクス」だけではありません。背景には、欧米の経済が幾分持ち直したようだという市場関係者の認識があったからです。
言い直せば、比較感で一番凹んでいるという印象を与える国の通貨は、売られやすかったということです。つまりその意味では「日本の経済が相対的に一番悪い」という認識が円安を進めたといえます。
暗転する欧州の見通し
しかし、先週あたりから、市場参加者のこの認識が変化しつつあります。
まず、欧州の2012年第4四半期のGDPが発表されたのですが、そこでは持ち直しているどころか、欧州の景気のつんのめりがいっそう酷くなっていることが判明しました。

イタリアやスペインといった南欧諸国の内容の悪さはもちろん、これまで比較的しっかりしていたドイツでさえ景気にかげりが見えています。
通貨安競争を仕掛けたい国は日本だけじゃない
ユーロ圏の経済の低迷にもかかわらず共通通貨ユーロが比較的しっかりしていたということは、通貨安による輸出の拡大という常套手段が使えないということを意味します。実際、2012年のドイツの輸出成長は-4.5%と、落胆すべき結果に終わりました。

上のグラフを見て驚くのは、中国と米国を除くと、ほとんどの国で輸出が伸びていないということです。自分の国の輸出産業が苦しんでいる様を見るにつけ、(通貨安競争を仕掛けるか?という)安易な方向へ各国が傾くのは、無理もないことなのです。
要人発言のニュアンスで、一喜一憂してはいけない
われわれ投資家が気をつけなければいけないのは、レトリック(=修辞法、すなわち要人発言のニュアンス)ではありません。次々に発表される経済指標が、どのように変化しているかが重要なのです。
その見方からすると、欧州発のデータは年初のころの希望的な印象よりも、かなり悪化しています。長期の趨勢としての円安というシナリオは堅持してよいでしょうが、目先に限って言えば、円安という相場観一辺倒に偏るのはよくないと思います。
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