【今回のまとめ】
1.ジム・ロジャーズばりのフロンティア市場への投資が可能なETFがある
2.「MSCIフロンティア・マーケット100ETF」は産油国の組み入れが多い
3.歴史の浅いETFなので時価総額が小さく、流動性に注意が必要
フロンティアとは?
フロンティア(Frontier)とは「辺境」を意味します。株式投資でフロンティア・マーケットと言った場合、エマージング・マーケット(新興国)よりさらに小さくて、株式市場が未成熟な国々を指します。
皆さんの中には若い金髪のガールフレンドを従えて、バイクで世界の辺境の地を走破し、その実体験から辺境の国々に転がっている投資機会に関し独自の洞察を得たジム・ロジャーズという著名な投資家が書いた『冒険投資家ジム・ロジャーズ世界バイク紀行』という本を読んだ方もいらっしゃるかと思います。
ロジャーズが世界を放浪した1980年代には、それらの辺境の国に投資するのは極めて困難でした。
しかし、最近はETF(上場投資投信)という極めて便利な商品が登場したおかげで、そのような敷居の高い投資対象にも手軽に投資できるようになっています。
普通では買えないマーケットに投資できるETF
そこで今回は、ガチでフロンティア・マーケットに投資する、ユニークなETFを紹介したいと思います。それは2012年の9月にNYSEアーカ取引所(電子取引所)にデビューした「アイシェアーズMSCIフロンティア・マーケット100ETF(ティッカー:FM)」です。

このETFは、普通では投資しにくい国の株式ばかりが組み込まれています。内訳は、下の組み入れ上位国のグラフからもわかる通り、産油国が多くなっています。

まず、このETFの組み入れ上位国の経済状況を見ていきます。
組み入れ上位10カ国の経済のファンダメンタルズを見ると、まずGDP成長率は総じて高い水準です。

なお、産油国の成長率は原油価格に大きく影響される点は注意が必要です。
次にインフレ率ですが、パキスタンやアルゼンチンのように経済の脆弱な国ほど悪いと言えます。

一方、経常収支は産油国が多いだけに、さすがにピカピカのところが多いです。

続いて、このETFの組み入れセクターと企業はどうなっているか見ます。
前のページで紹介したフロンティア諸国(産油国)の巨大企業となると、まず国営石油会社が思い浮かぶのですが、それらの国策企業は株式を上場していない場合が多いため、組み入れられていません。そのため、組み入れ業種をみると金融の比率が高くなっています。

最後に、組み入れ上位銘柄を見ていきます。

投資対象は魅力的だが、流動性の低さには注意が必要
このETFは組み入れ銘柄数が102と、かなり分散が行き届いています。また我々個人ではおいそれと買えない敷居の高い国の株式を中心に組み込まれているため、本当にユニークな投資機会を提供しているといえます。
また組み入れ上位国は経常収支などの面で極めて健全な国が多く、ポートフォリオ全体としての通貨危機リスクは低いと言えます。
その半面、このETFには問題もあります。まず時価総額が5370万ドルと小さく、日々の出来高が薄いです。これは2012年の9月にスタートしたばかりのETFなので、仕方ない部分でもあります。
したがって、このETFを売買する際は、成り行き注文を出さず、必ず前日の引け値で指値注文を出すべきです。これを励行するだけでも不本意な値段を払わされるリスクを大幅に軽減することができます。
なお、このETFは純資産(NAV)に対して2%程度のプレミアムになっています(2月28日時点で1.95%)。プレミアムを支払うのは気分のいいことではありませんが、ここは我慢したいと思います。
なぜなら、実際にこのETFが組み込んでいる102の銘柄を、それぞれの市場で買いにいったとすれば、そのポートフォリオ構築に要するコスト(=これをインプリメンテーション・コストと言います)は間違いなく2%よりもっと割高だからです。
これは逆に言えば、原株市場とのアービトラージ(鞘取り)の機会が無い、ないしは極めて困難であることを示唆しており、鞘が抜けない以上、どうしてもある程度のプレミアム、ないしはディスカウントは残ってしまうということなのです。
なお、このETFの年間費用(信託報酬等の費用の合計)は0.79%です。これは投資先の国々の運用コストが高いことを考えれば低いと言えます。
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