株ニュースの新解釈
【第73回】 2012年4月27日 保田 隆明

ヤクルトの敵対的買収報道は意図的なリークの可能性も。投資家はヤクルト株に飛びつくな!

じわじわと株を買い増す時間稼ぎが
両者にとっては都合のいい落としどころか

 このようにヤクルト、ダノン両者にとってやや手詰まり感がある状況での解決策は、これまで同様の時間稼ぎで終わる可能性が少なくない。

 ヤクルトにしてみると敵対的買収を仕掛けられるのがもっとも怖い。だからこそ、2004年以降は提携推進室を設けて表面上は関係の修復に動いている。ただ、これはヤクルト側にしてみると、時間稼ぎの側面が大きいであろう。何か提携に向けて前向きな姿勢をポーズとして見せておかないと、いつダノンが敵対的買収を仕掛けてくるかわからないからだ。

 一方、提携推進室設置から既に8年が経過し、その間の果実と言えばインドやベトナムでの合弁会社の設立程度であり、ダノンにしてみると、もっと具体的な果実が欲しい、あるいは、いつまでもヤクルトの時間稼ぎに付き合っていられないという状況になっているとしても不思議ではない。

 これ以上ダノンを焦らすわけにはいかないため、ヤクルトとしては多少の持分引き上げは飲み込まざるをえない。ヤクルトは既にダノンの持分適用企業である。したがって、多少持分比率を引き上げられたところで、実質的には何も変わらない。

 ただ、3割に迫るとダノンから社外役員の人数を増やしてくれという圧力を受けかねないので、できれば20%台半ばあたりで収めたいところである。一方、ダノンにとっては持分割合を増やすことができれば、8年間続いた硬直状態を少し動かすことができる。実態としての果実は大きくはないが、表面上は大きな前進であろう。

4月21日の日本経済新聞報道後に株価は急騰した(ヤクルト・日足チャート)

 今回のニュース、発信元が欧州だったことから考えても、ヤクルトから何らかの果実を引き出そうとしたダノンがメディアに意図的に「敵対的買収の可能性もあり」と刺激的な内容でリークしたと考えるのがしっくりとくる。ヤクルトをビビらせて持分引き上げに合意させようということであろう。投資家としては敵対的買収を期待して焦って同社株に飛びつく必要はなさそうである。