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ふるさと納税の返礼品、金券がなぜダメなのか?資金調達額が全国1位となった宮崎県都城市などの「地元産の高還元率返礼品」について考えてみた

【第143回】 2016年7月4日公開(2022年3月29日更新)
保田 隆明
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 先日、総務省が2015年度の全国のふるさと納税の状況を公表した。それによると、2015年度の全国のふるさと納税による資金調達額は1653億円となり、前年度比4.3倍に上ったことがわかった。

 この数値については、2015年10月時点で2015年度の上半期の数値が公表されていたこともあり、想定できた数字ではあるが、1653億円というのは数字としては大きいものであり、ふるさと納税の存在感がますます大きくなってきたことは間違いない。そんな中、返礼品について電化製品や金券などの提供を控えるように総務省からお達しが出た。今回はこの問題について考えてみたい。

ふるさと納税の返礼品
換金性の高いものや商品券は自粛へ

 ふるさと納税に関しては、提供される返礼品の魅力度合いが各自治体の資金調達額に大きな影響を与えるため、より消費者にアピールしようと換金性や資産性の高い返礼品を提供する自治体が昨年度は相次いだ。

 それに対して総務省は今年4月1日に通達を出し、パソコンやiPadなどの換金性の高い電化製品、それに商品券などをふるさと納税の返礼品として提供することを自粛するように各自治体に求めた。

 もともとは地元に住民税として納めるべき税金を特定の自治体に「寄付」するのがふるさと納税であるが、その寄付金額の大半は翌年度の減税や税金の還付という形で戻ってくる。実質的な自己負担は2000円にすぎない。それに対して、換金性の高い商品や商品券が返礼品として提供されると、ふるさと納税をした人たちは不当に得をしてしまうことになる。

 年間で数万円程度の農産物などの特産品であれば、地域振興にもつながるということで理解も得られようが、高額所得者ほどふるさと納税ができる金額が大きく、また受け取る返礼品の額も大きいため、人によっては数千万円単位の商品券を入手してしまっている。これは不公平な節税行為にあたるのではないかという批判が多く存在した。

後発自治体の奇策はある意味自然な流れだが
今後は「地元産の返礼品」「還元率」がカギとなる

 一方、返礼品の魅力度合いで資金調達額が変わるのであれば、ふるさと納税における後発の自治体が巻き返す策は限られており、先行する自治体よりも魅力度の高い返礼品を提供するしかない。その意味では、換金性の高い物や資産性のあるものを返礼品にしようという発想が出てくることは極めて自然である。

 したがって、これら資産性や換金性の高いものを返礼品として提供した自治体を責め立てることはなかなかできない。むしろ、後発自治体ゆえに知恵を絞った結果なのだ。

 しかし、ふるさと納税の制度を存続させる、あるいはこの制度を健全なものとして発展させていこうと考えるならば、やはり不当な節税につながるような状況は是正される必要がある。その意味で4月1日の総務省の通達は致し方ない。

 資産性の高いiPadやノートパソコンは、それを返礼品として提供しても地元は潤わないので、地域活性という視点をもう少し持つことができれば、また違ったアプローチもあっただろう。

 たとえば、2015年度のふるさと納税での資金調達額が全国1位となったのは宮崎県都城市だが、同市はふるさと納税での寄付金額に対して戻ってくる返礼品の価値が高い。いわゆる還元率が高いのだ。

 この高い還元率については、別途賛否両論があるのであるが、同市の返礼品は地元産のものなので、還元率が高い分自治体に残るお金は少ないが、代わりに地元の事業者が潤うことで、雇用や消費を創出するので、実は経済波及効果は高い。ノートパソコンやiPadだとこういう地域経済へのプラスがないのだ。

 よって後発自治体の戦い方としては、都城市を上回る還元率を提供するというのは一つの策かもしれない。

返礼品で商品券を提供することは、
自治体にとっては効率的なことという事実

 一方の商品券の場合の問題は、節税よりももっと他のところにある。

 商品券が地元でのみ使用が可能であれば、域外から人を呼び込む力があるため地域振興につながる。しかし、その商品券が、ネット通販でも使用可能となると、人は東京にいながらその商品券でモノを購入することが可能となり、当該地域に足を運ぶ必要性はなくなる。

 また、その商品券で購入できるものが、地域の特産物等に限定されていれば地域にお金が確実に落ちるが、全国津々浦々どこでも買えるようなものや、ブランド品なども購入できるとなっては、商品券はその地域に人を呼び込むこともできないし、地元の商品を販売することにも役立たない。

 つまりふるさと納税でお金をせっかく調達したとしても、その半分以上のお金は商品券という形になって完全に域外に流出していくことになる。したがって、商品券を返礼品とする場合は、確実に地元経済を潤すような、地域経済活性化につながるような設計をすることが重要になる。

 なお、自治体の視点になってみると、一つの違った景色が見える。

 例えば、1万円のふるさと納税に対して7000円分の商品券を提供する場合、3000円のお金はその自治体に残る。7割が流出したとしても、ふるさと納税で調達する金額の総額を増やしさえすれば、手残り金は大きくなる。10億円調達して7億円出て行ったとしても3億円は残る。

 通常の自治体では調達金額の約半額を返礼品の提供に充てるため、手残り金が3億円というのは、通常の自治体で6億円を調達したことと同じことである。商品券の印刷や発送にはさほど手間はかからない。しかも上限なく提供することが可能だ。

 一方、地元の農産物等の特産品を返礼品として提供する場合は、提供できる数量に限界があるし、商品の品質管理は容易ではなく、梱包や発送の手間も大きくかかる。したがって、通常の特産品を返礼品とする自治体で6億円を調達するのと、商品券を返礼品として10億円を調達するのでは、おそらく後者の方が簡単かつ自治体の作業的には効率的である。

 もともと地方の自治体では職員の数も少なく、ふるさと納税関連業務という追加業務を回す余裕はない。よって、地域経済への波及効果を勘案することなく、資金調達のみを目的するのであれば、商品券を返礼品として提供することは合理的な判断となるのだ。したがって、商品券を返礼品として提供している自治体にはなんら悪気はないはずである。

商品券提供の一番の問題は、
「自治体間の不毛な顧客の奪い合い」になること

 実は、商品券を返戻品として提供することの最大の問題は、近隣の自治体間で顧客の取り合いになることである。

 商品券を返礼品として提供することで、地方の自治体が首都圏の人のお財布を狙うというのは、わかりやすくまた理解の得られやすいストーリーである。しかし実際に何が起こるかというと、商品券の最大の利用者は、商品券を発行する近隣の自治体住民となるということだ。

 本来なら、近隣のスーパーや商店に落ちていた消費のお金が、商品券を発行する自治体に吸い取られることになる。近隣の町にしてみるとたまったものではない。自分たちのすぐ隣に商品券を返礼品として提供する自治体が登場したことで、地元の消費が奪われてしまうからだ。

 もともと衰退あるいは疲弊している地方の自治体において、近隣の自治体間で消費者を奪い合うことは何も生み出さない。むしろ、地方創生をしていくにあたっては近隣の自治体間での協力体制を強化していくべきだろう。

 今回の総務省による商品券等の提供の自粛の通達は、富裕層の節税目的の行為を防止するためというのが一義的な見方であるが、実は地方における自治体間の無駄な顧客の奪い合い、またそれによってさらなる地方の疲弊と衰退の防止にもなる。

 このように、ふるさと納税についてはその返礼品のあり方や是非についての議論ばかりが最近話題になっているが、一方で熊本の復興支援のように有意義な形で用いられるものも少なくない。

 返礼品についてばかりに議論が偏ることで、この制度が本来持っている本質的な意義についての関心が薄れることが最も懸念すべきことだろう。今こそ自治体間での自主的なガイドラインを制定するなど、健全な発展に向けた取り組みが必要である。
 

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