世界投資へのパスポート
【第381回】 2015年8月31日 広瀬 隆雄

中国は、やっぱり米国債を売っていた!
中国政府の中国株、人民元買い支えが、
米国株にとっても対岸の火事ではない理由

<今回のまとめ>
1.普通、株式市場が荒れると米国債が買われる
2.ところが今回は、米国債は売られた
3.売りの張本人は中国だった
4.中国政府は中国株や人民元を買い支える資金作りのために米国債を売却した
5.米国での金利上昇は不景気を招くリスクがある

株式市場が売られているのに債券は買われなかった

 8月11日に中国が人民元の切り下げを行って以来、世界のマーケットは乱高下しています。普通、このように相場が荒れる局面では投資家は比較的安全だと思われる米国債に避難するので、米国債の価格は上昇(利回りは低下)します。なるほど8月20日頃までは米国10年債の利回りは低下していたのですが、その後、どういうわけか利回りは急上昇しはじめました。

売りの本尊は中国政府。
中国株を買い支える資金になった

 ウォール街関係者によると「中国政府が米国財務省証券を売っていた」(バロンズ)のだそうです。

 海外投資家のうち、世界で最もたくさん米国債を保有しているのは日本で、2月の時点で19.87%となっています。中国は第2位で19.86%を保有しています。

 この巨大な保有者が、一時的にせよ売りに回ったということは、ウォール街でかなり話題になりました。

 中国が米国債を一部処分したのは、そのカネで人民元と中国株を買い支えるためです。今回、中国の中央銀行が処分した米国債は金額にして150億ドル相当だったそうです。

 中国による米国債の処分は、米国連邦準備制度委員会(FRB)に代わって、中国人民銀行が米国の金融政策を引き締めたのと同じ効果があります。FRBが9月17日の連邦公開市場委員会(FOMC)で、おいそれと利上げ出来ない理由は、ここにあるのです。

世界全体の借金は、
リーマンショック以降も増えている!

 リーマンショックが起きた時、「レバレッジが高すぎる」「借金を圧縮しなければいけない」という議論が出ました。しかし世界全体の債務残高は2007年の142兆ドルから、現在は200兆ドルへ増えてしまっています。とりわけ政府による借金(=国債)と、ジャンク債などによる企業の借金の増加が目に余ります。

 これらの投資不適格債の多くは、シェール企業が発行したものです。

財務制約条件の緩い案件が増え、
乱脈な借り方が増えている

 普通、企業などのお金の借り手が借金するときは、債券の投資家などのお金の出し手が、そのお金の使途に関してうるさく注文をつけるものです。しかし融資競争が過熱化すると、コベナント・ライトと呼ばれる、財務制約条件のゆるい案件が増えます。

 つまり貸す方も、借りる方も、放埓(ほうらつ)になるわけです。とりわけ企業の借り手は、リーマンショックが襲った当時に比べても、現在の方がずっと乱脈な借り方をしていると思います。折から原油価格の急落で大半のシェール企業は赤字に転落しています。焦げ付きが増えるのは、大体、こういう時です。

まとめ……米国債が売られると米国経済に悪影響を及ぼす

 まとめると、中国政府は中国株や人民元を買い支えるための資金を、米国債を売ることで捻出しています。それは米国における金利上昇を招き、ひいては住宅ローン金利の上昇など、アメリカ経済にとって悪い影響を与える可能性があるのです。