仮想通貨には絶対に触るな。あなたの大事なお金が溶けてなくなる!
今年5月25日に公開した第33回のコラムで私は皆さんにこのように言った。韓国発のステーブルコイン「テラ」の価格がわずか1日で97%もの大暴落。「どこがステーブルじゃい!」。仮想通貨(暗号通貨)市場から大量の資金が流出し、価格を保つためのアルゴリズムが機能しなくなったため「ステーブル(安定した)」というロジックが崩壊。仮想通貨の代表選手であるビットコインも急落して2万6000ドルまで下落した。そして、すぐに投機的な買いが入って3万1000ドル台を回復…というのが当時の状況だった。その投機的な値動きを見て、仮想通貨への投資はご法度だと。
さて、今のビットコインはどうだろうか? 11月9日には一時1万5700ドル台まで下落し、この半年間でさらに半値になり一段と厳しくなっていることがわかる。1年前の2021年11月につけた過去最高値(6万9000ドル)から実に8割近くも下落している。
FTXトレーディング破綻は仮想通貨業界で過去最大となり、世界に激震!
最近ではテラよりも大きな事件が仮想通貨の世界で起こった。米国の仮想通貨交換業大手のFTXトレーディングの破綻だ。大谷翔平や大坂なおみといったトップアスリートたちを次々とアンバサダーとして使い、F1のメルセデスとチームスポンサー契約を結び、日本でも子会社FTXジャパンで事業を展開している。創業者で最高経営責任者(CEO)のサム・バンクマン=フリード氏は弱冠30歳で数百億ドルの会社を築き、業界の「神様」とまで呼ばれるようになった人物である。
だが、11月11日にFTXトレーディングと約130に及ぶグループ会社が日本の民事再生法に当たる連邦破産法11条(チャプター11)の適用を申請。FTXは100万人を超える顧客がおり、160億ドル(約2兆2000億円)もの預かり資産を持っていたため大騒動になっている。さらにあろうことか、顧客資産のうち100億ドルを関連企業アラメダへの融資の原資として横流しするという愚行を犯して資金繰り難が表面化。80億ドルの資金不足に陥ったことが明らかになった。FTXは顧客による預かり資産の引き出し措置を停止しており、顧客資産がどの程度戻ってくるのかは不明だ。負債額は推定で数兆円にのぼり、仮想通貨業界では過去最大の経営破綻となる。世界各国で幅広く事業展開しているため、連鎖破綻を警戒する声も出ている。
加えて、FTXへの出資者への影響も大きいようだ。2022年の資金調達時のFTXの企業価値評価額は320億ドル。出資者は多岐にわたっており、ソフトバンクグループも傘下のファンドを通じて1億ドル弱を投資していたことが判明。今後、巨額の損失処理を迫られる可能性がある。
当然のことながらフリード氏は辞職し、後任にはジョン・J・レイ氏が就いた。レイ氏は2001年に巨額の不正会計で経営破綻したエンロンの200億ドル超の債務を債権者に返還するための陣頭指揮を執った人物だ。またもや大掛かりな破綻事件での登板となった。
日本の顧客資産は保全されたものの、世界的には戻ってこない可能性が大
世界に少なくとも100万人超いる顧客は自身の口座から仮想通貨や、仮想通貨を買うために置いていた待機資金を引き出せなくなる事態が発生したが、日本では少し状況が異なる。金融庁は11月10日に金融商品取引法に基づく国内の資産保全命令を出した。数万人の利用者を抱えるFTXジャパンの自己資本は約100億円。この資金が国外流出するのを禁じる措置だ。また、FTXジャパンも日本法人を通じたサービスの預かり資産は全額保全されるとの通知を顧客あてに送付した。FTXジャパンの預かり資産は仮想通貨・円資産含めて222億円に上るが、この迅速は措置は、ひとえに日本では規制が厳しいからだ。なお、FTXトレーディングは同社が抱える負債に対し売却可能な資産がわずか1割程度にとどまっているらしい。世界的には顧客への返金がほとんどできない可能性がある。
FTX破綻の事態を受け、投資家が仮想通貨交換所の資産菅理に対して不安を強めている。他の交換所からも仮想通貨を引き出す動きが強まっており、ドバイのさる大手交換所からは預かり資産のうちビットコインが一気に4割減ったとの報道もなされている。世界の交換業者の顧客資金の管理体制への懸念は強まっており、投資家は交換所に「実際に資産を保有している証明」を強く求める動きが出ている。当然のことだと思う。
仮想通貨は通貨ではなく、空想で生み出された実体のない投機対象である
私が毎週土曜日、FM軽井沢で『軽井沢発!太田忠の経済・金融“縦横無尽”』という番組を2014年からおこなっているが、スタート当初から仮想通貨を度々話題に取り上げてきた。私がどんな解説をしているかって? 曰く「仮想通貨は資産価値の裏付けが何もない単なる投機的対象」、曰く「法的整備が不十分」、曰く「コインが盗まれたら戻ってこない」、曰く「マネーロンダリングの温床」、曰く「安易な売買は危険」…と言ってきた。はっきり言っておこう。仮想通貨は決して通貨ではない。空想で生み出された実体のない投機対象である。仮想通貨に投資している人たちは、はっきりと目覚めて欲しい。あなたの大事なお金が溶けてなくなる前に…。
逆業績相場への警戒を怠らず、来たるべき金融相場に備えて小型株の調査も進める
さて、マーケットである。私がDFR(ダイヤモンド・フィナンシャル・リサーチ)で投資助言をおこなっている「勝者のポートフォリオ」は先週、2銘柄が年初来高値更新し、マーケットをアウトパフォームした。
先週のコラムで「来週はCPIラリーの持続性を見極めたい」と述べていたが、さすがに息切れ感が出ており利益確定の動きが優勢だ。米連邦準備理事会(FRB)高官のコメントではブレイナード副議長が「利上げペースを減速するのが間もなく適切になる」と述べた一方、セントルイス連銀のブラード総裁が「政策金利はまだ景気の過熱感を止めるほどの十分な水準に達していない」とタカ派的な姿勢を見せたことで、異なるトーンのメッセージとなっているのが興味深い。12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)の利上げ幅は0.75%ではなく0.50%がコンセンサスになっているが、おそらくシナリオ通りになると思われる。
米国の2年物短期金利と10年物長期金利の逆イールドは、先々週までは-0.5%前後であったが先週は-0.70%と一段と拡大して過去最大レベルのギャップとなり、景気減速は避けられないだろう。逆業績相場への備えをしつつ、今後の金融相場に備えての小型株の調査も順調に進めている。グロース銘柄は逆業績相場に入れば再び大きく売られるリスクが高まるためまだ慎重な姿勢であるが、好機をとらえてパフォーマンス向上の布石を打っていきたい。
●太田 忠 DFR投資助言者。ジャーディン・フレミング証券(現JPモルガン証券)などでおもに中小型株のアナリストとして活躍。国内外で6年間にわたり、ランキングトップを維持した。現在は、中小型株だけではなく、市場全体から割安株を見つけ出す、バリュー株ハンターとしてもメルマガ配信などで活躍。
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