学生時代の起業で成功、株で1億円達成、今はスタートアップ企業に出資する”エンジェル投資家”の立野新治さんを直撃! 的確にブームを先取りしたり、事業の”出口”を見極めたりする秘訣とは?
ダイヤモンド・ザイでは、毎号異なるゲストに「お金との向き合い方」について聞くインタビュー記事「おカネの本音!」を掲載中。ダイヤモンド・ザイ10月号のゲストは”起業家”兼”投資家”として知られる立野新治さん。
立野さんは大学時代に初めて起業。さらに、学生でありながら株で1億円を稼ぎ、それを元手として海外での起業や暗号資産への投資などに挑戦。さまざまな失敗を経験しつつも、トータルでは成功を収めてきた。今回は、そんな立野さんがいかにしてブームを先取りしてきたか。また、どのように事業の出口戦略を捉えてきたかを直撃。さらに、目下の投資対象や、現在進めている事業についても聞いた!
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大学2年生のときに最初の会社を設立!
成功を収めたものの、すぐに売却して株式投資の道へ!
──これまでに数多くの会社を立ち上げてこられ、現在はエンジェル投資家でもある立野さんですが、最初の起業は大学2年生のときだったそうですね。
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立野 地方の大学生をインターンとして企業に派遣する会社を、2004年に起こしました。まだ、現在のようにインターンシップ制度(大学生が就業体験をする制度)が定着しておらず、首都圏の学生ぐらいしか参加していなかった時代です。
地方の優秀な大学生を派遣すれば、多くの企業から歓迎されるのではないか、と考えたんです。バイトで貯めたわずかな資金を元手に、起業することにしました。
結果は大成功でした。派遣した大学生を企業が採用したら、報酬が入る成果報酬型のビジネスモデル。企業からの引き合いがとても多く、夏休みには月100万円以上を売り上げることができました。しかし、その人材ビジネスは1年で売却することにしたんです。
──なぜ売ったのですか?
立野 当時は、ライブドアの堀江貴文さんに象徴される空前の起業ブームで、僕も「第二のホリエモン」を夢見て会社を起こしたんです。
ただ、学生数千人とSNSのミクシィでつながったり、企業の社長に毎晩会いに行くような生活に疲れてしまった。田舎で真面目な弁護士の父親に育てられた生活とのギャップがありすぎました。事業を売却した後はいろいろな人に相談し、株式投資を生業にすることにしました。まだ学生でしたが、稼ぐことが何よりも好きなことだったんです。
──起業から、株式投資にシフトしたわけですね。株に興味を持ったきっかけは何だったのですか?
立野 大学に入学してから、サークル活動などが楽しめなかったので、バーテンダーのアルバイトをしていたんです。そこで、いろんな大人と毎日話していたことが、僕の人生の原点になっています。そういうつながりのなかで、会計士や証券会社の人がいて「株でもやってみたら?」と勧められたんです。
このとき、起業熱は冷めていたけれど、株を通じてさまざまな事業モデルを勉強しておけば、また何かビジネスをするときに必ず役に立つと思いました。僕は「人間の生き方は、出会う人によって変わる」と思っていますが、このときのアドバイスがなかったら、まったく違う人生を歩んでいたかもしれません。
──株式投資を始めてみて、どうでしたか?
立野 最初は全然ダメでした。どんな銘柄を買ったらいいのかもわからず、株をやっている友人に聞くと、仕手株を勧められて損したり、株主優待狙いで買ったところ、権利落ち日に下落して損をするといった、初歩的なミスばかりしていました。
でも「資金が少ないうちにやれることは全部やって失敗し、自分に得意な投資手法を探そう」と決めていたので、1年目から信用取引や先物オプション、CFD、海外株、FXなどあらゆることをやっていくうちに、少しずつ腕が上がっていったんです。大学を卒業するまでに1億円を稼ぐことができました。
──それは凄い。大学を出て就職しなかったのも、投資で食べていけるという自信があったからですか?
立野 その自信はなかったです。だから就職活動をして、大手企業から内定をもらいました。大学を卒業したのが2007年3月なんですが、その当時、BRICs(※ブラジル(Brazil)、ロシア(Russia)、インド(India)、中国(China)、南アフリカ(South Africa)の頭文字を合わせた造語。ゴールドマン・サックス社が2001年に発行したレポートの中で、2050年にはBRICsの4カ国がGDPで上位6カ国に入る可能性があるということが記載されていた)の人気がスゴかったんです。
特に、2010年に万博が開催予定だったこともあり、中国の上海が投資ブームに沸いていた。「この波に乗り遅れてはいけない」と思って、内定を辞退しました。1億円の資産のうち3000万円を投じて、上海でクラブを経営する予定だったんです。
ですが、現地のパートナーに騙され、その全額を失いました。私の海外デビュー戦は、若者が詐欺師に引っ掛かるという典型的なパターンで手痛いものでした。
上海で詐欺に遭い、帰国して一時は弁護士を目指すも、
今度はミャンマーで海外ビジネスに再挑戦!
──それはショックでしたね。
立野 上海ではクリーニング配達事業もやっていました。詐欺に遭った後、その事業も売却して「この先どうしようか?」と思っていたときに、父から「弁護士になってはどうか?」と、アドバイスをもらいました。父の事務所を手伝いながら通える地元のロースクールを選びました。司法試験は合格目前までいったのですが、2012年からミャンマーに移住しました。
──急展開ですね。上海で痛い思いをしたのに。
立野 ヒラリー・クリントン氏が2011年末にミャンマーを訪問したことを契機に、軍事政権が終わり、鎖国同然だった国が海外投資の受け入れを始めるという期待が高まった。日本からも数多くの企業が進出を始めていたので、ミャンマーでコンサルタントの事業を立ち上げました。進出してくる日本企業の法人登記などをお手伝いする会社です。
このビジネスは進出ラッシュの追い風に乗ったことに加え、国の機関や現地日系企業が応援してくださったので、滑り出しは順調でした。でも、ミャンマーでは政局の不安定さも続いていました。それに、近隣諸国よりもGDP成長率が低かったんです。そういった、さまざまな理由があって3年ほどで日本に戻ってきました。
──そのあたりの素早い決断に、株式投資の経験が生かされているようですね。
立野 ブームの少し前に乗り、終わる前に売るというのは株でも事業投資でも通用するセオリーだと思います。日本に戻った後、民泊の運営会社とドローンの代理店を始めているのですが、これらもブームの兆しを感じて始めたビジネスです。
民泊の運営会社は、Airbnb(エアビーアンドビー)が日本でまだ話題になる前に立ち上げ、世の中で近隣住民とのトラブルなどの問題が出始めた頃に、清掃会社に売却しています。ドローンビジネスも、中国・深センの世界シェア4位のメーカーと直接契約をし、ブームになる前に代理店を作りました。これも総務省と電波法改正について議論をしたりで、パイオニアとしてかなり業界に貢献したと思います。ドローン事業のためにアマチュア無線4級も取ったんです。この事業は国内2位の代理店に売却しました。
──非常に見切りがよく、スピーディな「出口戦略」です。
立野 どちらの事業も2017年に売却しているのですが、これには大きな理由があります。暗号資産相場のビッグウェーブが訪れたからです。この年、資金決済法が改正され、暗号資産が支払い手段の一つとして追加されました。世界初の暗号資産にまつわる法律が日本で整備されたということでブームが起こり、ビットコイン相場が急騰したのです。
2014年のマウントゴックス事件の前にビットコインへの投資で大損したので、暗号資産には消極的でした。ですが、2017年からビットコインへの投資を再開しました。当時は短期的に売買を繰り返し、資金が1日で億単位で増減しました。2017年のバブルでは儲けることができませんでしたが、2020年からの上昇相場では長期保有し儲けることができた。
失敗を過度に恐れずチャンスをつかむ!
現在は社会的意義のある事業を手掛けるスタートアップ企業に投資!
──株式投資や事業投資だけでなく、暗号資産へも投資するとは、立野さんはまさに“変幻自在”ですね。
立野 投資対象を選別することなく、どんな対象であろうとチャンスがあれば、まずはやってみながら学ぶのが僕のスタンス。早く動き、早く手仕舞いするというのが基本です。もちろん失敗も山のようにあります。
失敗のリスクは常にありますが、過度に恐れることなく、積極的にチャンスをつかもうとすれば、損失を上回る利益が少しずつ積み上がっていくと思います。それに、新しい事業領域には詐欺師も多いですが、面白い人とのつながりができるのも魅力なんです。
そういう人たちと、一発当ててやろうとは思わずに、その業界が良くなるように働くことが、わたしの人生を華やかにしてくれています。
──現在は、どのような投資を行っているのですか?
立野 もう暗号資産へは、ほとんど投資をしていません。株の長期運用に加えて、資産の一部をスタートアップ企業に投資しています。
──いわゆるエンジェル投資家ですね。どんな会社に投資しているのですか?
立野 たとえば、暗号資産の取引にかかる税金を自動計算するサービスを提供しているパフィンという会社。投資家が安心して暗号資産を取引できるようになる有益なサービスだと思って、出資を決めました。
また海洋プラスチックの再生事業に取り組むリマーレなど、社会的に意義がある事業を行っている10社に投資しています。
──今後はどのような活動をしていきますか?
立野 株式投資と事業投資は、どんな国にいても生きている限り続けていくと思います。あとは、僕がやれることなら、自分で事業を起こしてやっていきたい。現在は、ドバイやタイへ進出する企業を支援するコンサルティング会社を経営する傍ら、金融教育事業を準備しています。いま投資詐欺が多く、老後資産づくりに不安を抱いている人も多い。
これだけ世の中テクノロジーが進化しているのに、金融教育分野では授業料が何十万円するサービスが中心です。ですから、クイズに答えながら金融の知識が学べる、無料のアプリ「Moneychat」を準備しています。銀座にある「投資家BAR」をはじめ、さまざまな方々に応援してもらっています。
この事業を日本中の小中学校で当たり前に使われるようなサービスに育てることが目標です。今後も同じ思いを持つ仲間と、金融教育事業で世の中に貢献していきたいと思います。
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