世界投資へのパスポート

2年に及ぶ原油価格の下落でふるい落とされたシェール企業の中で生き残った3社を紹介!各社の今後の業績と直近1年の株価の見通しは?

【第436回】 2016年9月19日公開(2022年3月29日更新)
広瀬 隆雄
facebook-share
twitter-icon
このエントリーをはてなブックマークに追加
RSS最新記事

「最後まで生き残った者は強い」
シェール業界では振るい落としが完了した

 「試練は我々を強靭にする(That which does not kill us, makes us stronger.)」という諺(ことわざ)があります。

 2014年の夏以降、シェール開発がもたらした原油の供給過剰で、原油価格は100ドルを超える水準から一時30ドルを割り込む水準まで下落しました。

 シェール開発では、地中の奥深くの岩盤に閉じ込められた原油や天然ガスを生産する関係で、採掘コストが高いです。このため「原油価格が50ドルを割れたら、シェール企業は次々に倒産するだろう」と言われてきました。

 しかし実際に原油価格が下げ始めると、各社は中途半端な規模で、なおかつ旧式なリグを休止し、効率の良い大型のハイテクリグを、最もロー・コストで生産できる油田に投入することで生産コストの低減を実現しました。

 下のグラフで青は北米の原油井の数を示しています。ピークの1600本を超える水準から、現在は400本前後にまで数が減り、「振るい落とし」が完了したことを伺わせます。

 この結果、コスト高で採算性の悪いバーケンやイーグルフォードなどの地域ではリグの休止と労働者の失業が多発しましたが、コスト競争力に勝る地域は、最後まで生き残りました。その最後まで生き残った地域が西テキサスにあるパーミアン・ベイシンと呼ばれる生産地域です。

 今日は、最後までサバイバルし、これまでより強靭にスケールアップしたパーミアン・ベイシンを中心に操業しているシェール銘柄を紹介します。

西テキサス、パーミアン・ベイシンでは
現在178本のリグが稼働中

 パーミアン・ベイシンはテキサスの一番西、ニューメキシコ州との州境に近い地域にあります。南はメキシコとの国境に挟まれています。この生産地域の中心にある町はミッドランドと呼ばれる人口12万人の田舎町です。

 現在、パーミアン・ベイシンでは全部で187本のリグが稼働しています。同地域での業者別生産高は下のようになっています。

 なお上のチャートは生産高の多い順から並べてありますが、その中にはシェブロン(ティッカーシンボル:CVX)エクソン・モービル(ティッカーシンボル:XOM)のような世界に展開している大企業もあります。それらの企業にとってパーミアンは微々たる存在ですので、同地域での活動が株価に与える影響は小さいです。

 その反面、このチャートに出てこない中小型株でも、後に紹介するパースリー・エナジー(ティッカーシンボル:PE)ダイヤモンドバック・エナジー(ティッカーシンボル:FANG)のように業容を拡大している企業は存在します。

【パースリー・エナジー(PE)】
いまもっとも急成長しているシェール企業

パースリー・エナジー(ティッカーシンボル:PE)は2008年に創業された若いシェール企業です。同社を創業したのはブライアン・シェフィールドで、彼のお父さんはパイオニア・ナチュラル・リソーセズ(ティッカーシンボル:PXD)のCEOです。

 パースリー・エナジーは新規株式公開(IPO)以来、平均して毎期+16%のペースで生産高を増やしてきました。つまり今、最も急成長しているシェール企業というわけです。

 同社の生産高のうち6割が原油で4割が天然ガスとなっています。水平掘りが出来る大型リグ4基を現在稼働中ですが、2017年にはこれを5~7基に持って行く計画です。大型リグを1基増やすごとに全社生産高は年間+30%成長できると同社では試算しています。

 パースリー・エナジーのバランスシートは強固で、純負債対EBITDA(利払い・税払い・償却前利益)比率は1.7倍です。

 目標株価としては向こう1年で55ドルを想定しています(9/16時点で32.97ドル)。

【ダイヤモンドバック・エナジー(FANG)】
健全なバランスシートと魅力的な含み資産

ダイヤモンドバック・エナジー(ティッカーシンボル:FANG)はパーミアン・ベイシンに8万4000エーカーの鉱区を持っており確認埋蔵量は1.57億バレルです

 同社は健全なバランスシートをしており、これを背景に積極的に鉱区を買収しています。7月も南パーミアンの鉱区を5.6億ドルで買収しました。投資家は同社の含み資産が魅力的であることをよく心得ているので、この買収に合わせて発表された550万株の公募増資も難なく売り切れました。

 同社は原油価格の動向をにらみながら試掘を行っています。現在、20か所の試掘で原油が確認されていますが、それらを生産体制にもってゆくには抗井仕上げ(コンプリーション)と呼ばれる段取りをする必要があります。普通、石油の探索生産の際にかかる費用は、試掘が4割、抗井仕上げが6割ですので、試掘して「原油が出る」ということが確認されても、原油価格が低迷している間は生産に移らず、原油価格が戻って来るかどうか「様子見」します。

 ダイヤモンドバック・エナジーの場合、原油価格が50ドルを超えてきたら、これらの待機している油井の生産にとりかかる予定です。

 目標株価としては向こう1年で115ドルあたりを想定しています(9/16時点で89.69ドル)。

【アパッチ(APA)】
20億バレルの油田を発見し注目を浴びている

アパッチ(ティッカーシンボル:APA)は、今、最も話題を提供しているシェール企業だと思います。その理由はパーミアン・ベイシンに隣接するアルパイン・ハイという地域で、少なくとも20億バレルの油田を発見したと発表したからです。この地域はこれまで「粘土層のため生産が難しい」として地質学者から敬遠されてきた場所です。その関係でアパッチは45万エーカーという広大な鉱区を破格の安値で取得することが出来ました。

 アルパイン・ハイは未だパイプラインなどのインフラストラクチャが整備されていないため、実際の生産は数年先になると思われます。

 同社はこれまでエジプト、メキシコ湾、北海など、世界的に事業展開してきましたが、今後はパーミアン・ベイシンならびに「アルパイン・ハイ」に経営の軸足を移してゆくと思われます。

 目標株価としては向こう1年で80ドルあたりを想定しています(9/16時点で58.56ドル)。

【まとめ】
原油価格が横ばい、もしくは上昇で攻めに転じる3社

 2年間におよぶ原油価格の下落局面で生産コストの高いシェール企業は守りの経営を強いられ、ウォーレン・バフェットの言葉を借りれば「潮が引くと誰が裸で泳いでいるかわかる」状態になりました。今日紹介した3銘柄は、パーミアン・ベイシンという最も競争力のある油田に特化したことで生き残ることができました。

 今後、原油価格が横ばい、もしくは高くなるというシナリオでは、これらの企業は「攻め」に転じることができると思います。

【※米国株を買うならこちらの記事もチェック!】
米国株投資で注意が必要な「為替」と「税金」とは?「特定口座(源泉徴収あり)」か「NISA口座」で投資をして、口座内に「米ドル」を残さないのがポイント!

※証券や銀行の口座開設、クレジットカードの入会などを申し込む際には必ず各社のサイトをご確認ください。なお、当サイトはアフィリエイト広告を採用しており、掲載各社のサービスに申し込むとアフィリエイトプログラムによる収益を得る場合があります。
証券会社(ネット証券)比較!売買手数料で比較ページへ
ネット証券会社(証券会社)比較!取引ツールで比較ページへ
 つみたてNISA(積立NISA)おすすめ比較&徹底解説ページへ
証券会社(ネット証券)比較!人気の証券会社で比較ページへ
ネット証券会社(証券会社)比較!株アプリで比較ページへ
 iDeCo(個人型確定拠出年金)おすすめ比較&徹底解説!詳しくはこちら!
ネット証券会社(証券会社)比較!最短で口座開設できる証券会社で比較ページへ
ネット証券会社(証券会社)比較!外国株で比較ページへ
桐谷さんの株主優待銘柄ページへ
証券会社(ネット証券)比較IPO(新規上場)比較ページへ
ネット証券会社(証券会社)比較!キャンペーンで比較ページへ
証券会社(ネット証券)比較!総合比較ページへ
【2024年11月1日時点】

「米国株」取扱数が多いおすすめ証券会社

◆マネックス証券 ⇒詳細情報ページへ
米国株の取扱銘柄数 取扱手数料(税込)
約4900銘柄 <現物取引>約定代金の0.495%(上限22米ドル)※買付時の為替手数料が無料/<信用取引>約定代金の0.33%(上限16.5米ドル)
【マネックス証券のおすすめポイント】
外国株の取扱銘柄数はトップクラス! また、米国株の買付時の為替手数料が0円(売却時は1ドルあたり25銭)となるキャンペーンが長期継続しており、実質的な取引コストを抑えることができる。さらに、外国株取引口座に初回入金した日から20日間は、米国株取引手数料(税込)が最大3万円がキャッシュバックされる。米国ETFの中で「米国ETF買い放題プログラム」対象21銘柄は、実質手数料無料(キャッシュバック)で取引が可能。米国株の積立サービス「米国株定期買付サービス(毎月買付)」は25ドルから。コツコツ投資したい人に便利なサービス。米国株は、時間外取引に加え、店頭取引サービスもあり日本時間の日中でも売買できる。また、NISA口座なら、日本株の売買手数料が無料なのに加え、外国株の購入手数料も全額キャッシュバックされて実質無料! 企業分析機能も充実しており、一定の条件をクリアすれば、銘柄分析ツール「銘柄スカウター米国株」「銘柄スカウター中国株」が無料で利用できる。
【関連記事】
◆【マネックス証券の特徴とおすすめポイントを解説】「単元未満株」の売買手数料の安さ&取扱銘柄の多さに加え、「米国株・中国株」の充実度も業界最強レベル!
【米国株投資おすすめ証券会社】マネックス証券の公式サイトはこちら
◆SBI証券 ⇒詳細情報ページへ
米国株の取扱銘柄数 取扱手数料(税込)
約5300銘柄 <現物取引>約定代金の0.495%(上限22米ドル)/<信用取引>約定代金の0.33%(上限16.5米ドル)
【SBI証券のおすすめポイント】
ネット証券最大手のひとつだけあって、米国から中国、韓国、アセアン各国まで、外国株式のラインナップの広さはダントツ! 米国株は手数料が最低0米ドルから取引可能で、一部米国ETFは手数料無料で取引できる。また、2023年12月1日から米ドルの為替レートを「0円」に引き下げたので、取引コストがその分割安になった。さらにNISA口座なら米国株式の買付手数料が無料なので、取引コストを一切かけずにトレードできる。米国株を積立購入したい人には「米国株式・ETF定期買付サービス」が便利。また、米国株の信用取引も可能。さらに、リアルタイムの米国株価、48種類の米国指数および板情報を無料で閲覧できる点もメリットだ。米国企業情報のレポート「One Pager」、銘柄検索に使える「米国株式決算スケジュールページ」や「米国テーマ・キーワード検索」、上場予定銘柄を紹介する「IPOスピードキャッチ!(米国・中国)」など情報サービスも多彩。「SBI 証券 米国株アプリ」は「米国市場ランキング」「ビジュアル決算」「銘柄ニュース」などの機能が充実している。
【関連記事】
◆【SBI証券の特徴とおすすめポイントを解説!】株式投資の売買手数料の安さは業界トップクラス! IPOや米国株、夜間取引など、商品・サービスも充実
◆「株初心者&株主優待初心者が口座開設するなら、おすすめのネット証券はどこですか?」桐谷さんのおすすめは松井、SBI、東海東京の3社!
【米国株投資おすすめ証券会社】SBI証券の公式サイトはこちら
◆楽天証券 ⇒詳細情報ページへ
米国株の取扱銘柄数 取扱手数料(税込)
約4750銘柄 <現物取引>約定代金の0.495%(上限22米ドル)/<信用取引>約定代金の0.33%(上限16.5米ドル)
【楽天証券おすすめポイント】
米国、中国(香港)、アセアン各国(シンガポール、タイ、マレーシア、インドネシア)と幅広い銘柄がそろっており、米国株の信用取引も利用可能! 指定の米国ETF15銘柄については買付手数料が無料で取引ができるのもお得。さらに、2023年12月からは米ドル⇔円の為替取引が完全無料! NISA口座なら米国株の売買手数料が0円(無料)なのもメリットだ。米国株の注文受付時間が土日、米国休場を含む日本時間の朝8時~翌朝6時と長いので、注文が出しやすいのもメリット。米国株式と米国株価指数のリアルタイム株価、さらに米国決算速報を無料で提供。ロイター配信の米国株個別銘柄ニュースが、すぐに日本語に自動翻訳されて配信されるのもメリット。米国株の積立投資も可能で、積立額は1回3000円からとお手軽。楽天ポイントを使っての買付もできる。銘柄探しには、財務指標やテクニカル分析などの複数条件から対象銘柄を検索できる「米国株スーパースクリーナー」が役に立つ。
【関連記事】
【楽天証券おすすめのポイントは?】トレードツール「MARKETSPEED」がおすすめ!投資信託や米国や中国株などの海外株式も充実!
◆【楽天証券の株アプリ/iSPEEDを徹底研究!】ログインなしでも利用可能。個別銘柄情報が見やすい!
【米国株投資おすすめ証券会社】楽天証券の公式サイトはこちら
◆DMM.com証券(DMM株) ⇒詳細情報ページへ
米国株の取扱銘柄数 取扱手数料(税込)
約2400銘柄 無料
【DMM.com証券おすすめポイント】
米国株の売買手数料が完全無料なので、取引コストに関しては割安! ただし、配当金が円に両替される際の為替スプレッドが1ドルあたり1円と高いので、配当狙いで長期保有する人は注意が必要だ。他社と違う点としては、外貨建ての口座がなく、売却時の代金や配当が自動的に米ドルから円に交換されること。米ドルで持っておきたい人には向かないが、すべて円で取引されるため初心者にとってはわかりやすいシステムと言えるだろう。また、米国株式と国内株式が同じ無料取引ツールで一元管理できるのもわかりやすい。米国株の情報として、米国株式コラムページを設置。ダウ・ジョーンズ社が発行する「バロンズ拾い読み」も掲載されている。
【関連記事】
◆DMM.com証券「DMM株」は、売買手数料が安い!大手ネット証券との売買コスト比較から申込み方法、お得なキャンペーン情報まで「DMM株」を徹底解説!
◆【証券会社比較】DMM.com証券(DMM株)の「現物手数料」「信用取引コスト」から「取扱商品」、さらには「最新のキャンペーン情報」までまとめて紹介!
【米国株投資おすすめ証券会社】DMM.com証券の公式サイトはこちら
【米国株の売買手数料がなんと0円!】
DMM.com証券(DMM株)の公式サイトはこちら
本記事の情報は定期的に見直しを行っていますが、更新の関係で最新の情報と異なる場合があります。最新の情報は各社の公式サイトでご確認ください。

ポール・サイ 米国株&世界の株に投資しよう!
【クレジットカード・オブ・ザ・イヤー 2023年版】2人の専門家がおすすめの「最優秀カード」が決定!2021年の最強クレジットカード(全8部門)を公開! 最短翌日!口座開設が早い証券会社は? おすすめ!ネット証券を徹底比較!おすすめネット証券のポイント付き
ZAiオンライン アクセスランキング
1カ月
1週間
24時間
イオンカードに新規入会5%OFF!詳しくはこちら! 楽天カードは年会費永年無料で、どこで使っても1%還元で超人気! 【マイルの貯まりやすさで選ぶ!高還元でマイルが貯まるおすすめクレジットカード!
イオンカードに新規入会5%OFF!詳しくはこちら! 楽天カードは年会費永年無料で、どこで使っても1%還元で超人気! 【マイルの貯まりやすさで選ぶ!高還元でマイルが貯まるおすすめクレジットカード!
ダイヤモンド・ザイ最新号のご案内
ダイヤモンド・ザイ最新号好評発売中!

最強5万円株
毎月高配当
ふるさと納税

1月号11月21日発売
定価780円(税込)
◆購入はコチラ!

楽天で「ダイヤモンド・ザイ」最新号をご購入の場合はコチラ!Amazonで購入される方はこちら!

[最強5万円株/毎月高配当]
◎巻頭企画①
2年目NISA6つのチェックポイント
損が出ていたらどうする?
旧NISAの正しい仕分け方は?など

◎巻頭企画②
中間決算速報!2025年に向けて上がる株
通期上ブレ期待株
稼ぐ力が高まった株

◎第1特集
少額でたくさん買える!
配当利回り5%超や10倍株など!
最強5万円株93銘柄

十夢が直撃!桐谷さん、5万円株の魅力を教えて!
桐谷さんお墨付き!5万円優待株!
●有名株も大化け期待株も!イチオシお宝株
●長期で安心して持てる!買いの高配当株
-配当利回りトップ50買い売り診断
●株価10倍が狙える株も!プロ厳選株

◎第2特集
毎月配当金&優待がもらえる生活
毎月配当&優待をもらうための3つの極意&買い時
●1~12月決算月別のオススメ株72を公開!
配当+優待カレンダー
●綴じ込み付録:勝ち株を書き込める!銘柄管理シート

◎第3特集
NISAで勝つための新戦略!ETF入門
桶井道さん&たぱぞうさん2人の凄腕のワザも!
【別冊付録】
年末の失敗も撲滅!駆け込み!
「ふるさと納税絶品カタログ」全7ジャンル

●Category①肉類
●Category②魚介類
●Category③加工食品
●Category④新米&ごはんのお供
●Category⑤果物・野菜
●Category⑥菓子・飲料

◎連載も充実!

◆目指せ!お金名人
◆10倍株を探せ!IPO株研究所2024年10月編
◆おカネの本音!VOL.29兒玉遥さん
◆株入門マンガ恋する株式相場!
◆マンガどこから来てどこへ行くのか日本国
◆人気毎月分配型100本の「分配金」速報データ!


>>「最新号蔵出し記事」はこちら!
>>
【重要】定期刊行物 予約購読規約変更のお知らせ


「ダイヤモンド・ザイ」の定期購読をされる方はコチラ!


>>【お詫びと訂正】ダイヤモンド・ザイはコチラ

【法人カード・オブ・ザ・イヤー2023】 クレジットカードの専門家が選んだ 2023年おすすめ「法人カード」を発表! 「キャッシュレス決済」おすすめ比較 太田忠の日本株「中・小型株」アナリスト&ファンドマネジャーとして活躍。「勝つ」ための日本株ポートフォリオの作り方を提案する株式メルマガ&サロン

ダイヤモンド不動産研究所のお役立ち情報

ザイFX!のお役立ち情報

ダイヤモンドZAiオンラインαのお役立ち情報