【1】今日の株式相場早わかり!
金利上昇一服で買い安心感
日経平均株価は4日ぶり大幅反発! 29日の米国市場で主要株価指数はそろって下落。1~3月期のGDP(国内総生産、改定値)が速報値から下方修正されたことで金利は低下したが、顧客獲得システムを手掛けるセールスフォースが決算を受けて急落したことが重石になった。一方、昨日一時900円を超える下落を見せた日経平均株価は、今日は一転して上昇スタート。米金利の低下を背景に国内長期金利の上昇が一服したことが押し目買いを誘い、午後には一段と上げ幅を広げる展開となった。半導体株の一角は軟調だったものの、負債比率の観点から金利低下が恩恵となる不動産株や電力株のほかに、証券株などを中心に大きな上昇が見られた。
今晩の米国市場では連邦準備理事会(FRB)が重要視している個人消費支出(PCE)価格指数の4月分が発表される。食品・エネルギーを除くコアベースで前年同月比+2.8%、前月比では+0.3%と、ともに3月と同じ伸びが予想されている。予想以下にとどまれば、米金利の低下に一役買ってくれそうだ。
【日経平均】38487.90円↑↑(+433.77円)
【グロース250】618.49↑↑(+16.22)
【NYダウ】38111.48ドル↓(-330.06ドル、30日)
【ナスダック】16737.079↓↓(-183.501、30日)
■日経平均株価チャート/日足・6カ月
【2】今日の注目株!
全体さえない5月に株価好調だった銘柄は?
先週から東証プライムの売買代金が4兆円を割り込む日が散見される。また、昨日は日経平均株価が一時900円超安となるなど、最近の日本株は冴えない印象を受ける。しかし、こうした局面だからこそ株価が好調だった銘柄には独自の成長要因があると考えられ、注目すべきだと考える。そこで今日は5月に新高値を付けた株価パフォーマンス好調の銘柄を確認してみよう。
2位の三越伊勢丹ホールディングスは今期も2ケタ増益見通しで連続最高益を計画。インバウンド需要の拡大に加え、デジタル化による“個”を意識したマーケティング戦略が奏功しており、構造改革による経費削減効果も続く。連続増配や自社株買いなど株主還元も強化している。エイチ・ツー・オー リテイリングも百貨店事業に加え、経営統合による規模拡大などで食品事業が好調。新たな中期経営計画や資本コストや株価を意識した経営方針を発表し、評価につながっている(5月29日号)。
半導体株ではディスコがランクイン。表外ではあるが12位のTOWAとともに、米エヌビディアの好決算を受けて直近に上場来高値を更新したばかり。生成AI(人工知能)向けの最先端の半導体製造に欠かせない装置を手掛け、世界シェアトップを誇る点も共通している。AIや半導体関連としては電力需要の拡大で電力株への注目度も高まっているが、東北電力と北海道電力はともに原子力発電所の再稼働に対する思惑が強まっているもよう。北海道電力は特に最先端半導体の国産化を目指すラピダスによる工場建設もあり、関心を集めやすい(5月28日号)。
ヨネックスや表外の11位だったアシックスのスポーツブランド両社はともに今期最高益を計画。伊勢化学工業はペロブスカイト太陽電池関連として騰勢を強めている(5月24日号)。
■三越伊勢丹ホールディングス株価チャート/日足・6カ月
【3】金曜連載「ザイアナリスト小林大純『IPO株ココだけの話』」
苦境の新興株、来週のアストロスケールに注目
今回は28日に新規上場した学びエイドの結果と、6月のIPO(新規株式公開)予定を確認しよう。
学習塾向けの映像授業などを展開する学びエイドは、公開価格を3割強上回る初値を付けた。公募・売出規模が8億円あまりと比較的小さかった(=換金売りが出にくい)ことから、株式需給(売りと買いのバランス)面の懸念は乏しかっただろう。また、すでに終わった2024年4月期の業績も堅調だったようだが、初値後の株価は好調と言いづらい。類似企業には業績・株価とも苦戦するところが散見され、同社も高めのPER(株価収益率)は許容されにくい可能性がありそうだ。
もっともこの種の企業に限らず、新興株は国内金利の上昇が強い逆風となって目下不調と言わざるを得ない。新興株中心の東証グロース市場250指数は、コロナ禍が拡大した2020年4月以来の安値を付ける場面があった。新興株の苦境が深まる中、6月は11社が新規上場する予定だ(30日時点)。
特に、来週6月5日に上場するアストロスケールホールディングスの注目度が高い。スペースデブリ(宇宙ごみ)の除去などに取り組み、4月には世界初となるデブリの接近撮影に成功したと発表。昨年はispaceやQPS研究所といった宇宙ベンチャーのIPOが賑わいを見せたことから、アストロスケールへの期待も高まっているようで、公開価格は当初想定価格(720円)を上回る850円に決まった。ただ、業績がまだ赤字段階のため、株価は金利高の影響を受けやすいとみられ、公募・売出規模も230億円超とまずまず大型(=換金売りが出やすい)。好発進なら投資家のリスク許容度はさほど低下していないことを示すが、期待通りの結果となるか注視したい。
小林大純
ダイヤモンド・ザイ アナリスト
早稲田大学法学部卒、早稲田大学大学院ファイナンス研究科(現経営管理研究科)修了(MBA)。金融情報サービス会社などを経て現職。日本株アナリストとして各種メディアで活動中。
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