短期プレイヤーの失敗で下げたところを、自信を持ってピックアップする方法とは? バイデンが大劣勢でも、なぜ大統領選から下りない?
2024年7月2日(火)、米国・シアトルからメルマガ&オンラインサロン「ポール・サイの米国株&世界の株に投資しよう!」で情報配信をしている元フィデリティ投信トップアナリストのポール・サイさんが、ストックボイス社が手掛ける経済・マーケット番組「WORLD MARKETZ」(TOKYO MX 月~金 22時~23時)に生出演した。
今回の放送で、ポールさんはアップルとアマゾンを例に、短期のプレイヤーが失敗して下げたところを、自信を持ってピックアップする方法を解説。米大統領選でトランプの勝利がほぼ確実視されているのに、バイデンが立候補し続ける理由についても語ってもらったので、さっそくチェックしていこう。
カナダのガルフ諸島に泊めてあるヨットから生出演
番組は、ポールさんがカナダのガルフ諸島に泊めてあるヨットから生出演していることを、アシスタントの木村カレンさんが紹介するところからスタートした。
「ガルフ諸島で何をされているんですか?」との木村さんの問いに、カリブ海のグレナダからカナダ経由でシアトルに運んできたヨットに乗って、日本の瀬戸内と似ているガルフ諸島をクルージングしていると答えたポールさん。
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すると木村さんは、日本は蒸し暑いのに、ポールさんがモコモコのフリースを着ていることに気づき、ポールさんにガルフ諸島の気候について質問した。
ガルフ諸島はまだ涼しく、気温は夜が10度、昼間は太陽が出れば20~25度くらいとのこと。
ただ、ガルフ諸島の北にあるディソレーション・サウンドという場所では、潮の流れが合流して海水が温かくなるそうで、泳ぐこともできるため、ポールさんはそこを目指しているとのことだった。
ここで、番組MCの渡部一実さんが「シアトルからカナダに行くとき、出国や入国の手続きはしているんですか?」と聞いた。
アメリカには出国手続きがないものの、カナダには入国手続きがあるとポールさん。黄色い電話があるところに行って、こういう船と番号で入国しましたと報告するそうだ。
ポールさんのヨットから見える景色を、番組の最後にぐるっと一周見せてもらうのが恒例になってきているのだが、その様子を先に載せておくと、朝の美しい港の様子がうかがえる。
アップルが基本的にいい会社であるという長期投資の視点を持てれば、安くなったところを買って、高く売ったり、保有できる
続いて、渡部さんは「おくつろぎのところ申し訳ありませんが、金融の話など伺えれば」と切り出し、AIで出遅れたと言われたアップルの株価が、一時期振るわなかったところから、最近は少し買われていることについて、ポールさんの見方を聞いた。
まず、アップルは基本的にいい会社だとポールさん。ビジネスモデルがすごく強く、ブランド力があって、ユーザー間のネットワークの強さと、情報を守ってくれる信頼感もあるそうだ。
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アップルは今回、AIで出遅れたけれど、ポールさん曰く、これはいつものこと。
アップルは一番先に商品を出すのではなく、その商品がある程度できて、そこから改善した商品を出すようにしており、AIにおいても同様の戦略をとっているようだ。
マーケットには短期志向の性質があるため、アップルがAIで出遅れたとの見方から株価は下がったものの、アップルがAIに注目していることがわかると株価は戻ったのだそう。
アップルが基本的にいい会社であるという長期投資の視点を持つことができれば、安くなったところを買って、高く売る、または保有することでリターンをもらえるようになるとのことだった。
アマゾンのジェフ・ベゾスも「株主への手紙」を書いていた! それを読めば、短期で下がったところを長期の視点で買う自信をもらえる
次は、アマゾンの話題に。
ウォーレン・バフェットの「株主への手紙」は日本でも結構騒がれるけれど、アマゾン創業者のジェフ・ベゾスも「株主への手紙」を書いていて、それがアマゾンへの投資を考えるうえで結構参考になるようだ。
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ポールさんは昔からアマゾン株を持っているそうで、いつ買ったのかというと、ポールさんの弟さんがアマゾンに新入社員として入社した2002年頃に、50セントで買ったとのこと。
そんなアマゾンは今、200ドルくらいになっているから、現在も保有し続けているのだとしたら、ものすごいリターンになっていると言える。
ポールさんによると、ジェフ・ベゾスは大学時代、コンピューターサイエンスを専攻していたけれど、その後はヘッジファンドでアナリストとして働き、インターネット黎明期の1990年代後半にヘッジファンドから出て、アマゾンを創業したとのこと。
そして、ジェフ・ベゾスは長期の視点で、お客さんを重視する戦略を採用しており、本を売るのも意図的に選んだという。
会社を大きくすることで購買力が出て、書籍を安く買い、お客さんに安く提供して喜んでもらい、これを繰り返すことで会社がどんどん大きくなるという戦略は、車輪がどんどん回るという意味で「FLYWHELL」と呼ばれるのだそう。
つまり、ジェフ・ベゾスは短期の利益より、長期の成長と市場のマーケットシェアを優先したのだ。
もっとも、「FLYWHELL」戦略はジェフ・ベゾスが発明したモデルではなく、ウォルマートもコストコも同じビジネスモデルなのだそう。
インターネット業界の中でも、例えばNETFLIXはよい作品を作り、多くのお客さんに見てもらうことでお金が入って、またいい作品を作るというFLYWHELL戦略をとっているようだ。
長期投資家は、こういう会社の長期的な戦略がうまくいっていることを確認したうえで、長期の視点が見えていない短期のプレイヤーが失敗して下げたところをピックアップしていくのだという。
ウォーレン・バフェットやジェフ・ベゾスに限らず、株主への手紙を書いている社長は多く、日本の例では、ドン・キホーテを展開するパンパシフィックホールディングスの社長も長期的な戦略をとっているとのこと。
1軒の店がドン・キホーテとして国内で大きくなり、インバウンドでさらに大きくなって、そこからヒントをもらい、アジアやパンパシフィックに日本文化を持ち出すという戦略は、株主への手紙の中に全部書いてあるそう。それを見て投資のヒントをもらえばいいとポールさんは教えてくれた。
すると渡部さんが、アマゾンが出来て間もない1997年のジェフ・ベゾスの手紙を用意していて、内容を語りだした。
そこには「我々のビジネスは長期的にやっていくのであって、短期的な利益やウォールストリートの反応にいちいちとらわれない」「プログラムと投資効果を分析して、リターンが不十分なものは廃止していく」などと書かれており、1997年から短期的なものにとらわれず、長期でやっていく方針を打ち出していたことがわかる。
それを聞いたポールさんは、そういう会社の方針を確認するのが重要で、長期投資家がその戦略が正しいと認識すれば、下がったら買う自信をもらえると答えていた。
バイデンが大劣勢なのに、大統領選から下りないのは自分のエゴに見える。アメリカの政治は繰り返し、個人のエゴに振り回されている
最後は大統領選の話題に。
先日のバイデン対トランプのテレビ討論会で、バイデンがダメだという見方が世間には広がっているけれど、ポールさんはどう見ているのか、渡部さんが質問した。
「バイデンは負ける可能性がかなり大きい」とポールさん。賭け市場でもバイデンの勝率は3割しか残っておらず、昨日(7月1日)、最高裁でトランプにとって有利な判決も出たそう。
討論会のバイデンのパフォーマンスは悪く、ちゃんと喋れなかったり、かなり年を取ってぼけ始めているという見方もある一方、民主党の人たちの中には、バイデンが大丈夫ではないとわかっているのに、裸の王様のように大丈夫だと言い張っている人もいるそうで、そこは人間の心理の部分もあるようだ。
民主党が途中で路線変更する可能性もあるけれど、今の時点で変更していないと難しいし、変更しても民主党が分裂する可能性もあるとのこと。
バイデンはこんなに劣勢だと自覚しているはずなのに、民主党を救うために立候補していると言っているのは、ロジックとして合理的ではないし、自分のエゴのためにやっているように見えるとポールさん。
そして、アメリカの政治は繰り返し、個人のエゴに振り回されているのだという。
その例として、ポールさんが挙げたのがリベラル派の最高裁判事だったキングズバーグだ。ポールさんはすべてを語らなかったが、キングスバーグはオバマの時代に辞めていれば、自分の席をリベラルに譲れたのに、そうはせずに死去してしまい、トランプが保守派の最高裁判事を指名したことで、2020年の選挙の様相が一変してしまったことが、キングスバーグのエゴに他ならないと言いたいようだった。
すると、渡部さんが「僕が大統領の椅子に座ってたら、討論会でボロボロだろうがなんだろうが絶対に譲りませんよ。パワフルな椅子というのは」と、自分のエゴをフルパワーで解放。
これを受けてポールさんは「だからアメリカ建国時に、ジョージ・ワシントンはいかに素晴らしい人だったか。独裁者にならなかった人類初に近い人間かもしれない」と切り返した。
いずれにしても、ポールさんはトランプ大統領がほぼ確実だと考えていて、民主党は新しい候補者に変えても時間がないし、分裂する可能性もあって難しいことになっていると結論付けた。
ここまで、7月2日(火)放送の「WORLD MARKETZ」に電話出演した、ポールさんのマーケット解説を中心にお届けした。
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