・FOMCでは予想通り利下げ決定、ナスダック最高値で日経平均は反発も、円高で失速…
・古河電気工業や味の素などの注目決算を点検
・防衛株・銀行株などトランプ2.0関連株もチェック
【1】今日の株式相場早わかり!
ナスダック最高値も円高で日本株は伸び悩み
日経平均株価は反発! 7日の米国市場ではハイテク株を中心に買いが入り、ナスダック総合指数とS&P500指数が連日で最高値を更新。一方、金融株に利益確定売りが広がりNYダウは小幅に反落した。連邦公開市場委員会(FOMC)では大方の予想通り0.25%の利下げが決定。パウエル議長からタカ派的な見解が出なかったことから経済のソフトランディング(期待)が高まった。今日の日経平均株価は400円高で始まるも伸び悩み、午後には下落に転じる場面があった。米長期金利の低下を受けて円高・ドル安が進んだことが重荷になったほか、米トランプ政権による保護主義的な政策への警戒感などもくすぶったようだ。
三菱重工業などの防衛関連株が大幅に上昇。米長期金利の低下を受けて中小型グロース株の上昇も目立った。一方、円高を背景に自動車株が総じて軟調。業績・配当予想を下方修正した日産自動車は急落した。取引終了後に発表したソニーグループの2025年3月期上期(4~9月)決算は、営業利益が前年同期比42.3%増で、市場予想を大きく上回った。
【日経平均】39500.37円↑(+118.96円)
【グロース250】626.88↑(+4.14)
【NYダウ】43729.34ドル→(-0.59ドル、7日)
【ナスダック】19269.459↑↑(+285.993、7日)
■日経平均株価チャート/日足・6カ月
【2】今日の注目株!
イベント通過で選別物色へ、決算を精査
7~9月期決算の発表が佳境に入ってきた。米大統領選など重要イベントを通過し、ここからは決算を受けた選別物色が強まりそうで、今日も決算内容をしっかり精査していこう。
古河電気工業は通期の業績および配当予想を大幅に上方修正。自動車部品が大きく改善したほか、生成AI普及による期待が大きいデータセンター関連製品など幅広く好調だった。同業フジクラの上期決算は8月に上方修正した計画を上振れ、通期の業績および配当予想は2度目の上方修正。株価は目先の材料出尽くしで下落したが、下期計画はなお保守的でさらなる上方修正が期待される。中長期的には両社ともに、米国全国民への高速インターネット普及を目指したBEADプログラムによる恩恵が期待される。同プログラムでは米国製の光ファイバーの使用が義務付けられており、特に米国内で一貫生産ができる古河電工にとっては来期以降の業績拡大につながりそうだ
味の素の株価は好決算により上場来高値を更新。調味料や食品メーカーとしての認識が強い同社だが、実はアミノ酸の独自製法を強みに事業領域はバイオ医薬品などのヘルスケアから半導体パッケージ用基板に使われる電子材料まで幅広い。今回はこの食品以外のサイエンス事業の好調が確認された。来期以降の成長加速に対する自信が示されたほか、自社株買いや1→2株の分割も発表。また、株式分割後も100株からの株主優待を実施するという。
日本製鉄は在庫評価損で通期計画を一部下方修正したが、値上げなどによって実力ベースの事業利益は据え置いた。来期は鹿島高炉の休止によるコスト削減や高付加価値品の拡大、インドでの成長を背景に通期の実力利益9000億円以上を目指すという(今期は7800億円)。同業他社に比べて底堅い業績や来期に期待できる相対的に高い業績見通しは依然として魅力だろう。
■古河電気工業株価チャート/日足・6カ月
【3】金曜連載「ザイアナリスト小林大純『ホットなテーマ!』」
日本株にも「トランプ2.0」の波、防衛・銀行など
5日投開票の米大統領選で、共和党のトランプ前大統領が返り咲くことが決まった。12月17日の選挙人による投票、来年1月6日の上下両院合同会議での正式決定を経て、1月20日に就任を迎える。
6日の東京市場の取引時間に開票速報が続々と伝わると、トランプ氏の政策に沿った「トランプ・トレード」が活発化。特に値上がりが目立ったのは、三菱重工業などの防衛関連株や三菱UFJフィナンシャル・グループなどの銀行株だった。トランプ氏はかねて日本などの同盟国に対し、防衛費などの負担を増やすよう求めている。日本でも10月に発足した石破茂内閣が「防衛力の抜本的強化」を掲げており、政策関連銘柄としては連想しやすいだろう。三菱重工株は5日の決算発表直後こそ売られる場面があったが、早々に切り返して高値圏で推移している。また、下表に挙げた川崎重工業やIHIに加え、日本製鋼所なども注目度が高い。
銀行株は金融規制の緩和が期待される。また、積極財政で資金需要が増える、長期金利の上昇で利ざやが拡大するといった見方もできそうだ。その金利上昇圧力は日本にも波及しており、加えてメガバンクが米社への出資・提携などを交えて米国でのビジネス強化を図っている。三菱UFJや三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループといった邦銀株も次期米政権の影響は小さくないだろう。
同様に規制緩和への期待が強い暗号資産(仮想通貨)をめぐってはマネックスグループなど、石油・ガス開発をめぐってはコマツや三井物産などに注目。また、トランプ氏を支援したイーロン・マスク氏が政権に参加するとみられ、マスク氏率いるEV(電気自動車)の米テスラは株価が急伸している。電池を供給するパナソニック ホールディングスにも注目できそうだ。
小林大純
ダイヤモンド・ザイ アナリスト
早稲田大学法学部卒、早稲田大学大学院ファイナンス研究科(現経営管理研究科)修了(MBA)。金融情報サービス会社などを経て現職。日本株アナリストとして各種メディアで活動中。
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