ウォーレン・バフェットの右腕だが、バフェットほどは知られていないチャーリー・マンガーの著書を紹介
2023年11月に亡くなったチャーリー・マンガーは、ウォーレン・バフェットの右腕として、長年、存在感を示してきた人物です。
[参考記事]
●バフェットの右腕、チャーリー・マンガー死去。私に最も影響を与えたマンガーの2つの名言とは? 危機は投資のチャンスだ!
しかし、チャーリー・マンガーと彼の投資哲学は、日本では比較的知られていないように思えます。ウォーレン・バフェットの名前は日本の投資家の間に知れ渡っているのにです。
そこで、今回はチャーリー・マンガーの著書『プア・チャーリーズ・アルマナック』を紹介したいと思います。
重要なのは心理的バイアスの影響を理解し、それにどう対処するかということ
この書籍は、投資家が自己の投資方法と人生観を見直すための貴重な指南書です。
本書はチャーリー・マンガー自身の投資哲学と、彼が長年にわたって培ってきた知見をまとめたものであり、多くの投資家にとって重要な教訓が含まれています。この書籍にはマンガーの考え方が凝縮されています。読む価値がとてもある本だと思います。
本書の中で特に強調されているのは、心理的バイアスの影響を理解し、それにどう対処するかということです。
投資を行う上で、私たちはしばしば感情に流されがちですが、その感情が冷静な判断を曇らせることがあります。マンガーは、このような心理的ワナを避け、客観的な判断を保つことの重要性を説いています。
「エンダウメント効果(保有効果)」が冷静に判断する目を曇らせる
また、本書では「エンダウメント効果(保有効果)」についても議論されています。
これは一般に、ある商品などを所有しているとその商品の価値や魅力が上がり、所有していないと価値や魅力が下がることを指す、行動経済学上の言葉ですが、マンガーは、持ち株など自らが所有する資産についても、人は過剰な価値を見出す傾向があること、そして、それが投資判断を歪める可能性があることを指摘しています。
投資家としては、このようなバイアスから自由になり、真の価値を見極める力を養うことが求められるのです。
問題に対して、通常とは異なるアプローチを試みることで、新たな解決策が見えてくる「逆転の原則」
「逆転の原則」も、マンガーの教えの中で非常に重要な位置を占めています。これは、問題に対して通常とは異なるアプローチを試みることで、新たな解決策や機会が見えてくるというものです。
この原則を投資に応用することで、市場の変動に左右されず、堅実な成果を上げることが可能となります。
チャーリー・マンガーが述べている主要なポイントをまとめると…
上記以外のことも含め、マンガーが述べている主要なポイントをまとめると以下の通りです。
●サークル・オブ・コンピテンス:自分が深い専門知識を持つ領域に焦点を当て、自らの知識の範囲外に冒険することは避けます。
●生涯学習:自分の守備範囲の領域については、常に新しい知見を求め、生涯にわたって積極的に学習を続けます。
●反転思考:問題に対して反対の視点からアプローチして、より深い洞察を得ます。
●心理的バイアス:意思決定に影響を与える認知バイアスを認識し、積極的に対抗します。
●二次効果:ある判断がもたらす、長期的な効果とその波及効果を考慮します。
●批判的思考:常に仮定を疑い、証拠を慎重に評価し、知的謙虚さを保ちます。
●資本の適切な配分:投資対象は慎重に検討します。それは金銭的、時間的、また、エネルギー面から判断します。
●誠実さと倫理:人生のすべての面で高い倫理基準を維持します。
現在の金融市場でも、『プア・チャーリーズ・アルマナック』で述べらているチャーリー・マンガーの教えは依然として有効
チャーリー・マンガーの『プア・チャーリーズ・アルマナック』は毎年読み返す価値がある書籍だと思います。私自身も毎年読み返しています。
私が自身のメルマガで配信している推奨ポートフォリオは、2024年にS&P500の2倍に達する約60%のパフォーマンスを上げることができました。ここ2年でも、かなり安定して好パフォーマンスを残すことができています(以下のS&P500連動ETFと比較したパフォーマンスグラフ参照)。『プア・チャーリーズ・アルマナック』はこのような好パフォーマンスを上げられた一助になっていたと思います。
[参考記事]
●推奨ポートフォリオの2024年年間パフォーマンスは約60%上昇! S&P500の約2倍のリターンを上げたポール・サイが予想する2025年の経済環境、株式市場は?
●「推奨ポートフォリオが2024年に約60%上昇」 ポール・サイの投資術は、AIで市場が悲観的になった時に買う! 市場が過熱している時は売るか待つ
『プア・チャーリーズ・アルマナック』を毎年読み返す価値があるとする理由は明確です。
市場は常に変化しており、新たな状況に対応するためには、定期的に自己の知識を更新し、戦略を見直す必要があります。この本を通じて、マンガー自身がどのようにこういったことに挑戦してきたかが学べるからです。
現在の金融市場でも、マンガーの教えは依然として有効です。
特に不確実性が高い現在の経済環境では、彼の投資法則が投資家にとって一種の指針となり得ます。安定したリターンを求める上で、彼の哲学は大きな助けとなるでしょう。
最終的に『プア・チャーリーズ・アルマナック』から学ぶことは多いと思います。
チャーリー・マンガーの深い洞察は、投資の世界だけでなく、私たちの日常生活においても有益な指針を提供しています。
真の価値を見極め、心理的バイアスを克服するための彼の方法は、人がどのような状況に置かれたとしてもその価値を発揮することでしょう。
●ポール・サイ ストラテジスト。外資系資産運用会社・フィデリティ投信にて株式アナリストとして活躍。上海オフィスの立ち上げ、中国株調査部長、日本株調査部長として株式調査を12年以上携わった後、2017年に独立。40代でFIREし、現在は、不動産投資と米国株式を中心に運用。UCLA機械工学部卒、カーネギーメロン大学MBA修了。台湾系アメリカ人、中国語、英語、日本語堪能。米国株などでの資産運用を助言するメルマガを配信中。
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