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トランプ氏がグリーンランド領有、パナマ運河管理、カナダの米国編入を主張する背景は? 文明1.0、文明2.0、文明3.0という人類文明の3段階から考察する

2025年1月8日公開
ポール・サイ
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 トランプ次期米大統領は、グリーンランド領有、パナマ運河管理、さらにはカナダをアメリカの州にするといった政策提案を行っており、これが物議を醸しています。

 トランプ氏が今、このような主張を行う背景には何があるのでしょうか? それはどのような意味を持っているのでしょうか?

 そのことを考えるために、壮大な話になりますが、長い長い人類の文明が3つの段階に分けられるということからまず説明したいと思います。それを理解することがトランプ氏支持者の考えや、それを受けたトランプ氏の主張に最終的にはつながってくるのです。

人類の文明は3段階に分けられる。文明1.0は狩猟採集社会

 人類の文明は1.0、2.0、そして、3.0の3段階に分けられると考えられます。

 文明1.0は狩猟採集社会で、主な生産手段は自然から直接的に食料を採取することでした。

 この時代、人類は少人数の集団が限られた資源の中で生活していました。

 しかし、7万年前に起こった気候変動を契機にアフリカを出発した人類は、新たな環境に適応し、生存圏を地球全体に広げることで、創造性と適応力を発揮しました。

文明2.0は農業文明の時代。人類は支配地域を争った

 次の文明2.0は農業文明の時代です。

 農業と野生動物の家畜化が人類の生活の中心となり、安定した食料供給が可能になりました。この進歩は人々の定住を促し、都市、国家、さらには帝国の形成をもたらしました。

 その一方、農業文明は自然資源に依存しており、その資源が限界に達すると社会の停滞や衰退が避けられないという特徴がありました。

 この時代、人類は支配地域を争いつつ、より高度な社会組織や技術革新を追求しました。

文明3.0は科学技術文明。その中で市場経済が一段と発展し、人類の価値観は物理的な領土征服から、市場を通じて影響力を及ぼす競争へ移行

 次の文明3.0は科学技術文明の時代であり、これは産業革命を契機に生まれたものです。

 この段階になると、エネルギーの利用と技術革新が飛躍的に進み、人々の生活と生産活動が根本的に変化しました。

 文明3.0の時代が進むにつれ、特に市場経済が一段と発展し、人類の価値観は物理的な領土の征服から、市場を通じて影響力を及ぼす競争へと移行していきました。

 その結果、20世紀以降の国家間の争いは、領土支配から、次第に経済的支配や市場の拡大を目的とするものへと変わっていきました。

[参考記事]
中台戦争は果たして起こるのか? 領土争いの戦争はもう古い? 過度に戦争を意識して投資する必要なし
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 この変化により、第二次世界大戦以降のアメリカは、直接的な領土征服や政府掌握ではなく、経済的影響力を通じて世界に関与する戦略を採用していくようになっていきました。

 この新たなアプローチは、人類の競争と協力の形を変化させました。そして、資本主義の市場原理が国際社会における主要な駆動力となっていきます。

 こうして、文明の進化は物理的支配から、経済的影響力を重視する方向へと進んでいったのです。

グリーンランド領有などを主張するトランプ氏は文明1.0的な「直接支配」の思考へ逆行している

 トランプ氏のグリーンランド領有やパナマ運河の管理、さらにはカナダをアメリカの州にするといった政策提案は、文明2.0的な領土拡大志向に加え、文明1.0的な「直接支配」の思考へ逆行していると考えられます。

グリーンランド 氷山とグリーンランド Jensbn - December 2005 CC 表示 2.5 https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Greenland_scenery.jpgによる

 文明1.0では、資源を支配することで生存を確保する単純な論理が支配的でした。トランプ氏の政策は、現代的な市場や協調を通じた影響力の拡大ではなく、物理的な領土支配を追求する点で、こうした原始的なアプローチを彷彿とさせるものです。

 このような「逆行」が支持を集める背景には、現代市場経済の限界があります。

文明3.0において富がトランプ支持層の労働者階級にあまり再分配されず、所得格差が拡大。その不満が「領土支配」などの単純な政策への支持を高めている

 本来、文明3.0において、市場は資源の効率的配分を担うべきですが、現実には富が労働者階級にあまり再分配されず、所得格差が拡大しています。

 この経済的不平等は、トランプ氏の支持層である労働者階級や一般的なアメリカ人の間に不満を生み、「領土支配」や「国益重視」といった単純で理解しやすい政策への支持を促しているのです。

 トランプ支持者にとって、領土の獲得や直接支配は「豊かさ」を取り戻すための明確な手段に映ります。

 グリーンランドやパナマ運河といった象徴的な土地を「取り戻す」ことで、アメリカが再び力を取り戻すという物語は、現代の複雑な市場メカニズムよりも理解しやすく、感情的にも訴求力があります。

 しかし、こうした文明1.0的な考え方は、現代の民主主義体制や国際秩序において現実的なことではありません。

 たとえば、グリーンランドやカナダにはすでに自治権を持つ住民が存在しています。

現代社会では、領土拡張はかえって占領国が国際的信用を損なうリスクが高い

 初期アメリカ(世界大戦以前)の文明1.0的な領土拡張では、奪取した土地の住民を非市民として扱ったり、排除や虐殺によって支配を成立させました。

 アメリカの歴史においては、ネイティブ・アメリカン(アメリカ先住民)がそのような扱いを受けましたが、現代のグリーンランドでは同様の手法は不可能です。国際法や倫理的観点からも、住民を無視した領土拡大は容認されません。

 さらに、民主主義国家が他国や自治地域の領土を占領し、住民の合意なく支配することは極めて困難です。

 現代では住民が権利を持ち、国際社会がその正当性を支持するため、領土拡張は、かえって占領国が国際的信用を損なうリスクが高いことなのです。

 パナマ運河に対する政策も同様で、主権国家であるパナマを無視した取り組みは、長期的にはアメリカの利益を損ねる可能性があります。

トランプ氏の政策は歴史的な逆行。強い国が富を集める構図に。投資家的視点からは、アメリカへの投資がリスク回避とリターン獲得のために重要

 先ほども述べたように、こういった政策の背景には、現代市場経済が中間層や労働者階級に利益をもたらしていない現実があります。市場が効率的に機能していれば、富の再分配を通じて社会的不平等は緩和され、文明3.0の競争環境を維持できたはずです。

 しかし、その失敗が、文明1.0的な「物理的支配」への回帰を促しているのです。

 以上をまとめると、トランプ氏の政策は歴史的な逆行を示していると言えます。

 こうした領土拡大の試みは、短期的には支持を集めるかもしれませんが、アメリカの国際的地位や市場の安定に悪影響を与えるだけでなく、世界全体の不安定化を招く可能性があります。

 文明1.0的な、取引的な外交や土地侵略が増えることで、弱い国々が「子分」となる枠組みが進行するかもしれません。

 このようなフレームワークでは、強い国が富を集める構図が生まれます。

 そうなると、投資家的視点からは、アメリカへの投資がリスク回避とリターン獲得のために重要になると言えるでしょう。

 

●ポール・サイ  ストラテジスト。外資系資産運用会社・フィデリティ投信にて株式アナリストとして活躍。上海オフィスの立ち上げ、中国株調査部長、日本株調査部長として株式調査を12年以上携わった後、2017年に独立。40代でFIREし、現在は、不動産投資と米国株式を中心に運用。UCLA機械工学部卒、カーネギーメロン大学MBA修了。台湾系アメリカ人、中国語、英語、日本語堪能。米国株などでの資産運用を助言するメルマガを配信中。

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