株式市場の方向性を決める最大の要因は金利だ!
株式市場の方向性を決める最大の要因は景気や業績ではなく金利である―。
私は日頃から皆さんにそう言っている。株式市場を理解する上で必須の知識であるのがマーケットサイクルだ。金融相場、業績相場、逆金融相場、逆業績相場の4つの局面がグルグル回転しながら株式市場は動いていくが、各相場の節目には必ず中央銀行の金融政策が絡んでいる。中央銀行といってもそれは米国の米連邦準備理事会(FRB)のことを差す。FRBの金融政策が米国のみならず世界の株式市場の方向を決める点についてはすでにご承知だと思うが、日本の株式市場についても日銀の金融政策だけを見ていてもダメであり、FRBの動向をウオッチする必要がある。その金融政策決定会合である米連邦公開市場委員会(FOMC)は世界一重要な会議であり、約2カ月に一度、年に8回開催される。
このところ世界的に金利が上昇しているのをご存知だろうか? まず知っておかねばならないのが金利上昇には「良い金利上昇」と「悪い金利上昇」があるという点である。
「良い金利上昇」では株価は上がり、「悪い金利上昇」では株価は下がる
良い金利上昇とは、これから景気回復が見込め設備投資などの経済活動が活発化し、資金需要が増える枠組みの中で金利上昇するケースだ。経済が好転するということは、企業業績の拡大につながりリスク資産としての株式の魅力が高まり株価は上昇し、一方で安全資産としての債券は相対的な魅力が低下して債券が売られることで債券価格が下落し、その結果利回りが上昇することになる。通常、金利の動きと株式市場の値動きには逆相関関係(トレードオフ)にある。すなわち、金利が上がれば株価は下がり、金利が下がれば株価は上がるという構図だ。ところが「良い金利上昇」の場合は、株価も上がるのがミソである。
悪い金利上昇はその逆だ。財政出動による国債の大量発行や景気の過熱でインフレが起こり、それを抑制するために中央銀行が利上げして金融引き締めをすると金利が上昇する。安全資産としての債券が売られて金利が上昇し、株価も下落するという「売り」が同じ方向で連動して発生し金融市場が打撃を受けることになる。
ただし、良い金利上昇か悪い金利上昇かを判断するのが難しい場合もある。経済成長に対する期待と財政悪化懸念が同時に進行する場合だ。トレードオフの関係が起きたらどう判断するのか? こういう時は、株価が堅調に推移すれば市場参加者は良い金利上昇とみなし、株価の調整が長引けば悪い金利上昇とみなすのが一般的だ。
FRBが利下げにも関わらず、昨年末に米長期金利は上昇した理由とは?
金利と株価の関係には深いものがある。例えば、昨年9月のFOMCを思い出して欲しい。FRBのパウエル議長が4年半ぶりの利下げを決定。しかも、通常の2倍の0.5%の利下げだった。議長は「今回の大幅利下げは、景気後退の可能性を小さくする予防的措置だ」とコメントしたが、株式市場に渦巻いていた景気不安を払拭し、米国市場は大きく反発。NYダウとSP500はともに過去最高値を更新した。株式市場は「良い利下げ」と受け取り、FRBは11月に続き12月も0.25%ずつ利下げを行って2024年は合計1.0%もの利下げを実施。政策金利は5.25%~5.50%から4.25%~4.50%まで大きく低下した。ここまでは常識通りの展開だったが、実は債券市場では長期金利が上昇するという事態が起こった。米国の長期金利は9月16日の3.61%を底にして2025年1月6日には4.64%まで1.0%上がったのだ。何とも不可解な動きだ。
この理由を説明できれば株式投資の上級者だ。皆さんは答えられるだろうか? その理由は11月の大統領選で勝利したトランプ氏の公約である関税政策が実行されれば、米国における物価は上昇し、インフレが起こる可能性を先読みして織り込んでいったからだ。その結果、債券市場では10年物国債が売られて価格は下落し金利が上昇したわけである。債券市場に比べて株式市場は楽観的だったが、今年4月にトランプ政権が突然、とんでもない相互関税率を打ち出したため「トランプ関税ショック」が起こり、株式市場がクラッシュしたのはご存知の通りである。
日米欧の超長期債の金利上昇加速。背景にトランプ関税による混乱を懸念
さて、現在の世界の債券市場。日米欧の債券市場において償還までの期間が長い超長期国債の金利上昇が加速している。5月21日の米債券市場で30年物の国債利回りが前日比0.13%上昇し、5.10%と1年半ぶりの高さを付けた。英国の30年債利回りも1カ月半ぶりに5.5%台まで上昇し、ドイツの30年債利回りも3.1%台後半に上がった。日本では新発30年物と40年物の国債利回りが揃って過去最高を更新してドイツ並みの水準となっている。超長期債は流動性がきわめて低く、市場参加者の不安心理が表れやすい性質がある。
この世界同時進行の金利上昇の背景には何があるのだろうか? それは米国発のトランプ関税政策が米国のインフレ悪化を招き、しいては世界的なサプライ供給網の混乱を招くとの懸念が広がっているためである。米国でインフレ再燃懸念が起きれば、当然FRBは追加利下げするのが難しくなる。それが金利上昇圧力にも繋がる。さらに言えば、財政不安による債券売りも肌身で感じられるようになっている。
米国の減税政策が奏功すれば悪い金利上昇が良い上昇に転じるシナリオも
トランプ政権では関税政策の引き換えに大型減税の恒久化を盛り込んだ財政法案の整備に着手している。与党である共和党内でも推進派と財政規律を重視する反対派でせめぎ合いが起こり、調整に難航しているようだ。減税が実現すれば、今後10年間で計3兆〜5兆ドル規模の大幅な財政悪化を招くとの試算もある。日本でも消費税減税による財政拡張論が与野党で出ている。5月20日の日本の20年債入札は不調に終わり、投資家の国債購入意欲の減退ぶりを反映した。
ただし、これは足元の話であり、今後どうなるかが注目される。減税を行って財政悪化を補うだけの経済活性化が起きれば、結果的には悪い金利上昇が「良い金利上昇」に変化するというシナリオも考えておく必要がある。
「勝者のポートフォリオ」は累計+85.0%を達成!4月から大幅上積み
太田忠投資評価研究所とダイヤモンド・フィナンシャル・リサーチ(DFR)がコラボレーションして投資助言を行っている「勝者のポートフォリオ」。先週も月間最高値を更新、5月23日午前終値での累計パフォーマンスは+85.0%に達し、4月末の+76.9%から一段の上積みとなった。瞬間風速での最高値である3月21日の+86.7%にかなり接近し、近日中にも突破しそうな勢いである。チャートを見て欲しい。「勝者のポートフォリオ」の上昇角度を見ていただきたい。マーケットを圧倒し、「上へ、上へ」行こうとしている力強い意思を感じる。

毎月恒例の株式投資Webセミナーを次回は6月4日水曜20時より開催する。テーマは『あなたの投資力を問う~投資家としての熟達度を自己点検しよう~』。5月開催のセミナー以降、株式市場にあまり変化がないので6月は少し趣向を変えた内容で行う。私から皆さんに次々と問題を出すのでチャット形式で答えていただきたい。「あなたは本当に投資家として十分なスキルを持っているか?」「何が分かっていて、何が分かっていないか?」。それを自己点検していただくことが主眼だ。もちろん投資戦略や個別銘柄の話も行う。投資のヒントが満載である。10日間の無料お試し期間でも参加可能。毎回300名を超える参加者で盛り上がるセミナーだ。ぜひ奮って、お申し込み&ご参加願いたい。
●太田 忠 DFR投資助言者。ジャーディン・フレミング証券(現JPモルガン証券)などでおもに中小型株のアナリストとして活躍。国内外で6年間にわたり、ランキングトップを維持した。現在は、中小型株だけではなく、市場全体から割安株を見つけ出す、バリュー株ハンターとしてもDFRへのレポート提供による「勝者のポートフォリオ」メルマガ配信などで活躍。
国内外で6年連続アナリストランキング1位を獲得した、
トップアナリスト&ファンドマネジャーが
個人投資家だからこそ勝てる
「勝者のポートフォリオ」を提示する、
資産運用メルマガ&サロンが登場!
老後を不安なく過ごすための資産を自助努力で作らざるを得ない時代には資産運用の知識は不可欠。「勝者のポートフォリオ」は、投資の考え方とポートフォリオの提案を行なうメルマガ&会員サービス。週1回程度のメルマガ配信+ポートフォリオ提案とQ&Aも。登録後10日間は無料!