12月8日にECBが量的緩和を縮小し、12月14日にはFRBが1年ぶりの利上げを決定しました。12月19~20日には日銀政策決定会合があり、日米欧の年内最後の金融政策が出揃います。米大統領選でのトランプ氏勝利からドル高・株高の強い相場が続いてきましたが、ECBとFRBそして日銀の金融政策を受けてこの流れに変化は起きるでしょうか。プロも愛読する刺激的な金融メルマガ「闇株新聞プレミアム」が解説します。
10年運用してもお金が増えない経済
円安は「総括的な検証」から始まった
ECBは長短金利差を拡大させて(域内金融機関の収益拡大を通じて)EU経済の底上げを目指し、FRBは新大統領の経済政策に対する期待からか長短金利が上昇してしまったため政策金利を引き上げブレーキをかけました。それぞれに妥当な金融政策の変更あるいはイールドカーブ・コントロールと言えます。
そこで日銀の政策決定会合ですが、すでに9月21日の「総括的な検証」で「短期金利をマイナス0.1%、長期金利の代表である10年国債利回りをゼロ近辺に誘導する」と当面の方針を発表しています。
日銀は昔の「公定歩合」の名残で政策金利(短期金利)を1つしか発表しませんが、正確には上限0.1%、基準ゼロ、下限マイナス0.1%であるはずです。とすると、日銀は短期金利も長期金利もゼロという、世界金融史でも珍しい“のっぺらぼうのイールドカーブ”を目指しているということです。
これはつまり日本は極端な信用リスクを取らない限り10年間資金を運用しても(あるいは新規投資して10年間をかけても)利益が全く出ない経済状態であり、「包括的な検証」ではその状態を何が何でも維持すると内外に示したことになります。
このような国に海外から投資が集まるはずがありません。逆に、日本の投資資金はどんどん海外に流出していってしまいます。最近の円安は9月21日に発表した「総括的な検証」から始まっていたのです。
世界には過剰資金が溢れている
リスクオンの流れは当面続く
そもそも金融緩和・量的緩和には「導入直後の心理的効果」はあるものの、それ自体には実体経済を成長させる効果はありません。
しかし、中央銀行から過剰に供給される資金は市場に(正確には銀行システム内に)積み上がります。そして、何かのきっかけで市場心理が変化したときに、その過剰な資金は実体経済にではなく株式・不動産・商品などへの投資(投機)として向かいます。
世界的な傾向として、いつまでたっても実体経済が成長しないため、金融緩和や量的緩和がだらだらと続いてきました。過剰な資金が積み上がっていたところにトランプ大統領誕生のサプライズがあり、過剰な資金が一気にドルと世界の株式市場に流れ込んだのです。
世界経済はリーマンショック以降の早い段階で金融緩和・量的緩和の効果を過大評価していたため、今も世界的な過剰設備・過剰生産・過剰資源の状態にあります。また、2度の中国ショックや英国のEU離脱騒動などもあり、少なくとも1年は金融緩和の終了ないし量的緩和の縮小が遅れた可能性があります。
ECBもFRBもギリギリのタイミングで「正しい金融政策への変更」を行い、市場に的確なメッセージを発信しましたが、たとえFRBが本格的に利上げに転じたとしても4.5兆ドルも積み上がった資産をすぐに売却し余剰資金を引き揚げるわけではありません。ECBの量的緩和は縮小したものの未だ継続中、日銀も簡単に量的緩和を縮小するわけにはいきません。
つまり、再び何かの「きっかけ」で世界の市場心理が急激に悪化しない限り、株式市場などへの投資(投機)が止まってしまうことは考えにくいでしょう。
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