岐阜県美濃加茂市の雨水浄化設備導入を巡り、30万円を受け取ったとして受託収賄罪に問われた市長・藤井浩人被告の控訴審判決が11月28日・名古屋高裁でありました。名古屋地裁での一審判決は無罪でしたが、名古屋高裁の村山浩昭裁判長はこれを破棄し、懲役1年6か月、執行猶予3年、追徴金30万円の逆転有罪判決を言い渡しました。さて、この判決により「東芝の不正会計問題が刑事事件化する可能性が消えた」と、刺激的な金融メルマガ『闇株新聞プレミアム』が報じています。とある地方自治体首長の贈賄事件と、日本を代表する大企業の不正会計がどう関係しているのか!? 今回は法治国家・日本における「司法の闇」の入り口をご案内しましょう。
証拠は贈賄側ただ一人の証言のみ、
典型的な無理筋で一審は無罪判決
なぜ本連載が美濃加茂市の贈賄事件の判決を取り上げるのか、違和感を感じる方もおられるでしょう。る『闇株新聞プレミアム』では以前から、この判決が東芝の刑事告発の行方に大きな影響があり、藤井被告に逆転有罪の可能性もあるとはっきりと指摘していました。
贈賄事件は、プールに溜まった雨水を浄化し生活用水などに使う設備の導入にあたり、美濃加茂市の藤井浩人市長が、元設備会社社長から現金30万円を受け取ったというもの。といっても物証は何もなく、証拠は「市長に現金を渡した」とする元設備会社社長の証言のみ。典型的な無理筋で名古屋地裁では当然のように無罪判決が出ていました。
それが新たな物証もないのに二審の名古屋高裁では正反対の有罪判決が出たのです。つまりはたった一人の贈賄側証言をどう受け取るかという主観の問題でしかないわけですが、コトの本質はそんなに単純なものではありません。
無関係に見える東芝不正会計と
美濃加茂市の事件の繋がりとは
さて、まったく無関係に思われる東芝の不正会計については、本連載でも何度か取り上げていました。
[参考記事]
●巨額粉飾事件? 東芝が新たな利益水増しを発表。わずか58億円の自主的発表に違和感あり(2016年3月24日)
●東芝に原発事業にも巨額隠し損失が発覚! それでも「名門企業だから刑事事件にならない」のか?(2015年12月4日)
●ライブドアとどこが違う? 東芝の「不適切会計」 粉飾決算がなぜ「不適切会計」になったのか?(2015年9月22日)
東芝の不正会計を刑事事件化するかどうかについては、「完全にクロ」とする証券取引等監視委員会(以下、監視委員会)と、政治的配慮からか「立件は難しい」とする検察庁(担当は東京地検特捜部)の意見が真正面から対立する珍しい構造となっています。
もともと検察庁は監視委員会に佐渡賢一委員長をはじめ多数のOBや幹部を送り込んでおり、このように個別案件を巡って意見が対立することはありません。しかし、この12月に退任予定の佐渡委員長は、何とか任期中に東芝の件を刑事事件化しようとしており、検察庁を完全に敵に回しているのです。
佐渡委員長の後任には長谷川充弘・広島高検検事長が内定しています。新しい委員長は検察を敵に回すはずがありませんから、東芝の不正会計問題はタイムリミットから見ても刑事事件化されることはないでしょう。検察庁の思惑通りです。
さて、美濃加茂市の収賄事件と東芝の不正会計問題を結ぶ線ですが、そもそも藤井市長を無理筋で逮捕・起訴した名古屋地検の当時のトップこそ、次の公正取引委員会委員長に内定している長谷川充弘・広島高検検事長(当時は名古屋地検検事正)その人なのです。
そこまでやるか!? 逆転有罪判決
怖すぎる司法の闇ルール
もし28日の二審が無罪判決のままで、弁護側から無理筋の捜査方法に対して遺憾の意でも示されたなら、次期監視委員会委員長がすんなり誕生しない可能性もあったでしょう。それならそれで次の委員長候補を立てればいいだけですが、検察庁としては監視委員会に反撃の口実を与えてしまうことになります。
逆転の有罪判決を下した村山浩昭裁判長はさすがに上級裁判所の裁判長だけあって、万が一以下のあり得ない判決でも、きちんと検察庁に「配慮」を示しました。当然、弁護側が上告するでしょうが、最高裁で再逆転となる可能性は文字通りゼロであり、藤井市長の有罪判決が確定します。執行猶予でも市長は失職となり公民権も停止されます。
逆転有罪の可能性に言及した本紙も、内心は「いくら何でもそこまではやらないだろう」と考えていたのですが、改めて「ここまでやるか!?」と言いようのない恐怖心にとらわれています。判決当日のテレビはASKA容疑者の再逮捕で大騒ぎでしたが、これすらもこのあり得ない判決から国民の目を逸らす検察側の「煙幕」ではないかと思えたほどです。
東芝の不正会計問題については、先月11日に3回目の不正経理(5億2000万円)が公表されました。まだまだ全貌が見えず「現在進行形の事件」のようですが、あと何回不正が出てきても金額が追加されても、刑事事件化しません。司法の闇の掟でそう決まっているからです。
『闇株新聞プレミアム』ではこの件に関して読者の皆様から多くの質問やご意見が寄せられています。それにお答えする形で、過去の様々な贈収賄疑惑や不正会計、相場操縦や金商法違反なども俎上に載せた解説をしています。この問題にはさらに奥深くまで闇が広がっており、引き続き取り上げていく予定です。よろしければ、刺激的な金融メルマガ『闇株新聞プレミアム』も併せてお読みください。
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