第4四半期決算シーズンに入った米国株式市場だが、
値動きは市場によってまちまち
先週の米国株式市場のパフォーマンスは、ナスダック総合指数が+0.94%続伸する反面、ダウ工業株価平均指数が-0.4%、S&P500指数が-0.1%と、まちまちな展開でした。
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米国は、先週から2016年第4四半期決算発表シーズンに入っています。すでにバンク・オブ・アメリカ(ティッカーシンボル:BAC)、JPモルガン・チェース(ティッカーシンボル:JPM)、ウエルズファーゴ(ティッカーシンボル:WFC)の三行が決算を発表しました。
【バンク・オブ・アメリカ】
預金残高や融資残高が順調に推移
バンク・オブ・アメリカの第4四半期の決算は、EPSが予想38セントに対し40セント、売上高が予想210.6億ドルに対し199.9億ドルでした。また、純金利収入は前年比+6%の103億ドル、純金利イールドは横ばいの2.23%でした。
大統領選挙の結果が判明して以降、米国の長期金利が上昇しており、市場関係者の間では貸付けポートフォリオの収益性の向上を期待する声が大きいです。
しかし、今のところ利ザヤの拡大は殆ど感じられません。
その理由は、有利な金利が適用できるのは新規の貸出だけであり、過去に実行した融資はまだ低いレートのままだからです。つまり、収益性の改善が体感できるのは、あと二期くらい先の話になると思います。
一方、足下の預金残高の成長は健全です。
融資残高も良い感じで伸びています。
さらに、貸付先の信用の状況も健全です。
これらのことから、バンク・オブ・アメリカの業績は、2017年を通じて安定的に拡大してゆくと考えて良さそうです。
【JPモルガン・チェース】
法人向け、消費者向けの両方が好調
JPモルガン・チェースの第4四半期決算は、EPSが予想1.42ドルに対し1.71ドル、売上高が予想234.8億ドルに対し234億ドルでした。
JPモルガン・チェースは、法人向け、ならびに消費者向けビジネスの両方で、快調に飛ばしています。
とりわけ同行の投資銀行部門は、フィー収入で世界No.1であるばかりでなく、他行を大きく引き離し始めています。債券部は前期に続き今期も好調で、売上高は+31%、一方、株式部は+8%でした。
【ウエルズファーゴ】
不正口座開設問題からの信用回復を目指す
ウエルズファーゴの第4四半期決算は、EPSが予想$1.00に対し96セント、売上高が予想223億ドルに対し216億ドルでした。
ウエルズファーゴは、去年、一部の行員がノルマ達成のため、顧客が頼んでもいない口座を次々に開設した事件が明るみに出ました。
これを是正するため、同行は先日、新しいパフォーマンス評価体系を発表しました。
そこでは先ず数値による営業目標を一切廃止しました。行員の成績評価をするにあたり、顧客満足度を最優先することにしたのです。具体的には、顧客サービス、得意顧客との関係強化、リスク・マネージメントなどを数値化し、ボーナスを決めることにしました。
強引な営業が減った分、同行の非金利収入は落ち込みを見せています。
しかし、ウエルズファーゴが今やらないといけないことは、目先の利益を追求することではありません。むしろ同行の信用を回復し、ブランド価値を守ることだと思います。
その意味では、今回、新しい人事評価基準が明示されたことは、一歩前進と言えるでしょう。
それから、ウエルズファーゴは行員の士気を鼓舞するため、賃金を+12%引き上げました。
もうひとつ、良い兆候としては、同行の場合、純金利マージンに既に底打ち感が出ている点です。
ウエルズファーゴが、バンク・オブ・アメリカやJPモルガン・チェースよりも一足先に貸付け利ザヤが拡大に転じた理由は、同社の得意分野が、より消費者に傾斜しているためだと思います。
市場関係者の胸中に渦巻く
新大統領に対する期待と不安
さて今週は、金曜日(1月20日)に大統領就任式を控えています。経済指標で見る限り、米国の消費者や事業主はドナルド・トランプに期待を寄せています。
一例として、1月13日に発表された12月のミシガン大学消費者信頼感指数は、98.2という高い水準でした。
一方、1月10日に発表された12月の小規模事業楽観指数も、105.8と急伸しています。
この反面、1月11日にトランプが行った記者会見では、大統領らしくないギスギスした場面があり、投資家を不安にしました。
1月20日の大統領就任式直後に、
トランプの口から何が出るか要注目
市場関係者の間では、大統領就任式の直後に、トランプが一連の大統領令を発令すると見られています。
大統領令とは、大統領が行政府の長の立場で連邦政府の役職員に対して発する業務命令です。これまでに1万3千もの大統領令が発令されてきました。大統領令は法律ではありませんが、時として法律と同じくらい効果を持ちます。
大統領令に加えて、トランプがやるかもしれないことのひとつは、北米自由貿易協定(NAFTA)から脱退の通告です。
同協定には、それを終わらせる手続きの方法が規定されており、それによると、大統領が議会の承認を得ることなく、大統領の一存で脱退の通告をする事が出来ます。その場合、6カ月の猶予の後、協定が無効になります。
また、NAFTAをやめない場合でも、大統領は個々の局面で関税を課す権限を持っています。
もうひとつ大統領の一存で出来ることに、中国製品に45%の関税をかけることがあります。この根拠になっているのは1974年通商法です。
そこでは先ず、アメリカ合衆国通商代表部(USTR)が他国の貿易のやり方を不公正だと認定することが必要です。
USTRは大統領府の中に設けられているため、実質的には大統領の思い通りに動くと思われます。ちなみにドナルド・トランプは、USTR代表に、対中強硬派で知られるロバート・ライトハイザー氏を指名しています。
【今週のまとめ】
金曜日の大統領就任式まで、慎重な売買を
今週の注目イベントは、なんといっても金曜日の大統領就任式です。大統領就任式の後は、いろいろな材料が飛び出す可能性があるので、それらをじっくり見極めた上で動いた方が良いと思います。
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