監査法人から決算の承認を得られず、米原発子会社ウェスティングハウスの米連邦破産法の申請を巡り米国を敵にまわし、虎の子の半導体事業売却交渉は難航し、どんどん追い詰められています。はたしてこのまま市場から退場してしまうのか、それとも奇跡の上場維持はあるのか!? 東芝問題をいち早く報じ追いかけてきた刺激的な金融メルマガ「闇株新聞プレミアム」の見立てやいかに!?
決算短信も出さず寛大な措置を
続けた東証さえも敵に回した
東芝は、5月15日「2016年度通期業績見通しに関するお知らせ」なるIRを発表しました。本来であれば「決算短信」が発表されるタイミングですが、東芝は「これ以上、PwCあらた監査法人との関係を悪化させたくなかった」という理由で見送り、この「お知らせ」になったといいます。
なんとも奇妙な言い分です。そもそも「決算短信」には、監査法人の「意見」は必要ありません(財務省に提出する「四半期報告書」には必要)。本決算(2016年度通期決算=2017年3月期)も提出期限は6月末ですから、あと1カ月以上もあります。
ならば、2度も延期した挙句に監査法人の意見表明なしで発表した2016年度第3四半期決算のように、今回も「決算短信」だけ発表してもよかったはずです。
ここまで“寛大な措置”を続けていた東証が、迅速な情報開示のために「上場企業は決算期末から45日以内に決算状況を開示する」と定めた「決算短信」をこんな形でないがしろにして、東芝は自ら上場廃止に近づいてしまったようなものです。
では、関係悪化をおそれたPwCあらた監査法人は、この気遣いによって少しでも決算書の承認に前向きになってくれるでしょうか?
PwCあらたと心中することに決めた
現経営陣には生き残り戦略は皆無
東芝は3月29日に米子会社・ウェスティングハウス(以下WH)の破産法適用を申請し、無理やり連結決算から外しました。その瞬間から東芝は米国すべてを敵に回し、WHの損失負担を巡って単独で戦うことになりました。
そうした状態で、プライスウォーターハウスクーパース傘下のPwCあらた監査法人が、米国側が不利になる恐れのある決算など承認するはずがありません。つまり、この期に及んでPwCあらた監査法人に「これ以上、関係を悪化させたくない」などと気を使っても無駄なのです。
いまとなっては手遅れですが、東芝が生き残るにはPwCあらた監査法人を解任して仮監査法人を選定し、念のために財務局に有価証券報告書の提出期限を1カ月延長してもらって(たぶん認められたはず)、7月末までの2カ月半で必死に決算処理を完了させるしか道はなかったはずです。
参考記事:東芝(6502)よ、なぜそれほどに死に急ぐ!?「地獄の扉」は開かれた、生還する唯一の策は…(2017年4月24日)
実際、そうした動きもあったようですが、経営陣は4月末に漫然と諦め、PwCあらた監査法人と心中することに決めてしまいました。この期に及んでは、もはや一発退場(上場廃止)となるか、PwCあらた監査法人の要求を丸呑みしてWHの損失を無限に押し付けられるかの「二択」しか残っていません。
取締役にはいまだ危機感のかけらもなし
半導体事業売却でも泥沼化は必至
さらに奇怪なことに、5月16日にリリースした「2016年度通期業績見通し」なるIRでは、4月11日の発表で8300億円となっていた「WHに対する親会社保証と貸倒引当金」の合計が、何の説明もなく9800億円に増額されています。
記者会見でそこをアナリストに突かれた平田専務取締役は「いやぁ、(前回は)把握できていませんでした」と答えただけだったとか。まるで他人事です。
さらには半導体メモリー事業の分社化・売却について、協業先の米ウェスタンデジタルが「差し止め」を国際商業会議所(ICC)国際仲裁裁判所に申し立てたと報道されています。
現経営陣の手腕では、この件も泥沼になるのは目に見えています。
かくして東芝は、自ら「破滅」の道を突き進んでいくことになりそうです。
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