半導体を製造する半導体ファウンドリ企業は
半導体デザイン会社より少ない
タイワン・セミコンダクター・マニュファクチャリング(ティッカーシンボル:TSM)は1987年に台湾で創業した世界有数の半導体ファウンドリです。
ファウンドリというのは、簡単に言えば製造下請です。
半導体業界では分業が進んでいます。すなわち、回路の設計に特化したデザイン企業と、それらの企業が持ち込むデザインに従って実際に半導体を製造するファウンドリに分かれているのです。
もちろん、半導体企業の中にはインテル(ティッカーシンボル:INTC)やテキサス・インスツルメンツ(ティッカーシンボル:TXN)のように自社工場を持ち、自分で回路設計したものを自分で製造している垂直統合された企業もあります。
しかし、回路設計のコンピタンス(適性)とプロセステクノロジー(工程技術)のコンピタンスは違います。
さらに言えば、半導体デザインは資本集約的(=参入するにあたり沢山の先行投資資金を必要とすること)ではありませんが、半導体ファウンドリのビジネスは資本集約的です。言い換えれば、半導体ファウンドリのビジネスは、敷居が高く、おいそれと始める事ができないのです。
その関係で、世界の半導体デザイン会社の数より半導体ファウンドリ企業の方が遥かに少ないです。
タイワン・セミコンダクター・マニュファクチャリングは
寡占市場の中でガリバー的な存在
その寡占市場的な半導体ファウンドリ業界の中でも、タイワン・セミコンダクター・マニュファクチャリングはガリバー的な存在となっています。
同社は、ブロードコム、エヌヴィディアなど、幅広い顧客と商売しています。下はそれらの顧客企業の本社所在地が何処かを示したものです。
次に、同社が製造する半導体がどのような用途に使われているか、を示します。
半導体ファウンドリのビジネスのポイントは
設備の稼働率
半導体ファウンドリのビジネスは資本集約的なので、設備を遊ばせないということが非常に重要になります。
その点、タイワン・セミコンダクター・マニュファクチャリングの設備稼働率は常に90%を超えており、とてもしっかり経営されていることがわかります。
技術の進歩に追われながら
高い稼働率を維持
実は、単に「工場を遊ばせない」と言っても、半導体の工程技術は日進月歩で進歩しており、半導体工場内で使用されるツールは恐ろしい速度で陳腐化しています。
下は、タイワン・セミコンダクター・マニュファクチャリングの半導体工場で製造される半導体回路の線幅が、どんどん細くなっていることを示しています。
さらに半導体の需要増に応えるカタチで、ウエハー(=半導体の製造に欠かせないピザのような円盤状の板)の生産キャパシティそのものも、どんどん増強される必要があります。
こういう厳しい要求に応えつつ、稼働率を落とさないということが、いかに無理ゲーであるか、お分かりいただけたかと思います。
経営効率の高さは
マージンと業績に現れる
こうした結果として、タイワン・セミコンダクター・マニュファクチャリングは、半導体ファウンドリとしては極めて高いマージンを確保しています。
つまり、凄く儲かっている会社なのです。
下は1株当たりの業績データです。NT$は「ニュー・タイワン・ダラー」の略で、交換レートは1米ドル=30.16 NT$です。
なお上のチャートは、普通株1株当たりのデータですので、皆さんが購入するADR(米国預託証券)のEPSに直す場合は、米ドルに換算した1株当たりのデータを5倍する必要があります。
2016年のEPS(NT$12.79)を例にとり、計算してみます。
12.79NT$ ÷ 30.16 × 5 = 2.12米ドル
これが1ADRのEPSになるわけです。
【今週のまとめ】
タイワン・セミコンダクター・マニュファクチャリングは
社会のデジタル化の恩恵をこうむる
タイワン・セミコンダクター・マニュファクチャリングは、幅広く社会のデジタル化が進めば、その恩恵をこうむります。半導体ファウンドリのビジネスは敷居が高く、新規参入は少ないです。この寡占的な市場で、同社はガリバー的な存在です。財務内容はピカピカです。
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