日本は街並みが洗練されてレストランのレベルも高いが、
子どもに対する寛容度はシンガポールのほうが上!
ファイナンシャル・プランナー(FP)の花輪陽子です。年末年始は1カ月弱日本で過ごしたのですが、日本とシンガポール、両国の良し悪しを改めて実感させられました。
東京の日本橋・銀座周辺エリアの洗練度は、シンガポール以上です。ビジネスで人と会うときや外食をするときなら、圧倒的に日本のほうが良い(なかでも東京は素晴らしい)でしょう。
ですが、ダイバーシティ(多様性)、他者への寛容さに関しては、圧倒的にシンガポールのほうが優れていると痛感しました。大人が一人で仕事に出かけるなら、東京は最高ですが、子連れだとシンガポールのほうが圧倒的に優れています。
日本では最近、公園から子どもの遊具が減って、大人向けの健康遊具が増え、子どもが外で思いっきり遊べる場所が減っているようです。町中でも、子どもが騒ぐことはあまり良しとされていない雰囲気です。実際、子どもを連れて外出するときには気を遣う場面が多く、日本では子育てが非常にしづらいと感じました。
対するシンガポールは、子どもが走り回ったり大声を出したりしても、周囲の人が冷たい視線を飛ばしてくることはまずありません(子どもが泣いている場合、心配そうに温かい視線を送ってくることはありますが)。子連れで肩身の狭い思いをせずに済むところは、日本とシンガポールの大きな違いです。
世界幸福度ランキングでアジアトップはシンガポール!
日本は経済力があり、健康寿命も長いのに51位
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国連は3月20日を「国際幸福デー」に定めていて、「世界幸福度報告書」を毎年公表しています。その報告書の中に掲載されている「世界幸福度ランキング」(直近データの対象国は全155カ国)を見ると、アジアの国でトップなのはシンガポール(26位)。続いてタイ(32位)、台湾(33位)、マレーシア(42位)となり、日本(51位)はアジアで5位となっていました。
この幸福度は、国民1人あたりのGDP、健康寿命、社会的支援、生き方の自由度、腐敗認識度、他者への寛容さといった多角的な指標から算出されています。シンガポールも日本も、経済力や健康寿命、社会的支援などの評価が高いのですが、腐敗認識度、他者への寛容さといった面では、シンガポールのほうが日本よりも高く評価されています。
「腐敗認識度」とは、「政治家や官僚、公務員がどの程度、腐敗していると認識されているか」を示す数値で、タイなどの東南アジアのいくつかの国では汚職や腐敗行為が横行していますが、シンガポール政府は官僚に高給待遇を与え、そのようなことが起こらない仕組みを作っています。そうしたことが功を奏してか、日本が腐敗認識度で15位のところ、シンガポールは7位にランクインしています。
また、シンガポールの人々が他者に寛容であることは、前述の子連れに対する眼差しの優しさにも表れています。子どもに対する態度でみても、シンガポールに比べて日本にはたしかに不寛容な人が多いと言えるかもしれません。
先日、NHKスペシャルで「不寛容社会」という特集が放送されていました。この番組が実施したアンケート調査でも、約半数の人が「他人の過ちや欠点を許さない不寛容な社会だ」「自分と意見や立場が異なる人を認めない不寛容な社会だ」「ほかの人種や民族に対する差別がある」と回答していました。
他者に対して不寛容であることは、グローバル社会を生き抜く上で致命的な欠陥となると思います。シンガポールのような多民族国家で、世界中からビジネスや教育のために色んな国籍の人が交流する場にいると、文化や考え方の違いが発生するのは日常茶飯事であり、細かいことをいちいち気にしていては暮らしていくことはできません。
私の知る限りですが、インド系の方は融通が利かないことが多く、中華系の方はその真逆で、まさに違いを感じさせられることがよくあります。しかしシンガポールで彼らとコミュニケーションを取るなかで、人間同士が交流を深めていくためには、お互いの違った背景をまず受け入れることが重要だと気付かされました。
「寄付をするのが当たり前」=「他者に寛容」
シンガポールでは寄付や慈善活動が活発
また、他者への寛容さは「寄付の多さ」でも評価されるのですが、シンガポールでは学校などへの寄付も多く、校舎の建物の多くが寄付で建てられている学校も目立ちます。
私の子どもが通っているインターナショナルスクールでも、父兄が何かにつけてボランティアや寄付をする機会が非常に多くあります。例えば、学校行事では親が食事などを準備することもよくあるのですが、準備係に自ら立候補した人が食事の費用を自己負担(寄付)します。
私もこの半年で食事係に3回なり、その都度5000円くらい寄付をしましたし、それ以外に現金で寄付したことも何度かあります。日本の感覚だとかなり頻度が多いようですが、これでも最低限をこなしている程度で、父兄のなかにはもっと頻繁に学校関連のボランティアに携わっている人がたくさんいます。
日本で生まれ育つと、学校や家庭で慈善活動をする機会が少ない一方、欧米では慈善活動は当たり前の文化です。シンガポールには欧米人が多く住み、英国統治時代が長い国なので、英国文化も混ざっています。先の幸福度ランキングで19位に入っている英国も、他者への寛容さは高く評価されています。
他人のために働き、他人のためにお金を使うことを
子どものうちから知っておいたほうがいい
こうした文化に触れた経験から、日本でも幼少期から子どもたちには、お金を「貯める」だけではなく、「使う」「寄付をする」といったことも教えていく必要があるのではないか、と強く感じさせられました。
寄付やボランティアをすると、まず周りの人に喜んでもらうことができます。また、慈善活動は結果的に、将来の自分や子ども達のためになります。子どもが寄付やボランティアに関わる機会を持てば、「このお金がどのように使われるのか」といったことを想像するきっかけにもなるでしょう。
不寛容社会ができあがる一因は、他者の立場で考えてみるという「想像力」の欠如も影響しているはずです。想像力を欠如させているのは、日本の教育システムの問題も大きいと思います。より想像力を育んでいくために、教える側からの一方的な講義だけではなく、様々な意見をぶつけ合うディスカッション形式の授業や、ボランティア活動、フィールドワークなども取り入れていってほしいと思います(いずれもインターナショナルスクールでは一般的な取り組みです)。
今後、日本が幸福度の高い魅力的な国となっていくためには、多くの日本人が留学経験や海外で働く経験などを通し、より異文化を体験することが求められるかもしれません。まもなく2018年版「世界幸福度報告書」が発表されますが、日本の順位がどのようになっているか、楽しみなような不安なような気持ちです。
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