闇株新聞[2018年]

米通信会社スプリントとTモバイルが合併合意
ソフトバンクが経営権をあっさり諦めた理由闇株新聞が推察する「孫正義社長の胸の内」

2018年5月3日公開(2022年3月29日更新)
闇株新聞編集部
facebook-share
twitter-icon
このエントリーをはてなブックマークに追加
RSS最新記事
闇株新聞プレミアムメールマガジン 20日間無料!

ソフトバンクグループ(以下、ソフトバンク)子会社で米携帯電話第4位の「スプリント」と、ドイツテレコム子会社で同3位の「TモバイルUS」が2019年前半の合併に合意したようです。刺激的な金融メルマガ『闇株新聞プレミアム』が、これまでの経緯と孫社長の思惑について分析・解説しています。

Tモバイルとの合併は、ソフトバンクの
スプリント合併直後から模索されてきた

 米国の携帯電話市場は「2強2弱」と言われ、ベライゾンとAT&Tがトップを争い、Tモバイルとスプリントは苦戦しています。次世代通信規格「5G」を巡っては巨額の設備投資が必要となり、Tモバイルとスプリントは単独で生き残るのは厳しいと見られています。

 そのため両者はここ数年で何度かの合併交渉を行ってきましたが、さまざまな事情があって実現してきませんでした。

【過去の合併交渉の経緯】
●ソフトバンクがスプリントを買収(2013年7月)
 孫正義社長はスプリントを買収した翌年の夏Tモバイルも呑み込み「3強」になろうとしたが、FCC(連邦通信委員会)が「自由な価格競争が阻害される」と反対し断念。その後Tモバイルはスプリントを抜き第3位に浮上し差を開げた。
●孫社長がトランプ次期大統領と会談(2016年12月)
 トランプが大統領に当選するとソフトバンク・孫社長はすぐに会いに行き、500億ドルの巨額投資と5万人の雇用創出を確約。トランプ大統領もFCC院長に規制緩和派のアジット・パイ氏を指名するなど、再び合併に向けた機運が高まった。
●2度目の合併交渉(2017年6月)
 業績や時価総額で大きく劣るにもかかわらず、スプリント(ソフトバンク)が経営主導権の確保にこだわったために破談。

 今回3度目となる合併交渉では、スプリント(ソフトバンク)があっさりと経営主導権を諦め、Tモバイル主導での合併を呑んだために合意に至ったとされています。

 報道された合併案によると、Tモバイルとスプリントは完全合併して新会社に移行、ドイツテレコム(Tモバイル親会社)が新会社の株式41.7%を、ソフトバンクが同27.4%を保有。残る30.9%が両社の少数株主が保有することになっています。

 経営陣は取締役14名のうちTモバイル側が9名、ソフトバンク側は孫社長とクラウレ氏(スプリントCEO)を含む4名だけとなるようです(残る1名は不明)。また新会社の株式はTモバイル1株につき新会社1株、スプリント9.75株につき新会社1株の割合で交付されるとのことです。

 これを受けてスプリント株は14%下落、Tモバイル株も6.2%下落しました。両社ともに下落したのは「今回もFCCの承認が得られないだろう」との懸念があるからでしょう。今回は両社とも親会社が外国企業のため、対米外国投資委員会(CFIUS)の承認も必要で、可否は五分五分とされています。

孫社長にはすでに携帯事業に情熱がなく
AIやEVなどの新規投資に軸足か!?

 ソフトバンクは経営主導権を実質放棄した代わりに、4兆円をこえるスプリントの有利子負債(年間の利払いが2700億円だそうです)を新会社に押し付け、膨大に必要となる5G関連の投資についても直接負担を免れます。直近で14兆円もある連結有利子負債は、かなり軽減できるでしょう。

 ソフトバンクは本年初め、国内携帯電話事業を別会社にして新規上場させ、その3割程度を売り出して2兆円ほどを資金化する計画を発表していたのは記憶に新しいところです。この辺りから推察するに、孫社長はすでに内外の携帯電話事業に対する情熱を失っているのではないかということです。これまでの携帯電話事業に対する投資をせっせと回収して、AIやEVなど新規事業への投資に軸足を移していると見られます。

 今回の案件は完全株式交換なので「投資収益」を弾くことは難しいものの、スプリント買収時はドルを80円台で事前調達していたはずで、少なくともプラスであることは間違いありません。

 とはいえ、ソフトバンクの収益や財務体質の拡大を支えてきたのは「規制に守られて大儲けが約束された官製寡占事業」だったはずです。ある意味で安定的でおいしい事業のはずですが、これをも投資の回収対象としていることは、やや気がかりです。

 これまで膨大な利益を提供してくれた国内利用者に十分還元をすることもなく、世界中の「まだまだこれから」という新規事業ばかりに巨額資金をつぎ込む孫社長の姿は、見ていてやや不安になります。

闇株新聞プレミアムメールマガジン 20日間無料!

ソフトバンクがボーダフォンを買収し国内携帯電話事業に参入すると名乗りを上げたのは2006年3月でした。あれから12年がたちスマートフォンの普及や格安SIM会社の隆盛など国内の携帯電話事業・勢力図も大きく変わっています。孫正義社長は昨年スタートした10兆円の「ビジョン・ファンド」の投資先選定も急いでいるようで、今後の展開が大いに注目されます。刺激的なメールマガジン『闇株新聞プレミアム』では個人投資家の関心が高い企業の動向についても、新聞や雑誌では読めない掘り下げた記事を配信しています。

闇株新聞PREMIUM

闇株新聞PREMIUM
【発行周期】 毎週月曜日・ほか随時  【価格】 2,552円/月(税込)
闇株新聞PREMIUM 闇株新聞
週刊「闇株新聞」よりもさらに濃密な見解を毎週月曜日にお届けします。ニュースでは教えてくれない世界経済の見解、世間を騒がせている事件の裏側など闇株新聞にしか書けないネタが満載。
お試しはコチラ

 

DPM(ダイヤモンド・プレミアム・メールマガジン)

●DPM(ダイヤモンド・プレミアム・メールマガジン)とは?

金融・経済・ビジネス・投資に役立つタイムリーかつ有益な情報からブログに書けないディープな話まで、多彩な執筆陣がお届けする有料メールマガジンサービス。
初めての方は、購読後20日間無料! 


世の中の仕組みと人生のデザイン
【発行周期】 隔週木曜日  【価格】 864円/月(税込)
世の中の仕組みと人生のデザイン 橘 玲
金融、資産運用などに詳しい作家・橘玲氏が金融市場を含めた「世の中の仕組み」の中で、いかに楽しく(賢く)生きるか(人生のデザイン)をメルマガで伝えます。
お試しはコチラ

堀江 貴文のブログでは言えない話
【発行周期】 毎週月曜日、水曜、ほか随時  【価格】 864円/月(税込)
堀江 貴文のブログでは言えない話 堀江 貴文
巷ではホリエモンなんて呼ばれています。無料の媒体では書けない、とっておきの情報を書いていこうと思っています。メルマガ内公開で質問にも答えます。
お試しはコチラ

 


ダイヤモンドZAi 2023年7月号
【クレジットカード・オブ・ザ・イヤー 2023年版】2人の専門家がおすすめの「最優秀カード」が決定!2021年の最強クレジットカード(全8部門)を公開! 最短翌日!口座開設が早い証券会社は? アメリカン・エキスプレス・ゴールド・カードは、 本当は“ゴールド”ではなく“プラチナ”だった!? 日本初のゴールドカードの最高水準の付帯特典とは? 高いスペック&ステータスを徹底解説!アメリカン・エキスプレスおすすめ比較 おすすめ!ネット証券を徹底比較!おすすめネット証券のポイント付き
ZAiオンライン アクセスランキング
1カ月
1週間
24時間
ダイヤモンド・ザイ最新号のご案内
ダイヤモンド・ザイ最新号好評発売中!

1億円のつくり方
アガル! 外食株!
お金の知識総点検

7月号5月19日発売
定価780円(税込)
◆購入はコチラ!

楽天で「ダイヤモンド・ザイ」最新号をご購入の場合はコチラ!Amazonで購入される方はこちら!
 

[1億円のつくり方/アガル外食株]
◎巻頭特集
最新決算でわかった!買いの株39銘柄
速報! 人気15銘柄の買×売診断!
上方修正で上がる株
●営業利益アップの内需株
●株主還元が期待できる株


◎第1特集
リアル1億円のつくり方
11人の成功も失敗もぜーんぶ公開!
会社員もできた!2年で一気から17年でコツコツの人まで!

日本株で増やす
趣味のゲーム株で300万円から達成
忙しい会社員ができた決算期だけ投資法など
米国株で増やす
英語も財務も必要ナシの勝ち方
・個別株で攻めて投信で守るやり方など
FX・CFDで増やす
・株式指数のCFDで市場の波に乗る!など
●達人の手法で選ぶ日米の上がる株
●必見!
億り人の情報源

◎第2特集
大逆襲の31銘柄がドドーッと!
アガル! 外食株!
コロナの大動乱で勝ち残った外食に注目!

●業界に旋風を巻き起こす外食の風雲児!
・物語コーポレーション
・ギフトコーポレーションほか
●外食のレジェンズ!
・日本マクドナルドホールディングス
・ロイヤルホールディングスほか
●株主優待で楽しく外食!

桐谷さんヘビロテ必至のうまい優待メシ&最もオトクな外食優待利回りバトル!

◎第3特集
つみたてNISA投信の通信簿
直近5年の成果でランキング!
●資産が大きく増えた投信ベスト50
●資産が減った・増えてない投信ワースト
●連動指数やタイプ別で好成績のオススメ投信


◎【別冊付録】

お金の常識度チェック付き!
最新のマネー情報!お金の知識総点検


◎人気連載もお楽しみに!

●株入門マンガ恋する株式相場!
●マンガどこから来てどこへ行くのか日本国
●おカネの本音 小川敦生さん


>>「最新号蔵出し記事」はこちら!


「ダイヤモンド・ザイ」の定期購読をされる方はコチラ!


>>【お詫びと訂正】ダイヤモンド・ザイはコチラ

【法人カード・オブ・ザ・イヤー2023】 クレジットカードの専門家が選んだ 2023年おすすめ「法人カード」を発表! 「キャッシュレス決済」おすすめ比較 太田忠の日本株「中・小型株」アナリスト&ファンドマネジャーとして活躍。「勝つ」ための日本株ポートフォリオの作り方を提案する株式メルマガ&サロン

ダイヤモンド不動産研究所のお役立ち情報

ザイFX!のお役立ち情報

ダイヤモンドZAiオンラインαのお役立ち情報