日米株式共に冴えない動きが続いています。現時点での最大の理由は、米中首脳会談の行方が不透明だからです。
11月30日~12月1日にアルゼンチンで開かれるG20首脳会議に合わせて、トランプ大統領と習近平国家主席が会談する予定です。ここで、貿易戦争が「いったん休戦」なら好感され相場は急上昇、しかし、「物別れ」なら嫌気され急落する可能性がある以上、リスク回避的な多くの投資家は株式を買うことを躊躇するのは当然です。そして、足元では、首脳会談に関するニュースフローに日米株式市場共に、右往左往しています。
トランプ米大統領は11月16日、「中国が広範な行動リストを提出してきた。142項目だ。非常に完成度が高い」と述べたものの、「重要な4、5項目が解決されていない」「私にとって、まだ受け入れられるものではない」とも指摘したそうです。また、ペンス米副大統領は17日、「われわれはよくなることを望んでいるが、中国がやり方を改めるまで、米国は方針を変えない」述べ、強硬姿勢を崩していません。
一方、中国側も、習近平国家主席が11月17日、米国を念頭に、「冷戦も戦争も貿易戦争も真の勝者はいない」と主張しました。
米中対立の結果、パプアニューギニアで開いたアジア太平洋経済協力会議(APEC)は、11月18日、2日間の協議を終え閉幕したものの、首脳宣言の採択を断念する異例の事態になりました。このように、米中首脳会談の行方については、予断の許せない状況なのです。
このため、多くの投資家は、結果が判明するまではリスク資産である株式を積極的に買うことはないでしょう。
日経平均株価は引き続きバンドウォークを継続
26週移動平均線が抵抗線に
当面の日経平均株価については、26週移動平均ベースのボリンジャーバンドのマイナス1σ(11月19日現在2万1944.13円)を中心に、同マイナス2σ(同2万1344.02円)と26週移動平均線(同2万2544.23円)との間を行き来する「バンドウォーク」を引き続き想定しています。このため、仮に、年末高があったとしても、上値は26週移動平均線付近がせいぜいだろうとみています。
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じりじりと資産を減らす個人投資家
信用買残は3週連続で減少
ところで、日経平均株価は軟調とはいえ、底堅い動きではあります。しかし、市場関係者へのヒアリングベースでは、底なし沼にはまったかのように、ジリジリと資産を減らしている個人投資家が多いそうです。
10月のような急落ではないため、資産を急減させている個人投資家は皆無のようですが、日経平均株価はしっかりしているものの自分の持ち株は毎日少しずつ下落し、評価損の拡大がボディーブローのように効いている個人が多いそうです。10月の急落以降の相場は相当難易度が高いため、上手く立ち回れている投資家はごく一部で、多くの投資家はそんなに上手く立ち回れていないのでしょう。
その一方で、信用買い残の整理は順調に進んでいます。11月9日時点の信用買い残は2兆9905億円と3週連続で減少し、5週ぶりに3兆円の大台を割り込みました。多くの個人好みの銘柄群が冴えない値動きを続けているため、買い建玉の見切り売りが出続けていると推察されます。
確かに、将来の売り需要である買い残の減少は需給面でポジティブです。しかしながら、中長期的な先行き相場の先高観の後退を主因とした買い残の減少は、手放しで喜ぶべき材料とは言い難いですねえ。
今年は1年を通じて追証が出続け、
多くの個人投資家にとって「受難の年」に
ちなみに、ネット証券の追証動向をウオッチし続けている知り合いによれば、「今年のように1年を通じて追証が出続ける年は非常に珍しい。普通は1年に1回か2回急増するだけで終わるんだけどねえ」と言っていました。今年はおそらく、2月と10月に急増したはずですが、例年とは異なり、1年を通じて追証がそれなりの水準で出続けたのでしょう。
信用取引を行っている投資家の状況を踏まえれば、ここまでのところ、2018年は多くの個人投資家にとって「受難の年」になった可能性が高いですね。
確かに、10月2日の日経平均株価の終値は2万4270.62円と、1991年11月以来、約27年ぶりの高値を更新しました。しかし、この間も、上がるのは指数寄与度の大きい値嵩株、時価総額上位の超大型株だけで、多くの個人好みの新興株や小型材料株は物色の蚊帳の外でした。
そして、10月の日経平均株価は、月間で2199.58円(9.1%)も下落しました。下落幅はリーマン・ショック直後の2008年10月の2682.88円以来10年ぶりの大きさで、下落率も2016年6月の9.6%以来の大きさでした。この急落で、大型株中心で運用をしていた個人も大打撃を被りました。
また、日経平均株価が上がる時には全く連動しなかった新興株や小型材料株は、日経平均株価急落時は、その倍、または3倍のスピードで下落し、それらを現物及び信用で抱えていた個人に致命傷を与えました。そして11月に入った今も、信用買い方の屍が堆く積み上がっていると観測されます。
ソフトバンクやレオス・キャピタルワークスなど
12月のIPOラッシュが「一縷の望み」に!
こんな状態なので、多くの短期スタンスの個人の期待は12月のIPOラッシュでしょう。11月19日時点では、12月のIPOは11日上場のアルー(7043)、ピアラ(7044)を皮切りに、19社予定されています。その中には、12月19日に上場する超大型IPOのソフトバンク(9434)や、小型株投資好きの個人中心に知名度抜群のレオス・キャピタルワークス(7330)などが含まれています。
これら人気・注目度の高いIPOを呼び水にして、新興市場や小型材料株への資金流入加速⇒年末ラリーの発生というのが、短期投資を好む個人の「一縷の望み」になっているとみています。
「来年10月1日に消費税を10%へ」の表明で
6年にわたるアベノミクス相場は終了か
思い返せば、2012年11月14日、当時の野田佳彦首相は衆院解散に踏み切る意向を表明し、そこから「アベノミクス相場」がスタートしました。
しかし、安倍晋三首相は2018年10月15日の臨時閣議で消費増税について「法律に定められた通り、2019年10月1日に8%から10%へ引き上げる」と表明しました。もしかしたら、この表明で「アベノミクス相場」はいったん終了したかもしれない、と感じています。
まあ、仮にそこで終わったとしても、6年間という長期に及ぶ上昇相場を実現してくれたので、正直、安倍首相には、感謝こそすれ文句は全くありません。しかしながら、人間の欲というものは無限です。できれば、なる早で「3度目の消費増税延期」を決断していただき、「アベノミクス相場」の延長を確実なものにして欲しいものです。
【※12月のIPOラッシュの関連記事はこちら!】
⇒ソフトバンクのIPO(新規上場)の初値は+10〜20%上昇する! フィスコのアナリストの初値予想から上場スケジュール、主幹事証券会社まで詳しく解説!
⇒ひふみ投信を運用する「レオス・キャピタルワークス」のIPOの情報の総まとめ! スケジュールから幹事証券、注目度、銘柄分析、他の投資信託の運用・販売企業との比較や予想まで解説!
⇒ IPOスケジュール一覧[2018年]
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