日経平均株価に
上振れ余地が発生
12月3日の日経平均株価は一時22697.79円まで上昇し終値は22574.76円と、26週移動平均線を上回りました。前回までの私の相場観は、「日経平均株価は10月26日の20971.93円が1番底、11月8日の22583.43円がネックライン、そして、11月21日の21243.38円が2番底になりそうで、その場合の戻り限界は26週移動平均線であり、21000円台前半~26週移動平均線との間で『もみあい』となった後に、『下』に離れる。」というものでした。
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このため、本来なら現在の水準は絶好の売り場になるはずなのですが、ここにきて、様々な要因が改善したため、日経平均株価に上振れ余地が出ているように感じます。よって、シナリオを変更する必要性が生じました。改善した要因は、大きく3つです。「米国長期金利の低下」「米中貿易戦争の一時休戦」、そして「原油安の一服」です。
「米国長期金利の低下」や「米中貿易戦争の一時休戦」、
「原油安の一服」が改善の要因に
まず、12月3日の米10年物国債利回りは前週末比0.02%低下し、2.97%と、9月中旬以来の低水準で取引を終えました。これは、11月28日に、パウエルFRB議長が講演で「(政策金利は)景気に中立とされる水準をわずかに下回っている」と発言したことに加え、11月のFOMC議事要旨でも、来年以降の利上げペースが鈍る可能性が示唆されたため、FRBの早期利上げ打ち止め観測が強まりました。米長期金利上昇が、米国の高PERのIT関連の成長株の売り要因となっていただけに、足元の米長期金利低下はグロース株にとってポジティブです。
次に、12月1日の米中首脳会談では、米国が年明けに予定していた中国製品への追加関税引き上げなどを90日間猶予すると決めました。発動猶予を受けて、米中両政府は12月中旬にも高官級協議を再開する見通しです。ただし、米側はこの協議に関しては、90日以内という期限を区切り、合意できなければ関税を引き上げる方針です。つまり、「一時休戦」です。確かに、これから始まる交渉で米国の要求は高くなる見通しで、協議の行方には紆余曲折が見込まれます。しかしながら、市場は「いいとこ取り」で、目先は今回の「猶予」をポジティブに評価し続けるでしょう。
そして、3日のWTI期近の1月物は前週末比2.02ドル高の1バレル52.95ドルで取引を終えました。これは、ロシアのプーチン大統領とサウジアラビアのムハンマド皇太子が1日の会談で協調減産の延長で合意したと伝わったことが主因です。主要産油国が協調減産で折り合えば、需給が引き締まり、価格下落に歯止めが掛かります。これまで市場が恐れていたのは、「原油安→産油国の財政悪化→保有株式売却による補填」という悪循環でした。これが一応、回避される可能性が高まったことは、原油先物価格に関して、需給面でプラス材料です。
足元の上昇は、中期下落相場の中での
短期的な「あや戻し」にすぎない
このため、相場観は「日経平均株価は10月26日の20971.93円が1番底、11月8日の22583.43円がネックライン、そして、11月21日の21243.38円が2番底になった。当面の日経平均株価は、ネックライン(22583.43円)±500円程度の『もみあい』で、25日移動平均線(3日現在21937.10円)を割り込まない限り、『弱気相場』入りしない。」に変更します。
その一方、日経平均株価の1番天井は2018年1月23日の24129.34円、ネックラインは3月26日の20347.49円、2番天井が10月2日の24448.07円です。24000円オーバーで「ダブル・トップ」を形成しつつあるため、この天井は信頼度の高い天井との見方は不変です。また、安倍晋三首相が、3度目の消費増税延期を表明しない限り「アベノミクス相場」の復活はないとの見方にも変更はありません。
つまり、現時点において足元の上昇は、中期下落相場の中での短期的な「あや戻し(下落基調の相場で、一時的に少し値を上げること)」と認識しています。
10月の株価急落以降、
個人投資家のマインドは冷え込んだまま
名実ともに12月3日から「師走相場」入りしましたが、日経平均株価が7連騰した割には、個人投資家にとっての体感温度は低いままのように感じます。これは日常業務での市場関係者との電話や、LINEなどでのやり取りをする中で、強く感じられています。
やはり、いちばん大きな要因は、10月の相場急落で多数の退場者が出て個人投資家の絶対数が大幅に減少したことに加え、10月相場で退場は免れたものの、依然として大きく毀損した資産の傷が癒えていない個人投資家が非常に多いからでしょう。11月下旬から確かに相場は底入れし、買い方にとっては良好な環境になってはいますが、まだまだ戻りが足りないのでしょう。というか、株価指数は上がっているけど、彼らが引かされている銘柄群の株価の戻りが鈍いと観測されます。
つまり、「指数戻れど、我が株戻らず」といった感じなんだと思います。
年内に損失を確定して
「強い銘柄」に入れ替えるには良い相場環境
それでも、ここまで相場が戻ったんですから、個別も安値からはそれなりに戻したはずです。銘柄を入れ替えるには良い環境だと思います。値動きが悪く、需給が悪く、チャートがよくない銘柄から、値動き良好、需給良好、チャート良し!の銘柄に入れ替えるべきです。年内に損失を確定させ、心機一転、「強い銘柄」で「師走相場」を乗り切ることをおすすめします。
なお、今月に関しては、IPOラッシュが見込まれているため、短期スタンスの資金は、IPO銘柄を中心に新興市場や、小型材料株への流入が加速すると予想しています。年初来高値や、上場来高値を更新しているような、需給良好な銘柄群にだけ、選別的に資金が入ってくる可能性が高いと考えます。逆に、需給が悪く、値動きの鈍い銘柄群は、個人の損出し、節税売りで月内受け渡し最終日前後までアンタッチャブルだとみています。
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