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日経平均株価は、米中貿易戦争激化と消費増税により上がり難い相場に! 今の状況で狙うべきは「RPA」「5G」などのテーマ性を持つ非製造業の好業績銘柄

2019年5月21日公開(2022年3月29日更新)
藤井 英敏
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 企業業績の低迷を背景に、日経平均株価などの株価指数の上値はバリュエーション面から重そうです。日経新聞社の集計では、上場企業の2020年3月期の純利益は、前期比1.4%減と、2019年3月期に続いて2期連続での最終減益となる見通しです。

 ですが、中身をみると「2期連続で増益見通しの非製造業」と「2期連続で減益見通しの製造業」という構図になっています。グローバルに事業を展開している製造業は、中国の景気鈍化などの影響を大きく受けているし、今後も米中貿易戦争のネガティブな影響を受けざるを得ません。一方、国内需要が中心の非製造業は、好調を維持する見通しです。

米中貿易戦争の激化にともない、
工作機械、自動車、半導体などの製造業は厳しい状況が続く

 日本国内においては、少子高齢化にともなう労働生産人口の減少、人材不足が問題になっています。このため、小売りなど非製造業では、業務効率化、省力化投資が求められています。その結果、ロボティクス、協働ロボット、人口知能(AI)、IoT、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)、「5G」、ドローン、自動運転など、業務効率化・省力化を実現するためのテーマ性を有する非製造業の銘柄群が今後の物色の柱になるでしょう

 一方、米中貿易戦争激化を受け、工作機械、自動車、自動車部品、電子部品、半導体などの銘柄群は厳しい状況が続く見込みです。とりわけ、中国の通信機器最大手、華為技術(Huawei:ファーウェイ)に対する米国の禁輸措置を受け、電子部品、半導体への売り圧力が強い状況が継続しそうです。

 自動車、自動車部品に関しては、トランプ米政権が輸入車への追加関税の判断を180日延長すると決めたことはポジティブです。しかしながら、今後、自動車問題で米と日欧の対立が激化する可能性は残っています。このため、この問題の決着がある程度読めるまでは自動車、自動車部品の上値は買い難いとみています。

 なお、これら工作機械、自動車、自動車部品、電子部品、半導体などの銘柄群については、米中首脳会談があるとみられる6月のG20首脳会議で、米中が合意に達するとういう期待が盛り上がる場合には、急速に買い戻される見通しです。

 ですが、現時点においては、強硬策を相次いで打ち出している米国に対して、中国が態度を硬化させています。このため、そういった期待が盛り上がる可能性は残念ながら低そうです。実際、中国外務省は「貿易戦争を恐れていない。玄関まで来たなら最後まで付き合う!」と強気なコメントを発しています。

日経平均株価の戻りメドは2万1600円~2万1800円だが、
5日移動平均線を割り込むと2万0751円を試す展開に!

 テクニカル的にみると、日経平均株価については、4月24日の2万2362.92円から5月14日の2万0751.45円までの下落幅は1611.47円でした。この半値戻しが2万1557.19円、61.8%戻しが2万1747.34円ですから、戻りメドはザックリ2万1600円~2万1800円程度を想定しています。

■日経平均株価チャート/日足・6カ月
日経平均株価チャート/日足・6カ月日経平均株価チャート/日足・6カ月(出典:SBI証券公式サイト)
※画像をクリックすると最新のチャートへ飛びます
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 一方、再び、5日移動平均線(5月20日現在2万1174.11円)を割り込むと、2万0751.45円を試しにいくことになりそうです。そして、2万0751.45円を割り込むケースでは、昨年12月26日から今年4月24日までの上げ幅3414.34円の61.8%押しの2万0252.86円が意識されるでしょう。

米中貿易戦争に加え、消費増税への懸念が
海外投資家による日本株売りの要因に!

 需給面では、海外投資家の売りが止まらないと日経平均株価は上がり難く、下がりやすい状況が続くでしょう。

 5月第1週(7~10日)の投資部門別株式売買動向では、海外投資家は5週ぶりに売り越しました。売り越し額は191億円でした。一方、5月第1週(7~10日)の海外投資家の日経平均先物とTOPIX先物を合算した売り越し額は6378億円と、売り越しは2週連続で、売り越し額は3月第4週以来の大きさでした。

 なお、この海外投資家の売りの理由は、米中貿易戦争懸念に加え、消費増税の影響が懸念されているからのようです。

 消費増税に関しては、菅義偉官房長官が5月13日午後の記者会見で、「リーマン・ショック級の出来事が起こらない限り、本年10月に引き上げる予定であり、予定通り引き上げることができるよう経済運営をしっかりしていきたい」と話しました。また、麻生太郎財務相は14日の閣議後の記者会見で、消費増税実施への影響について「リーマン・ショック級の大きな話になると捉えているわけではない」と述べています。そして、茂木敏充経済財政・再生相も19日のNHK番組で、10月に消費税率を予定通り10%に引き上げる考えを改めて示しています。

 このように現時点では、消費増税延期を期待できる状況ではありません。このため、海外投資家の日本株売りは継続する可能性が高いとみておく必要があるでしょう

 ただし、政治の世界は「一寸先は闇」です。選挙に有利という政治的な判断が行われれば、急転直下、増税延期を掲げて解散・総選挙に打って出る可能性は決して低くはないとみています。タイミング的には、通常国会最終盤の6月21~26日や、2019年G20大阪サミットが開催される6月28日~29日、日銀短観6月調査の発表される7月1日直後あたりが怪しいと考えています。

 逆に言えば、それまでは政府サイドから消費増税延期に前向きな発言は期待し難いとみています。

日本株が復活するには、
「米中貿易戦争の終結」か「消費増税の延期」しかない!

 5月20日発表の2019年1~3月期の実質GDP速報値は、前期比0.5%増(年率2.1%増)と2四半期連続のプラス成長でした。しかしながら、中国景気の減速を主因に輸出は2.4%減でした。一方、輸入は原油や天然ガスの輸入が減ったため、4.6%減でした。輸入の減少幅が輸出の減少幅を上回ったという、統計上のカラクリでGDPが押し上げられたのです。

 また、GDPの過半を占める個人消費は実質で前期比0.1%減、民間企業の設備投資は0.3%減と、いずれも2四半期ぶりのマイナスでした。つまり、足元の日本経済は「よくない」といえます。

 このため、有力閣僚がこのGDP統計を受け、口を揃えて「消費増税は予定通り実施」と言ったとしても、政治的判断から「延期」になる可能性は低くないと考えています。というか、このような経済状況で、消費増税を断行したら、日本株だけ「リーマン・ショック級の下げ」に見舞われる可能性があるでしょう

 日本株復活には、「米中貿易戦争の終結」、または「消費増税の延期」しかないと考えます。それまでは日本株は全体としては調整が続くものと諦めています。

 そして、このような投資環境で狙うべきは、テーマ性を有する非製造業の好業績銘柄群ということになるでしょう

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