日経平均株価が4日の2万289.64円で底入れし、6月11日前場には一時2万1208.09円を付けるなど、東京株式市場の地合いが好転しました。
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主因は米国株の上昇です。米国株上昇の背景は、FRBによる早期利下げ期待の高まりと、「米中貿易協議再開期待の高まり&米国による対メキシコ関税引き上げの無期延期」でした。
パウエルFRB議長のコメントや米雇用統計により、
7月のFOMCでの利下げ観測が急浮上!
まず、パウエルFRB議長は6月4日の講演で、貿易摩擦の激化に懸念を示したうえで「景気拡大を持続させるため適切に行動する」と述べました。直接的に利下げに言及したわけではないものの、市場は「適切な行動=利下げ」と受け止めました。そして、7日に発表された5月の米雇用統計では、非農業部門の雇用者数が前月比7.5万人増と、市場予想の18万人増の半分以下にとどまり、平均時給の前年同月比の伸び率も前月から縮小しました。
これを受け、金利先物相場を基に計算する「フェドウオッチ」では、7月の利下げ確率は84%と1週間前の53%から急上昇しました。これでわかるように、市場は来月7月のFOMCでの利下げ観測が急浮上したのです。
また、この低調な雇用統計を受け、6月7日に米10年物国債利回りは一時2017年9月以来の低水準となる2.05%を付けました。
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この米長期金利の低下は、株式市場では、PERが高く投資指標面で割高感がある「FANG」などを中心としたハイテク株の買い材料になりました。これが投資家心理を好転させ、米株高につながりました。
米中貿易戦争の行方はいまだ不透明だが、
対メキシコの関税発動は見送りに!
貿易問題に関しては、中国商務省は6月4日、米中貿易摩擦は「対話によって解決すべきだ」との声明を出したため、市場では米中協議再開への期待が高まりました。ただし、トランプ米大統領は中国の習近平国家主席と月内に会談する意向を示していますが、ムニューシン米財務長官は8日、「現時点で閣僚級協議を開く予定はない」と述べています。
そして、トランプ氏は6月6日、中国からの輸入品すべてを対象とする第4弾の制裁関税を実際に発動するかどうかをG20サミット後に判断する考えを明らかにしています。また、トランプ氏は、習近平国家主席がG20首脳会合での会談に応じない場合、対中関税を追加すると警告しています。
これに対して、中国政府がハイテク分野の独自技術の輸出を制限する制度創設の検討に入ったと伝わっています。具体的には、レアアース関連技術などを想定している可能性が指摘されています。つまり、現時点では、米中貿易戦争の行方は決して楽観できる状況とは言えません。
一方、5%の関税を発動する6月10日の期限が迫るなか、トランプ氏は7日、メキシコからの全輸入品への関税発動を「無期限」で停止すると発表しました。メキシコが移民を食いとめる強硬な措置を取ることを米国と合意したことで、メキシコ関税は土壇場で回避されたのです。メキシコは、6000人規模の国家警備隊を南部グアテマラ国境付近に送って米国を目指す不法移民の流入を防ぎ、さらに、米国に不法入国して保護申請した移民についてメキシコ側で待機させる仕組みを徹底するそうです。
いずれにせよ、中国のみならず、メキシコとも貿易戦争に突入すれば、米国とメキシコにまたがる供給網は寸断されてしまいます。それが実現するケースでは、米国経済への悪影響は甚大とみられていました。それだけに、今回の関税見送り決定は世界の株式市場にとってポジティブな材料となりました。
今国会の会期は延長されず、
10月の消費増税は予定どおり実施される公算が強い
ところで、米国株高は日本株にとって追い風ですが、各種報道によれば、国内では夏の参院選と合わせて衆院選を行う「衆参同日選挙」を見送る方向が強まってきたようです。6月26日までの今国会の会期は延長されず、10月の消費税増税も予定通り実施される公算です。ちなみに、参院選の日程は「7月4日公示、同月21日投開票」となる見通しです。
それにしても、同日選挙見送りで増税延期の可能性がほぼなくなったことは、今後の日本株にとってはネガティブな材料です。
こうなると、海外投資家中心に日本株への関心は一段と薄れそうです。実際、6月10日の日経平均株価は2万1000円台を回復したものの、東証1部の売買代金は1兆9516億円と3日連続で節目の2兆円を割れました。相場底入れにともなう高揚感が非常に乏しい状況です。
残念ながら、商いが盛り上がらないだけでなく、海外投資家の日本株買いが期待できないようなら、今後、日経平均株価の先高期待が盛り上がることはないでしょう。
テクニカル的にみると、日経平均株価は
2万1326円や2万1571円あたりが戻りメドに!?
テクニカル面でみると、日経平均株価については、昨年12月26日の1万8948.58円から今年4月24日の2万2362.92円までの上げ幅3414.34円の61.8%押しは2万252.86円でした。これについては、6月4日の安値2万289.64円までの下落でほぼ達成したとみてよいでしょう。
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一方、4月24日の直近高値の2万2362.92円から6月4日の直近安値2万289.64円までの下落幅は2073.28円です。この38.2%戻しが2万1081.63円ですが、これは既に達成済みです。このため今後は、半値戻しの2万1326.28円や、61.8%戻しの2万1570.93円あたりが戻りメドとして意識されそうです。
ボックストレードを中止し「順張りで買い」が正解!
5日移動平均線が「強気と弱気の分水嶺」に
米国の早期利下げ期待とメキシコ関税回避という外部環境に大きな変化が発生したため、日経平均株価は2万円~2万1000円のボックス相場を上放れつつあります。このため、「2万円台前半で押し目買い、2万1000円接近場面で噴き値売りのボックストレード」はいったん中止して、「順張りで買い」に転じるべきです。
ただし、日経平均株価が5日移動平均線(11日前引け時点では2万955.47円)を割り込んだら、再び、日経平均株価は2万円~2万1000円のボックス相場に回帰する可能性が高まる点には注意が必要です。
つまり、当面は、5日移動平均線を「強気・弱気の分水嶺」と認識しておけばよいでしょう。
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